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悪夢を振り払え〜あなたを魔王にはさせません!〜  作者: ねこおう
第4部 クズ達のレクイエム編(タイトル変更)
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479話 森での戦い

 新米女パーティを先頭森の中を進む。

 彼女達から少し離れた後をリサヴィが続く。

 これまで何事もなく進み、順調と思われた。

 開けた場所を見つけて少し休憩して旅を再開した。

 このままのスピードで行けば昼過ぎには森を出る事が出来るだろう。

 昼食は遅くなるが、森を出てからと決めた。



 新米女盗賊は微かに違和感を覚えたが、魔物の気配は感じないので気のせいだと思った。

 突然、新米女魔術士の背後に上から何か重いものが落ちて来た音がした。

 新米女魔術士は何だろうと振り返った。

 ガドタークだった。

 ガドタークは木に登り、気配を消して獲物が通るのを待っていたのだ。

 新米女魔術士が目にした時には既にその剛腕が振り上げられており、あとは振り下ろすだけだった。

 

(やられる!)


 そう思った瞬間、ガドタークが横方向へ吹っ飛んでいった。

 少し距離置いて後ろを歩いていたはずのリオがいつの間にかそばに来ており、剛腕を振り下ろす直前で蹴りを放ったのだ。

 ガドタークは全長三メートル近くあり、体重は軽く二百キロを越える。

 その巨体が華奢なリオの蹴りで吹き飛んだのだ。


「やられるの待ってるの?」


 リオのいつもの感情のこもっていない声で突然の出来事に驚いて固まっていた新米女冒険者達が我に返る。


「気を抜かない!」


 サラの声で新米女冒険者達は気を引き締める。

 新米女盗賊は自分の未熟さを内心罵りながらも気持ちを切り替える。

 反省は後でもできるのだ。



 ガドタークはツーマンセルで行動するのが普通だ。

 もう一体がどこかにいるはずと新米女盗賊が周囲を警戒するが、気配が読めない。


「だめ!わからない!」


 新米女盗賊が思わずサラ達を見るが、無反応だった。


「落ち着いて!」


 新米女リーダーはリオが吹っ飛ばしたガドタークを観察する。

 口から血を吐き苦しそうだ。

 おそらく内臓に深いダメージを負っている。

 重傷だと思うが、まだ死んだわけではない。

 ガドタークはDランクにカテゴライズされる魔物だ。

 新米女リーダーは自分よりランクが上の魔物へ接近戦を挑むのは危険と判断して新米女魔術士に遠距離攻撃で止めを刺すように指示する。

 新米女魔術士が攻撃魔法を唱える。

 アイスアローだ。

 目の前の氷の矢が出現した。

 リオのアドバイスを受ける前は今のよりも弱々しかったが、強化されたウォーターの魔法陣を元に改良を加えて明らかに強力になっていた。

 威力が上がっても魔力消費量は以前と変わっていない。

 新米女魔術士はその成果に思わずニヤけそうになるのを我慢してガドタークに向けて放った。

 ガドタークの頭に突き刺さる。

 脳を破壊し、致命傷となった。

 相方が死んだ事でもう一体のガドタークが怒りを露わに姿を現した。

 新米女リーダーは思ったより近くにいたことで弓による攻撃は無理だと判断し、危険を覚悟で正面から迎え撃つことを決意する。

 ガドタークの剛腕を左腕に装着した盾で受け流した。

 怪我はしなかったが腕が痺れた。

 新米女リーダーが攻撃を凌いでいる隙に新米女盗賊がスキル、インシャドウで気配を消してガドタークの背後に回り込み、短剣で背中を斬りつける。

 致命傷には程遠かったが、出来た隙を新米女リーダーは見逃さず、一気に距離を詰めてその喉元に剣を突き刺した。

 危険を察して引き抜くのを諦め、剣を手離して素早く離れる。

 直後、さっきまで新米女リーダーがいた場所を剛腕が通り過ぎた。

 新米女リーダーは腰の短剣を抜いて構えるが無理に攻撃をしかけたりはしない。

 ガドタークは呻きながら両腕をぶんぶん振り回していたがやがて力尽きて倒れた。



 新米女冒険者達はそのガドタークに近づきかけたが、はっ!と思い直して距離を取ると弓を構えて放った。

 矢が命中し悲鳴を上げるガドターク。


「やっぱり死んだ振りをしてたわ!」


 新米リーダーと新米女盗賊はガドタークが動かなくなるまで矢を放ち続けた。

 新米女リーダーがガドタークに慎重に近づき、その首を切り落としてやっと倒した事を確信して喜ぶ。


「やったわ!」

「Dランクのガドタークを倒したのよ!!」

「ええ!!」

「ぐふ。喜ぶのは後にしろ」


 ヴィヴィの冷めた声で新米女冒険者達は我に返る。


「ここに長く止まるのは危険です。必要な素材だけ回収して移動しましょう」

「「「は、はい!」」」


 彼女達は以前、リサヴィが研修をした時の新米冒険者達が倒したガドタークを街へ運ぶ姿を見ていた。

 自分達もそれをできないかと思ったが、流石に運ぶ手段がない。


「私達にも魔装士がいればなんとかなったかも」


 新米女冒険者達は先ほど別れたクズ魔装士のことを思い出し、


「あの時、パーティに入れておけばよかったわ」

 

 と後悔した、

 などということは当然なかった。

 思い出しもしなかった。



 森を抜け街道に入った。

 そしてキャンプスペースに着くと遅めの昼食を終えてから反省会という名の説教が始まった。

 やはり一番の問題は木に登っていたガドタークに気づかなかったことだ。


「ぐふ。お前達はガドタークを倒して喜んでいたが、本来ならそもそも倒す前に死んでいたぞ」

「「「はい……」」」

「大きな木ならガドタークが登っても折れることはありません。今回はガドタークでしたが、ウォルーならもっと細い木にも登れます」

「ぐふ。上への警戒がおろそか過ぎだ。平地と森では警戒すべき場所は違う」

「「「はい、すみません……」」」


 ガドタークを倒したという高揚感は二人の説教で一気に消失した。

 もし、説教が食事する前だったらろくに喉を通らなかっただろう。

 それを見込んで食事後にしたのであろうが。

 落ち込む新米女冒険者達を見て少し厳しく言い過ぎたかもとサラが思っているとリオが口を開いた。


「そう言えば前に……」


 新米女冒険者達がぱっと顔を上げてリオに期待した目を向ける。


「ナックが言ってたんだけど、」

「はい、終了です」


 サラが割り込んでリオが続きを言うのを止めた。


「「「え!?」」」


 サラは新米女冒険者達の不服そうな視線を受けて厳しい表情をしながら言った。


「聞くときっと後悔します」

「大丈夫です!」

「ナックさんて、あのウィンドのBランク魔術士のナックさんですよね!?私聞きたいです!魔術に関係するかもしれないですし!」

「お願いします!」


 サラは彼女達の真剣な目を見て、諦めた。


「リオ、続けてください」


 リオは先を続けた。


「弱ってる女の子は落としやすいんだって」

「「「……」」」

「財布かな」

「「「……」」」


 しばし沈黙後、新米女冒険者達がサラに頭を下げ、新米女リーダーが謝罪の言葉を述べる。


「すいませんでした。私達が間違ってました」

「そうなんだ」

「「「リオさんに言ったんじゃありません!」」」


 新米女冒険者達の声が見事にハモった。


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