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悪夢を振り払え〜あなたを魔王にはさせません!〜  作者: ねこおう
第4部 クズ達のレクイエム編(タイトル変更)
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471話 新たなるクズ、現る!

 訓練がひと段落して休憩していると森の方が騒がしくなってきた。

 目を向けると森の中から冒険者らしき者が飛び出してきた。

 その数は四。

 キャンプスペースに誰かいることに気づいたのだろう。

 真っ直ぐに向かってくる。

 やって来たのは彼らだけではなかった。

 その後をウォルーが追ってきた。

 その数は軽く十を超える。



 こちらへ向かってくる冒険者達の一人がサラ達に向かって叫んだ。

 

「魔物を誘き寄せてやったぞ!さあ、仕留めろ!!」

「急げよ!!」


 その言葉を聞き、サラ達、リサヴィは確信した。


「あ、こいつらクズだ」


 と。



 サラが新米女冒険者達に声をかける。


「戦えますか?」

「だ、大丈夫です!」

「やれます!」

「私も大丈夫です!」

「ではすぐに戦闘準備をしてください」

「「「は、はい!」」」

「ぐふ。落ち着け。まだ慌てなくても十分に距離がある」

「「「は、はい」」」


 ヴィヴィの声が聞こえたわけではないと思うが、サラ達のところへ一直線に向かってくる冒険者達が怒鳴り声をあげた。


「なにとろとろやってやがる!!もうすぐそこまで来てんだぞ!!」


 そのパーティの、いや、もうクズパーティでいいだろう、クズパーティのクズリーダーが怒鳴った直後に後方で悲鳴が上がった。

 最後尾を走っていたのはフェラン製のあらゆる機能をオミットした廉価版魔装具を装備したクズ魔装士だった。

 そのクズ魔装士が転んだのだ。

 そこへ襲いかかるウォルー。

 クズ魔装士は体を丸めてウォルーの攻撃に耐える。

 彼の両肩に装備しているのは盾ではなくただの荷物入れであるが、そこそこの強度があるのでクズ魔装士の体を守る役目をしていた。

 だが、長くは持たないだろう。

 仲間の危機に気づき、クズ冒険者達はUターンして助けに向かう、

 なんて事はなく、


「よっしゃ、囮が時間を稼いでくれるぜ!」


 と心の中で歓声を上げたのであった。

 いや、思わずガッツポーズをする者もいた。



 新米女リーダーと新米女盗賊が弓を構えるが撃つのを躊躇する。


「ぐふ?何をやっている。もう射程圏内だろうが」

「そうですけど……」

「あの人達に当たるかもしれませんので……」

「ぐふ。構わん撃て。見ただろう、威張り散らして仲間を平気で見捨てる姿を。間違いなく奴らはクズだ。死んでも構わん。責任はサラがとる!」


 ヴィヴィが清々しいほどキッパリと言い切った。


「「はい!」」

「おいこら!」



 新米女リーダー、そして新米女盗賊の放った矢がクズに命中する、

 事はなくウォルーへと命中した。

 しかし、致命傷ではなかった。


「仕留め損なったわ!」

「私も!」

「足止めだけでも大丈夫です。向かってくる数を減らして絶対に多対一の戦闘には持ち込まれないように!」

「「はい!」」



 しばらく矢を放ってウォルーを牽制すると適度に散り散りになり、移動スピードも落ちて来た。

 それを見て、新米女リーダーが弓から剣に持ち替える。


「わ、私、行きます!」


 サラ達は反対しなかった。

 ウォルーはEランクの魔物であり、ランクで言えば新米女冒険者のFより上である。

 ただ、冒険者養成学校の弁によると卒業した戦士の実力はEランクに匹敵するとのことで、その言葉を信じるならば一対一であれば負ける事は無いはずだった。

 サラが彼女と稽古をしていた時はそれだけの実力があるとは思えなかったが、リオとの訓練で彼女は急激に力をつけた。

 本番でもあの力が出せれば二、三体程度なら同時でも互角に渡り合えるだろう。

 とはいえ、一斉に襲いかかってくることがないとしてもあの数を一人で相手にするのは流石に厳しい。

 他の新米女冒険者達の援護があるとはいえ、一歩間違えたら死ぬ。

 だからサラも前に出て彼女をフォローするつもりであった。


「わかりました。私も行きます。でも私に頼らないで」

「はい!ありがとうございます!」


 新米女リーダーがパーティメンバーに指示を飛ばす。


「あなたは引き続き弓で援護を!」

「わかったわ!」


 新米女リーダーが自分の矢筒を新米女盗賊に預けた。


「私がシールドの魔法を使うわ!」

「お願い!そのあとは魔法攻撃を。できれば私の傷を治す分は魔力を残して欲しい」

「わかったわ!」


 魔法防御シールドを身に纏った新米女リーダーとサラが前に出ようとした時だった。


「あ、サラさんっ、わたしが行きますっ」

「え?」


 緊張感のない、のほほんとした顔をしたアリスが左腕に小型の盾を装着し右手にメイスを持って前に出て来た。

 これには新米女リーダーだけでなく他の新米女冒険者も驚いた。

 ヴィヴィがアリスに声をかける。


「ぐふ。やり過ぎるなよ」

「わかってますよっヴィヴィさんっ」


 サラもアリスの戦闘力なら大丈夫だと判断した。


「任せます。気をつけて」

「はいっ」


 アリスが走り出す。

 その後を慌てて新米女リーダーが追った。



 アリスと新米女リーダーがクズ冒険者達とすれ違う。

 その際、クズリーダーが信じられない言葉を吐いた。


「俺達の役目はここまでだ!後は任せたぞ!」


 まるで自分達は魔物を誘き寄せる役だったかのような発言が飛び出したのだ。

 彼らとは初対面なのだから当然そんな打ち合わせをしているわけがない。

 クズリーダーがアリス達を誰かと勘違いしているわけでも当然ない。

 こう言っておけば戦闘終了後、獲物の権利を主張できると思ったのだ。

 クズリーダーに続いて他のメンバーも図々しい言葉を吐いた。


「あのうすのろもちゃんと助けろよ!」

「見殺しにしたら承知しないぞ!」


 転んだクズ魔装士を見殺しにしようとしているのは彼らなのだが、そんな事を微塵も感じさせない堂々とした物言いであった。

 当然、アリスはクズ達の言葉を無視した。

 新米女リーダーも返事しなかったが、それは無視したのではなく、目の前のウォルーに集中しており、彼らの声が聞こえていないだけであった。

 クズ達は無視されて怒り出すが引き返したりはしない。

 そのまま安全圏へと逃げ延びた。



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