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悪夢を振り払え〜あなたを魔王にはさせません!〜  作者: ねこおう
第4部 クズ達のレクイエム編(タイトル変更)
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468話 新米女冒険者達の不調

 夜の見張りは研修の一環として新米女パーティだけで行う事にした。

 サラが不安を口にする。

 

「あなた達だけで見張りをするのは正直厳しいです。戦闘経験も少ないようですし、本来なら経験をもっと積むまでキャンプは出来るだけ避けた方がいいのですが」

「ぐふ。そんな事を言っていたらキリがないぞ」

「ええ。それに経験を積んでおくのは悪くないので敢えてこのままで行きます」

「「「はい」」」

「ぐふ。もう一人いればよかったのだがな」

「前はいたんです」

「そうなんですかっ?」

「はい。でも引き抜かれてちゃって……」


 話によると彼女達は最初四人パーティだったらしい。

 もう一人女戦士がいたのだ。

 だが、ある依頼をEパーティの先輩とこなした時に向こうの戦士と恋仲になってそちらのパーティへ移籍してしまったらしい。


「あの尻軽が……」


 ボソリと新米女盗賊が呟いたのがサラ達の耳に入ったが聞こえなかったことにした。

 どのように見張りをするかは新米女パーティに任せる事にした。

 その結果、三交代で行う事になった。

 その順番は、

 新米女盗賊と新米女魔術士、

 新米女盗賊と新米女リーダー、

 新米女リーダーと新米女魔術士

 

 である。

 その夜は魔物の襲撃もなくそのまま朝を迎えた。



 最初に異変に気づいたのはサラだ。

 新米女リーダーの足取りが頼りない。

 ふらついており、表情も厳しいものだった。

 

「ここで少し休みましょう」


 新米女リーダーはサラと目が合い、自分のためだと気づいた。

 

「サ、サラさん!私なら大丈夫です!」

「大丈夫に見えません」

「でも私のせいで……」

「あなただけではありません」


 サラの言う通り他のメンバーも新米女リーダーほどではないが苦しい表情をしていた。

 

「予定も大事ですが、予定通り着いても体を壊して動けないのなら意味がありません」

「ぐふ。そのくらい気づけ」

「「「は、はい……」」」


 という事で予定したキャンプスペースではないが休憩を取る事になった。



 街道脇に逸れて新米女冒険者達が腰を下ろす。

 ヴィヴィが魔道具ホットを取り出し、アリスが水を生成して湯を沸かす。

 リオが薬草茶を新米女冒険者達に配った。

 それを飲んでほっと息を吐く。


「美味しいですリオさん」

「そうなんだ」


 サラが新米女冒険者達に尋ねる。


「みんな昨日は眠れなかったようですね」

「は、はい。冒険者養成学校でもキャンプをしたことはあるんですけど、南の森の出口付近で街に近かったので……」


 新米女リーダーが小さな声で正直に答える。

 

「わ、私もこんな遠くまで来たのは初めてで、いろんな音が気になっちゃって……」

 

 新米女盗賊は耳が良すぎるために周囲の音に過剰に反応してしまったようだ。

 新米女魔術士が済まなそうな顔をしながら言った。

 

「私はその、魔法が強くなったのが嬉しくて興奮が止まなくて、ついもっといい方法があるんじゃないかと考え込んでしまって………」

「ではここで一時間ほど休憩するので寝てください」

「そんな……」

「ぐふ。決定だ。次はキャンプスペースまで何があろうと休みはなしだ」

「「「は、はい!」」」


 新米女冒険者達はリュックを枕にしてその場に横になった。

 暖かい陽が眠気を誘い、すぐに寝息を立て始める。

 


 サラは新米女リーダーと新米女盗賊との稽古で思ったことがある。

 正直に言って最初に指導した新米冒険者達の方がレベルが上だと。

 実際、モモから彼らは皆Eランクに上がり活躍中と聞いている。

 一瞬、女性だからかと思ったが周りを見渡してそれはない、との結論に至る。


「サラさんっ、今っ、変なこと考えませんでしたっ?」

「何も考えていませんよ」


(いつもはおかしな事ばかり言うのにたまに妙に鋭いわよねアリスは……)


 サラは再び考えに浸る。

 

(もしかしたら最初に指導した彼らは成績上位だったのかもしれないわね。そうだったとしても何の解決にもならないけど。ともかく彼女達はもっと鍛えないと今のままじゃすぐに死んでしまうわ。それに彼女達の敵は魔物だけじゃないのだから)


 女性である彼女達には別の危険もあるのだ。

 サラがリオに目を向けるとリオは空をぼーと見ていた。

 その顔を見る限り何も考えていないように見える。

 サラは最近のリオの急激な変化に驚いていた。

 リオの魔術の知識についてもそうだが、そもそも以前のリオはお節介を焼かなかった。

 極論すると殺されそうな人がいても黙って見ている、

 それほど人には無関心だったのだ。

 そのリオが自ら進んでアドバイスをした。

 それも的確に。

 もしかしたらあの新米女魔術士がリオのタイプだった、

 との考えが一瞬頭に浮かんだが、その後の態度からすぐに否定する。

 サラは新米女魔術士の会った時の力を知らない。

 ただ、彼女の話を聞く限りではリオのアドバイスで魔法の威力が約二割向上したらしい。

 それは急成長した、なんて言葉で済ませられるものではない。

 数時間でその成長はハッキリ言って異常だ。


(今のリオなら他の者にも的確なアドバイスをしてくれるのかもしれない……他にも知識が増えているかもしれないし、試して見る価値はあるわね)


「リオ」

「ん?」


 リオがサラに顔を向ける。


「キャンプに着いたら私の代わりに彼女達に稽古をつけてくれませんか」

「料理はどうするの?」

「それは私が……」


 サラの言葉を遮って全力で拒否する者達がいた。

 

「ダメです!」

「ぐふ!殺す気か!」


 アリスとヴィヴィである。

 

「な、何を言い出すのよ!?私の料理の腕はそこまで……」

「絶対ダメですっ!」

「ぐふ!絶対殺す気だな!」

「おいこら!!大体ヴィヴィ!あなたは誰が作っても食べないでしょうが!!」

「ぐふ!食材に謝れ!!」

「まだ作ってもおらんわ!!」


 サラ達が結構大きな声で激しく言い争うが、新米女冒険者達が目覚める事はなかった。

 


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