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悪夢を振り払え〜あなたを魔王にはさせません!〜  作者: ねこおう
第4部 クズ達のレクイエム編(タイトル変更)
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489話 クズ、転職する

 あるパーティが街道を力なくとぼとぼと歩いていた。

 それはヴェイグ達のいた輸送隊の護衛を解雇されたクズパーティであった。

 彼らは輸送隊を逆恨みしてギルドに妄想で作り上げた被害を訴えたが相手にされず、逆に冒険者に不正合格した事がバレ、今までの行いの酷さからその場で冒険者ギルドを退会させられたのだった。

 今の彼らはクズ冒険者ではなく、ただのクズ旅人であった。

 クズリーダーが叫んだ。


「くそっ!こうなったのもみんなあのガキのせいだ!」


 ガキとはヴェイグのことである。


「だな!」

「あのメス魔術士もだ!」


 これはイーダのことである。


「ああ、ちょっとかわいくて魔法がちょっと使えるってだけで上から目線で見て来やがってよ!」

「おう!俺らCランク!冒険者にEランク!冒険者が盾つきやがって!」


 散々ヴェイグ達の悪口を言ったが、彼らの怒りは収らなかった。

 クズリーダーは立ち止まり振り返ると彼らから少し離れてついて来ていた臭クズ戦士を睨んだ。


「テメエはいつまで付いてくる気だ!?この疫病神が!!」


 クズ達は臭クズ戦士の臭さで気を失った。

 その間に冒険者カードを見られてまともに依頼を受けていなかった事もバレてギルドを退会させられた。

 クズリーダーはその事に腹を立て、臭クズ戦士をクズパーティから追放した。

 しかし、行く当てのない臭クズ戦士はパーティの後をついてきていたのだ。


「そ、そんなこと言わねえで俺も連れてってくれよぉ!」

「ざけんな!!お前はもう俺らの仲間じゃねえ!さっさとどっかに消えろ!このクズ臭野郎!」

「俺らを殺そうとしやがって!」

「だな!ほんと死ぬかと思ったぜ!」

「ちょ、ちょ待ってくれよぉ!」

「黙れ!!元を辿りゃあ俺らが冒険者クビになったのもお前が臭すぎるからだ!」

「ひ、酷えよリーダー!」


 臭クズ戦士は悲しそうな顔をして同情を誘おうとするが効果はなかった。

 クズは弱い者を見つけると責めずにはいられない。

 そういう習性を持っているのだ。

 それが例え自分のパーティメンバーであってもである。

 元メンバーであれば尚更容赦はしない。

 クズリーダーの言葉に他のメンバーも次々と同調する。


「確かにな!」

「客車で大人しく座ってりゃよかったものをよ!客をナンパしてあのガキと揉めなきゃこんな事にはならなかったんだ!」


 臭クズ戦士が必死に言い訳を始める。


「ちょ、ちょ待てよ!客車に行け、って言ったのはリーダーじゃないか!」

「んだとてめえ!俺のせいだって言いたいのか!?あんっ!?」

「そ、そうは言わねえよ!俺がちょっと調子に乗ったのは悪かった。反省してる!」

「もう臭え……遅えんだよ!」

「待ってくれよ!でもよ、俺が言うのもなんだがよ、ガル・ウォルーの襲撃があったんだから結局同じことになったんじゃねーのか!?」

「それはないな」


 クズリーダーは根拠のない自信を覗かせながら断言した。


「揉めてなけりゃ俺はあのガキどもをうまく利用できた」


 クズリーダーは具体的にどのような言葉でヴェイグ達にいうことを聞かせるかは考えていない。

 ただ、頭の中で彼らに指示を飛ばすかっこいい自分のイメージが浮かんだだけである。

 彼の妄想の中でヴェイグとイーダは彼に尊敬の眼差しを向けていた。


「そして今頃奴らは俺らのパーティに入っていた!」


 更に根拠のない自信を持って断言した。


「「流石だなリーダー!」」


 メンバーはクズリーダーの言葉に疑いを持たず、その言葉に痺れて憧れた。

 ただ一人、臭クズ戦士が反論する。


「待ってくれよ!あいつらは俺達の言う事なんか絶対聞かねえよ!パーティにだって入らないぜ!」


 臭クズ戦士の正論は彼らの根拠のない自信によって次々に否定された。



 クズ達が道のど真ん中で言い争いをしているところで二人組の旅人がやってくるのにクズリーダーが気づいた。


「ストップだ!向こうから“サイフ”が歩いて来たぜ!」


 彼らはその場でクズ旅人からクズ盗賊、いや、盗賊は皆基本クズだから単に盗賊でいいだろう、に転職した。

 彼らは人数で勝っている事から余裕の態度で話しかける。


「止まれ!」


 二人の旅人はクズリーダーの叫びに素直に応じて立ち止まる。

 一人が口を開いた。


「俺達に何か用か?」

「実は俺達よ、ギルドの罠にハマって冒険者をやめさせられちまってな」

「それは災難だったな。だが、俺達には関係ない」

「おいおい、まだ話は終わりじゃねえ」

「じゃあ、手短にしてくれ」

「金だ」

「は?」

「金を寄付してくれ。勘違いすんなよ。俺達はあくまでもお前らから進んでの寄付を求めてんだ」

「金目のもんでもいいぞ」

「……」



 旅人達が沈黙しているとクズ達は笑いながら各々の武器を構える。

 彼らは人数で勝っている、ただその一点だけで勝利を確信し、相手を完全に舐めていた。

 臭クズ戦士もさり気なく加わっている。

 クズリーダーはその事に気づいていたが文句は言わない。

 そのため、臭クズ戦士はパーティに復帰出来たと思い込み喜んでいたが、クズリーダーの考えは違った。

 旅人から金を奪ってから追い出す気だったのだ。

 利用だけしてポイ捨てである。

 まさにクズの鏡であった。

 その様子を見て旅人の一人が言った。


「……わかった」

「おう!物分かりがいい奴は長生きするぞ!」

「金目のものでもいいんだな?」

「まあな。見せてみろ」


 旅人の一人がリュックからポーションを一つ取り出した。


「……そりゃ、なんだ?」

「貰ったものだから真偽のほどは確かではないが、『勇者』になる薬らしい」


 彼ら旅人はメイデスの使徒であった。

 


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