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悪夢を振り払え〜あなたを魔王にはさせません!〜  作者: ねこおう
第4部 クズ達のレクイエム編(タイトル変更)
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480話 クズ達の墓

 村長はリッキー退治の依頼を受けた冒険者達の人数の多さにちょっと驚いた顔した。

 その冒険者達の一人、サラから依頼を受けた者がリッキー退治専門家のリサヴィだと知り大喜びする。

 サラは困った顔をしながら「私達はリッキー退治専門家ではありません」と否定したが、その声は聞こえなかったようだ。

 サラは訂正するのを諦め、一緒に来た新米女冒険者達にも手伝わせたいと村長に話すと納得したように頷いた。


「皆さんの後継者を育てているのですね」

「「「……」」」


 新米女冒険者達は否定したかったが、そう思わせた方が話がスムーズに進むと考えたヴィヴィが先に口を開いた。


「ぐふ、そうだ。こいつらにも経験を積ませてやりたいのだ」


 更にサラも続く。


「依頼はきちんとこなしますので」

「わかりました。よろしくお願いします」

「「「……」」」


 こうして彼女らは訂正する機会を失ったのである。



 依頼は滞りなく終了した。

 ヴィヴィが珍しく新米女冒険者達を褒めた。


「ぐふ。見事だ」

「そうですね」

「ですねっ」

「「「ありがとうございます!」」」


 満面の笑みを浮かべる女冒険者達にヴィヴィが言った。


「ぐふ。お前達が“リッキーバスターズ”と名乗るのを許可する。即パーティ名にしても構わないぞ」

「あの、それはちょっと……」

「ぐふ。安心しろ。文句を言う奴がいたら私が言い負かしてやろう」

「いえ、それは心配していませんから!」



 依頼を終えた帰路で新米女冒険者達は行きと同じように森を経由して帰る事を願い出た。

 サラ達は彼女達がガドタークに不覚を取ったことへのリベンジを考えているのだと察する。

 そして止めなかった。

 


「止まって」


 先頭を歩いていた新米女盗賊が厳しい表情をしながら前方の様子を探る。

 

「どうしたの?」

「……人がいるわ。それも複数」

「それって、あのクズ達?」


 この数日で自信をつけたからであろう。

 クズをクズと呼べるようになっていた。


「いいえ、多分違う」

「こっちへ向かってくるの?」

「止まってるみたい。キャンプしてるのかも」



 三人の新米女冒険者達は行動を決めかねてサラ達を見るが、何もアドバイスはなかった。

 新米女リーダーが決断する。

 

「行きましょう」



 それは四人組のパーティだった。

 新米女冒険者達が警戒していたように向こうもこちらに気づいており警戒していた。

 冒険者同士、イコール、仲間ではない。

 冒険者には様々な者達がいる。

 善人からどうして冒険者になれたんだ?と疑問に思うほどのクズもいるからだ。

 

「こんにちは」

「おう」


 新米女リーダーの挨拶に向こうのリーダーらしき者が挨拶を返して来た。

 最初に警戒を解いたのは向こうのパーティだった。

 新米女冒険者達と一緒にリサヴィがいたからだ。

 

「リサヴィがいるって事は噂の研修か」


 どうやらリサヴィが新米冒険者の研修をしているのはそれなりに知れ渡っていたようだ。

 サラが彼らのリーダーに話しかける。

 

「それ、噂になっているんですか?」

「それなりにな。しかし……」


 リーダーが新米女冒険者達をじっと観察する。

 それはあまりいい気分でなく、新米女リーダーが少し不機嫌な表情をして尋ねる。


「なんでしょうか?」 

「あ?おう、悪い悪い。新米冒険者って話だったがなかなかどうして、と思ってな。Fランクと思えないぞ」

「そうだな。Eと言っても驚かないぜ」


 新米女冒険者達は褒められて素直に嬉しそうな顔をする。

 ヴィヴィは周囲を見回してから彼らに尋ねる。


「ぐふ。休憩していたようだが、それだけでもなさそうだな」

 

 ヴィヴィの視線の先は作られたばかりと思われる墓に向けられていた。

 墓石はフェラン製魔装士の荷物入れを立てて代用していた。

 その荷物入れには見覚えがあった。

 リサヴィに寄生しようとしたクズパーティのクズ魔装士のものであった。

 ヴィヴィの視線に気付きリーダーが説明を始める。


「冒険者達の死体を発見してな」


 リーダーがポケットから真っ黒になった冒険者カードを取り出して見せた。

 全部で四枚あったが、墓石は一つだけだ。


「ウォルーに食い荒らされてたからまとめて一つにした。流石に墓を四つも作ってやるほどお人好しでも暇でもない」

「いえ、十分でしょう」


 リーダーにサラが言った。

 

「ぐふ。優しい奴らだな」


 ヴィヴィの冷めた言葉にリーダーは複雑な表情をしながら言った。

 

「まあ、知らない奴らじゃなかったからな」

「友達だったのですかっ?」


 アリスの問いにリーダーをはじめ、メンバーが思いっきり嫌な顔をして首を横に振った。

 

「冗談じゃない!」

「コイツらはクズだ!」

「ああ、人の後をつけて来やがって美味しいところを持っていこうと狙っていやがったんだ!」

「だから途中で撒いてやったんだがな」

「ぐふ。ではそのまま放っておけばよかっただろう」

「まあ、そうなんだけどよ、なんか後味が悪くってな。このクズ達の自業自得だってわかってはいるんだ。だがよ、なんか……」

「ぐふ、お前達が気に病む必要はない。こいつらには生存のチャンスはあった。それを拒否したのはこいつら自身だ」

「何?それって……」

「彼らはあなた達の代わりに私達に寄生しようとしたのです」

「なんだと!?」

「それでっ、今度はわたし達が撒いたんですっ」

「ぐふ、それでもしつこく私達を追った結果こうなったのだろう」

「そうだったのか!?」

「なんだこいつら!」

「どこまで腐ってやがんだ!?」


 真実を知ったリーダーが墓石に蹴りを入れようとして、思い止まる。

 

「……まあ、死んだんだ。許してやるよ」



 サラは複雑な表情をしている新米女冒険者達に言った。

 

「このような末路を迎える冒険者は少なくありません。自分の実力を見誤るとこうなるのです。あなた達もこの事を肝に銘じておいてください」

「「「はい」」」

「ぐふ。なんだかんだと言って奴らも研修に役立ってくれたな。反面教師としてだが」

「ですねっ!」

「そうなんだ」


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