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悪夢を振り払え〜あなたを魔王にはさせません!〜  作者: ねこおう
第4部 クズ達のレクイエム編(タイトル変更)
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488話 クズのクレーム

 ヴェイグ達の乗った輸送隊の護衛を解雇されたクズ冒険者達を覚えているだろうか。

 彼らは魔物に怯えながらも街道を歩き続けてなんとか街にたどり着くとその足でギルドに直行した。


「おい!けしからん輸送隊がいたぞ!罰を与えろ!」


 クズリーダーはカウンターの受付嬢にそう言って自分達を解雇した輸送隊の名を告げる。


「そうですか。では、冒険者カードの提示をお願いします」

「何?なんでそんな必要がある?」


 受付嬢はそんな質問が返ってくるとは思っていなかったので一瞬唖然とした表情をしたが、すぐに表情を戻す。


「依頼確認です」

「ギルドで依頼を受けたんじゃねーよ。直接、輸送隊に頼まれて仕方なく受けてやったんだ」

「そしたらよ!あいつら途中で俺らを置いて行きやがった!」

「護衛料を払わずにだぜ!?あんだけ必死に守ってやったのによ!恩を仇で返しやがった!」


 彼らは自分達の妄想を事実にように語った。


「そうですか。しかし、それがギルドからの依頼でない以上、ギルドはどうすることもできません」


 受付嬢の素っ気ない態度にクズ達が怒り出す。


「ざけんな!罰を与えることぐらいできるだろうが!」

「こっちは途中で置き去りにされたんだぞ!」

「ただ働きさせられたんだぞ!」

「可哀想だと思わねえのか!?」


 受付嬢は度胸があるのか場慣れしているのか、クズの怒りを平然と受け止めて言った。


「私共はその時の状況が分かりませんので判断できません」

「てめえ!俺達が嘘言ってるとでも言うのか!?」

「重ねて申しますが私達では判断できません」

「安心しろ。俺達は嘘言ってねえ。俺達が保証する!」

「「「だな!」」」


 そう言ったクズ達の顔はなんか誇らしげだった。

 しかし、受付嬢に彼らの保証は効果がなかった。

 なんとしてでもあの輸送隊に仕返しをしたいクズは尚も食い下がる。


「大体よ、この顔を見て信じられねえか?」


 そう言ってクズリーダーをはじめメンバーがキメ顔をする。

 彼らのキメ顔は娼婦達のお墨付きである。

 しかし、受付嬢には何故か全く効果がなかった。

 彼女は淡々と事務的に対応する。


「では冒険者カードを見せてください」

「お前はアホか?さっき必要ないと言っただろうが」


 受付嬢はクズリーダーの顔をマジマジと見る。

 クズリーダーは受付嬢の真剣な眼差しを受け、何故か自分に気があると思い込み再びキメ顔をした。

 もちろん、そんな感情を一切持ち合わせていない受付嬢に効果はなかった。


「今までのあなた方の態度から判断しますに……」

「「「「おう!」」」」

「あなた方のほうに問題がありそうです」

「「「「おうっ……って、ざけんな!!」」」」


 クズリーダーがカウンターに両手を叩きつけて叫んだ。


「お前じゃ話にならん!上司を呼べ!」

「少々お待ち下さい」


 受付嬢はクズの言葉に素直に従って上司を呼びに行った。

 おそらく、彼女はクズの相手が面倒になり上司に押し付けようと考えたのだろう。

 上司が話を聞くことになりクズ達は会議室に案内された。

 デカい態度で椅子に座って「菓子は出ねえのか!?」と文句を言いながら茶(最安品)をすすっていたクズ達の前に上司が手に何かの紙を持って現れた。

 上司は一瞬、顔を歪ませる。

 彼らの臭さは尋常ではなかったからだ。

 先の受付嬢はよく平然としていたものである。

 上司はすぐに何事もないように平静を装う。


「大体の話は聞いております」

「おう!なら話が早い!さっさとあのムカつく輸送隊……って、なんだそりゃ?」


 上司がカウンターに置いた用紙を見てクズ達が首を傾げる。


「その輸送隊から受けた依頼内容と彼らの対応をご記入願います」

「はあ?なんでそんな面倒なことしなけりゃならないんだ?」

「苦情はギルド本部へ文書で送る必要があるのです」

「そうか。わかった。じゃあ、今から言う通り書け」

「いえ、本人が書くことになっております」

「「「「ざけんな!」」」」


 クズ達は上司を睨みつけるが、上司は動じない。

 それどころか来た時から態度が非常に冷たい。

 クズ達は嫌な予感がした。

 だが、もう遅い。

 気づけば、いつの間にか会議室のドアの前にはギルド警備員が立っており、許可なく退出させないように見張っていた。

 クズ達は先程までの態度とは一転して卑屈な笑みを浮かべる。


「ま、まあ、今回は許してやるよ」

「「「だ、だな!!」」」


 そう言ってクズ達が退室しようと立ち上がると上司が席を立って後ろに下がった。

 代わりに警備員が前に出て来た。


「な……、て、てめえら何のつもりだ!?」

「ご記入願います」

「ざけんな!今回は見逃してやると言ってんだろうが!!」

「いえ、こちらは見逃しません」

「な……」

「あなた方には冒険者に不正合格した疑いがかけられています」

「な、なんだと……」

「なんでも文字の読み書きが出来ない冒険者がいるとか。あり得ませんよね、筆記試験があるのに」

「そ、そりゃ俺達じゃねえ!」

「「「だ、だな!!」」」


 クズ達は額から汗を滝のように流しながら否定する。


「そうですか」

「「「「おう!」」」」

「ではその疑いを晴らすためにも是非ご記入下さい」

「「「「ざ、ざけんな!!」」」」

「……」

「きょ、今日はよ、ちょっとその、腹の調子が、そう!腹の調子が悪いんだ!」


 そう言ってクズリーダーが「いてて」と急に腹を押さえる。


「お、俺もだ!」

「「だな!!」」


 残りのメンバーも腹を押さえる。

 その姿を上司は冷めた目で見ながら言った。


「すぐ済みます」

「もう持たねえんだよ!!」

「そうですか。では仕方ありませんね」

「「「「おう!!」」」」


 クズ達は腹の痛みを忘れて、いや、仮病を忘れて元気いっぱい腕を振り上げて応えた。


「では、入って来て下さい」

「「「「……へ?」」」」


 会議室のドアが開くと同時に神官が二人入って来た。

 更なる警備員も。

 皆、入った瞬間、顔を歪めた。

 部屋に異臭が充満していたからだ。


「治療をお願いします」

「わかりました」


 上司と神官のやり取りを見てクズ達は既に詰んでいる事をやっと悟った。

 あの一際臭い臭冒険者が絶望のあまり「ぶひぃ」と鳴いた。

 直後、彼の体から更に酷い臭気がまき散らされる。

 会議室の臭度が急激に増加した。

 ギルド職員達が慌て出す。

 

「うわっ臭!?なんだこれは!?」

「ど、毒だ!」

「エ、エリアシールド!」


 本来、神官の神聖魔法は魔法名を叫ぶ必要はないのだが、あまりの臭さに我を忘れて叫んだ。

 エリアシールドが会議室内のギルド関係者を包み込み、更に別の神官がリフレッシュを発動させる。

 エリアシールド内が浄化され、ほっとした上司が周囲の様子を見るとクズ達が助けを求めるようにエリアシールドを叩いていた。

 彼らも臭かったらしい。

 何故か臭源である臭冒険者も「くさっ!くさっ!」と喚いていた。

 ちなみに会議室のドアはギルド職員達の背後にあり、エリアシールドが邪魔で彼らクズは退室する事が出来ない。

 クズはしばらくエリアシールドを叩いていたが、そのうち、皆気を失った。



 この後、クズ達は全く文字が書けないこと、つまり不正合格がバレた。

 それでもギルドに貢献していればまだ情状酌量の余地もあったのだろうが、依頼履歴を調べたところ、クズスキル?により報酬を得ていた可能性が非常に高く、更にこれまでの態度からどうしようもないクズである事は明らかだったので、その場で退会処分となった。


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