491話 クズ、リサヴィを脅迫する
リサヴィと流れの覆面劇作家ぽんぽんことイスティはマルコに帰って来た。
宝箱を再配置していたのが小型ゴーレムである事を報告して依頼は完了した。
イスティは「次回作を執筆しますので」と言ってそそくさとギルドを去って行った。
依頼を終えたばかりのリサヴィにギルド職員のモモは笑顔でリッキー退治の依頼を紹介する。
サラが止めたがリオはその依頼を受けた。
サラがモモを睨みつけるが、その程度の事でモモの笑顔が崩れる事はなかった。
依頼先へは明日向かう事にして今日は宿屋でゆっくり休もうと話しているとギルドのドアが開き、二人組のパーティが入って来た。
そのパーティのリーダーがリサヴィの姿を見て叫んだ。
「お前らのせいで俺達の仲間が死んだぞ!」
そのパーティはマルコにずっと居座りリサヴィに付き纏っていたクズパーティであった。
サラはこのパーティの人数を覚えていなかったが二人ではなかった気がする。
「責任をとって賠償金を払ってもらうからな!」
クズリーダーがデカい態度でサラに向かって言った。
話が全く見えず首を傾げるリサヴィにクズリーダーが理由を話し始める。
それによると彼らが真面目に依頼をこなしていたらリサヴィ派を名乗る者達に襲われて仲間の一人が死んだらしい。
その責任をリサヴィに取れと言っているのだった。
完全な言いがかりであった。
しかも事実は大きく異なる。
彼らはあるパーティの後をついていき、“ごっつあんです”発動のためにそのパーティが倒した魔物にクズパーティの一人が近づいたら、その魔物がまだ生きており、不意打ちを食らって命を落としたのだった。
完全に自業自得なのだが転んでもただでは起きない、
それが彼らクズである。
彼らはそのパーティに責任転嫁をしたものの軽くあしらわれ、しつこく食い下がったら剣を向けられたので慌てて逃げて来たのだ。
そのパーティが本当にリサヴィ派であればクズ達はその場で全員殺されていただろう。
意気消沈して帰ってきたところでリサヴィを見つけ、この作戦をすぐさま思いつき実行に移したのだった。
その頭の回転の速さを他のことに使えばと思うかもしれないが、それは無理である。
何故なら彼らはクズだからである。
ヴィヴィが冷めた目をクズに向けて(仮面で顔は見えないが)尋ねる。
「ぐふ。それでお前達は何をやっていたのだ?」
「なんだと?」
「ぐふ。お前達は何の依頼を受けていのだと聞いているのだ」
「「……」」
「ぐふ。やはり何の依頼も受けずにそのリサヴィ派とやらの後をついて行ったのか。自業自得だな」
「ざけんな!ちゃんと依頼を受けたと言っただろうが!」
「ぐふ。なら私達にではなくギルドに報告すればいい」
「そうですね。それが本当なら明らかにそのリサヴィ派を名乗った者達の規則違反です。私達には全く関係ないことです」
「ざけんな!リサヴィ派がやったんだ!お前らの責任でもあるだろうが!!」
「だな!!」
クズ達だけが納得する。
「ぐふ。ならさっさとお前達がどんな依頼を受けたのか教えろ」
「そんなのはお前らに関係ねえだろう!」
「ぐふ!面白いことを言うな。私達の責任だと言うのなら状況を確認するためにもお前達が受けた依頼を知らねばならんだろう」
「き、聞いたところで俺らの死んだ仲間は帰ってこねえぞ!」
「「だな!」」
「ぐふ。お前らクズが死のうが全く興味ない」
「んだと!?」
「ぐふ。お前達の代わりにギルドに報告してやるのだ。感謝しろ」
「「ざ、ざけんな!」」
そんな事をされたら嘘がバレるので必死に怒鳴って誤魔化そうとするクズ達。
「と、ともかくだ!オメエらは俺らに賠償金を払えばいいんだ!」
「たったそれだけだ!簡単だろうが!」
「わかったな!?」
「ぐふ。わからんな」
「「ざけんな!」」
「ぐふ。話す気がないならとっとと消えろ。私達はクズの相手をしてやるほど暇ではないのだ」
「ざけんな!大体だな!お前らが俺らと一緒に依頼を受ければこんな事にはならなかったんだ!」
「だな!どう考えてもお前らが悪いだろうが!!」
「ぐふ、私達はクズのお守りをするほど暇ではないと言っているだろう」
「ざけん……ぐへっ!?」
喚き続けるクズリーダーをヴィヴィのリムーバルバインダーが吹っ飛ばした。
クズリーダーは宙を両手を広げてくるくるくる、三回転してぼてっと落ちてあほ面晒して気絶した。
「ちょ、ちょ待……あへっ!?」
リオの蹴りをくらい、残りのクズも吹き飛び、先のクズリーダーと同じくバンザイしながら宙をくるくるくる、と三回転してぼてっ、と落ちてあほ面晒して気絶した。
それで終わらない。
ヴィヴィはクズの服を漁り、冒険者カードを奪うと遅まきながらにやって来たギルド職員のモモに渡した。
「ぐふ。話は聞こえていただろう。さっさと仕事をしろ」
「はい」
モモは素直に従ってクズが現在受けている依頼があるか確認する。
「ぐふ。どうだ?」
「はい、何も依頼を受けていませんね」
「ぐふ。詐欺・脅迫の現行犯だ。後は任せていいな?」
「もちろんですっ!ご苦労様です!」
モモはそう言ってにっこり笑った。
その顔を見てサラ達は悟った。
マルコギルドはこのクズ達を排除する機会を狙っていたのだと。
それでリサヴィが絡まれていた時、すぐに行動を起こさなかったのだと。
「モモ、また私達を利用しましたね」
「とんでもないです!対応が遅れた事は大変申し訳なく思ってますよっ」
そう言ったモモの顔は済まなそうに思っているとは見えなかった。
サラはため息をついてから言った。
「こんな者達を野放しにしては他の冒険者に迷惑ですし、冒険者の信用も下がります。厳しい処分が下ることを期待しています」
サラの言葉にモモが深く頷いた。
「はい!必ず!」
このクズ達は退会処分は免れたものの二ランク降格しEランクとなった。
今まで彼らはDランクやEランク冒険者を見下して威張り散らしていたが、立場が逆になり、見下された視線に耐えきれなくなって泣きながらマルコを出て行った。
彼らに同情するものは当然いなかった。




