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悪夢を振り払え〜あなたを魔王にはさせません!〜  作者: ねこおう
第4部 クズ達のレクイエム編(タイトル変更)
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473話 狂気の匍匐前進

 アリスの行動を見てクズ冒険者達は、いつも通りやってるのにいつも通りに事が運ばないぞ、と不安を覚え始める。

 そんなクズ達の思いなどアリスは知った事ではなかった。


「サラさんっヴィヴィさんっ。もう全員やっちゃいましょっ」

「ぐふ。そうだな。いい加減頭がおかしくなりそうだ」

「じゃあっ、わたしがやっちゃっていいですかっ?ちょっとまだストレスが発散できてないんですっ」

「ぐふ。かまわん」

「うっかり殺してしまうかもしれませんけどっ、いいですよねっ?」


 にっこり笑顔のアリスにヴィヴィが頷く。


「ぐふ。うっかりでなくても殺してかまわんぞ。安心しろ。責任はサラが取る!」

「はいっ。ありがとうございますっ」

「おいこらっ!」


 アリスに恐怖を覚えるクズ達の中でクズ盗賊が突然「あっ!」と声を上げた。


「ど、どうした!?」

「リ、リーダー!こいつらもしかして……」

「もしかしてなんだ!?」

「リサヴィ……派じゃなのか!?」


 サラ達はズッコケそうになった。

 新米女リーダーが冷めた目で言った。


「派、じゃなくて本人達よ」


 新米女リーダーの声は大きくなかったがクズ達にしっかりと聞こえていた。


「「「なに!?」」」


 顔を押さえたクズ魔装士も「もふ!?」と叫んだ。

 クズリーダーをはじめ、メンバーがサラ達をまじまじと見る。


「……た、確かに言われてみれば……」

「待て!慌てるな!最近噂に聞くリサヴィの構成を真似てるだけの奴らかもしれんだろう!」


 そう言ってクズリーダーが皆を落ち着かせる。


「そ、そうだよな。こいつらが本当にリサヴィだって言うならあいつがリッキーキラーなんだろ?全然ショタじゃないぞ」


 クズ達の視線がリオに向けられ、その通りだ、と頷いた。


「確かにな!それにサラって呼ばれてるあいつだが、噂通りの美人だがよ、本人は自意識過剰で普段は顔を隠してるはずだろ!」


 サラの頬がぴくぴく震える。

 ついでにヴィヴィの肩もぴくぴく震える。


「もう一人の神官のアリエッタだってそうだ。顔だけで魔法はそこそこ、そんで頭が弱いはずだ!それにこんな凶悪な神官だって話も聞いたことないぞ!なあ?」


 そう言ってアリスに同意を求めたクズリーダーの顔にアリスは無言でメイスを叩き込んだ。


「がはっ!?」


 顔を押さえながら地面を転がるクズリーダーの姿を見て残りのパーティは怯えた表情をアリスに向ける。


「誰が顔だけで頭が弱いですかっ!あなた達っクズにっ頭が弱いなんて言われるなんて心外ですっ!」

「な……」

「ちょ、ちょ待てよ!お前ら本当にリサヴィなのかよ!?」

「ぐふ。わかったらさっさと出ていけ。目障りだ、クズ」


 ヴィヴィがリムーバルバインダーをパージして威嚇すると彼らは「ひっー!」と悲鳴を上げて逃げていった。


 サラがため息をついて言った。


「……なんかどっと疲れました」

「ぐふ」

「ですねっ」

「「「はい」」」


 サラとしてはもう少し先に進みたかったが、予定外のウォルーとの戦闘が発生してその解体作業もあるのでこのキャンプスペースで一泊することにした。



 しばらくしてクズ魔装士がこそこそしながら戻ってきた。

 ウォルーに襲われたときに捨てた両肩に装備する荷物入れを回収にやって来たのだ。

 それに皆気づいたがこれ以上精神疲労をしたくなかったので無視した。

 するとクズ魔装士は調子に乗った。

 まだ手をつけていないウォルーを回収しに向かったのだ。

 それに気づいたヴィヴィがリムーバルバインダーでクズ魔装士の頭をど突くと頭を押さえながら逃げて行った。

 もちろん、これで終わらない。

 終わらせるはずがない。

 それがクズなのである。



 深夜。

 闇夜に紛れてサラ達のキャンプスペースに近づく者達がいた。

 クズである。

 あのクズ達が懲りずにやって来たのだ。

 匍匐前進でジリジリと近づいて来る彼らに見張りをしていた新米女冒険者達はすぐ気づいた。

 新米女冒険者達が囁き声で話す。


「……あれで隠密行動しているつもりなのかしら?」


 そう言ったのは新米女リーダーである。


「本当にね」


 彼らクズの行動は探索に長けた盗賊でなくても誰でもわかった 。

 何故ならば、彼らは思いっきり音を立てており、隠密行動にはほど遠かったからだ。

 特にクズ魔装士が一番酷かった。

 両肩の荷物入れが地面を擦っているのだ。

 新米女冒険者達が目立った動きを見せないため、彼らは隠密行動が上手く行っていると思っているようだった。



 突然、新米女リーダーが焚き火を消した。

 いきなり、前が見えなくなりクズ達は慌て出す。

 立ち上がった直後、クズ達の足元に何かが飛んできた。

 目が暗闇に慣れると地面に矢が突き刺さっているのが見えた。


「なっ!?」


 驚くクズ達に向かって新米女リーダーが叫んだ。


「今のは警告です!それ以上近づいたら今度は当てます!」


 新米女リーダーが暗闇でも正確に矢を放てたのは予め利き目を閉じて目を慣らせていたからだ。


「ちょ、ちょ待てよ!」

「慌てんなって!俺らだ!俺ら!」

「おう!俺らだ!」


 クズ達が馴れしく話しかけてくるが、新米女冒険者達は彼らに対して親しみを抱くような感情は全くない。

 お互いの温度差は著しくかけ離れていたのである。

 そのことにクズ達は全く気づくこともなく、もう自分達だとわかったから大丈夫だろうと勝手に判断し、クズリーダーは警告を無視して歩き出す。

 相手がわかった、イコール、安心できる相手、ではない。

 新米女リーダーは警告を無視したクズリーダーに容赦なく矢を放った。

 クズリーダーの右足に矢が突き刺さり、悲鳴を上げて転がる。

 新米女リーダーの行動に冷めた声が飛んだ。


「ぐふ。まだまだ甘いな。今ので仕留めておけば、うっかり、で済んだものを」

「そ、そうですか」


 矢を放った新米女リーダーは引き攣った笑みを浮かべた。



 再び焚き火が点く。

 そこには戦闘準備万端のリサヴィと新米女パーティが揃っていた。

 クズ達は両手を上げて降参の合図を送ってきた。



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