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悪夢を振り払え〜あなたを魔王にはさせません!〜  作者: ねこおう
第4部 クズ達のレクイエム編(タイトル変更)
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496話 もう一つの能力?

 気を失ったクズ達をギルド警備員が連行していくのをサラ達が見送っていると一人の冒険者がやって来た。

 彼は先のクズパーティの後にギルドへやって来た冒険者達の一人だ。

 周りに彼の仲間らしき者はいないのでソロで活動しているようだ。

 サラは彼の持つ雰囲気から一般的なCランク冒険者の強さを持っていると推測する。

 しかし、その顔はAランクに匹敵する程の自信に満ちていた。

 彼が自信過剰なだけなのか、それともクズなのかまだ判断つかないので彼をクズ(仮)とおく。


「見てたぜサラ。確かにお前にはクズコレクター能力、ってのがあるみてえだな。それは認めてやろう」


 クズ(仮)の発言にサラはムッとして言った。


「ではあなたもその能力とやらに呼ばれたというわけですか」

「ざけん……おいおい、それじゃあまるで俺がクズみたいじゃないか」

「ぐふ、みたい、ではないだろう」

「黙れ棺桶持ち!俺はてめえと話してんじゃねえんだよ!サラと話してんだ!邪魔すんな!」

「ぐふぐふ」


 そのクズ(仮)はヴィヴィを怒鳴りつけたものの、先ほどクズ達を一発でノックアウトしているのを見ているので乱暴な言葉とは裏腹にその顔には怯えが見えた。

 クズ(仮)はヴィヴィを見ないように、サラだけを見て続ける。


「サラ、俺は気づいたんだ」

「何をです?」

「お前の能力はクズを呼び寄せるだけじゃねえ。勇者をも呼び寄せる力もあるんだ!」


 そう言ってクズ(仮)は自分を指差す。


「俺をここに呼んだようにな」


 そう言ったクズ(仮)の顔はとっても誇らしげだった。


「そうですか」

「おう!」

「よかったですね。じゃあ、もう帰ってください」

「おう!じゃあな!……て、ちょ待てよ。そうじゃねーだろ!」


 気分よく帰りかけたクズ(仮)だったがはっとして慌てて戻って来た。

 サラは内心舌打ちをしながら尋ねる。


「まだ何か?」

「だから、俺がお前の勇者だって言ってんだよ。わかれよ!」

「わかりません」

「ざけんな!」


 クズ(仮)から余裕の態度が消えて本性を現す。

 

「いいから俺をリサヴィに入れろ!」


 サラがため息をついて言った。


「私達はパーティメンバーを募集していません」

「嘘つけ!」

「はい?」

「とぼけんな!マルコでCランクの盗賊に入会テストをしただろうが!隠してもバレてんだぞ!」


 どうやら流れの覆面劇作家ぽんぽん、ことイスティの事を言っているのだと察する。


「あれは特別です」


 まさか正直にメイデスの使徒かどうか確かめるためだったとも言えず曖昧に答えたのだが、クズ(仮)は納得しない。


「そうか。じゃあ、俺も特別で頼むぜ。安心しろ、俺はお前らと同じCランク冒険者だ!腕もホンモンだぜ!俺が保証する!」


 クズ(仮)は腕を組み仁王立ちして言った。

 そのときの顔もとっても誇らしげだった。

 イーダのクズ判定方法から彼をクズと確定する。



 リサヴィは短気の集まりである。

 そろそろ誰かが黙らせる行動に出ると思われた。

 しかし、


「俺はわかるぜ」


 その前にクズの戯言に同意する冒険者が現れた。


「だろ!?」

「ああ」


 サラ達はその者を仕込みかと思ったが、すぐにそうではない事がわかる。

 現れた援軍に素直に喜ぶクズだったが、次の言葉でその気分は吹っ飛んだ。


「実は俺も不思議だったんだ。なんでクズでもねぇ俺がサラに呼ばれたような気がしてんだろうって思ってな」

「そうだ……な、なんだと!?」


 彼もまたクズパーティの後にやって来たソロ冒険者であった。

 援軍と思われた者が自分と同じリサヴィ入りを狙っているライバルとわかり、クズが怒りを露わにしていると、


「俺もだ!」

「実は俺もなんだ!」


 サラに呼ばれたと言う自称未来の勇者を名乗る者達が次々とリサヴィの周りに集まってきた。

 彼らもまた最初からギルドにいたのではなく、先ほどのクズパーティの後にギルドにやって来た冒険者達であった。


「……やっぱサラのクズコレクター能力、ホンモンだな」


 このやり取りを最初から見ていた冒険者の一人が呟き、それに他の冒険者達が頷いた。



 彼らはリサヴィそっちのけで罵り合いを始めた。

 その様子を眺めていたヴィヴィが首を傾げた。

 

「どうしましたっ?」


 それにアリスが気づきヴィヴィに理由を尋ねる。


「ぐふ、おかしいと思わないか?」

「えっ?」

「ソロが多い事ですね」


 ヴィヴィの問いに答えたのはサラだ。

 サラの見る限り、ここに集まった冒険者のほとんどがパーティを組んでいないようであった。


「ぐふ、それだけではない。魔術士がいない」

「「!!」」


 勇者になりたいと思わなくてもリサヴィに入りたい者はいるはずだ。

 神官がいないのはわかるとして魔術士が一人もいないのは不自然であった。


「ぐふ。そしてもっと疑問なのは……」


 ヴィヴィはそう言ってギルド警備員を見た。

 サラ達はヴィヴィが言いたいことを悟った。

 ギルド警備員が動かないのだ。

 普段ならこれだけ騒げばギルド職員なり警備員が止めに入る。

 しかし、その様子が全くない。

 まるで何かを待っているかのようであった。

 サラは一瞬ギルド警備員と目が合ったがすぐに逸らされた。

 その態度は明らかにおかしい。

 

(そういえば先程のクズは地下牢へ連れていったみたいだったけど、まさか……)


 サラは自分達が何かに利用されていると感じた。


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