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悪夢を振り払え〜あなたを魔王にはさせません!〜  作者: ねこおう
第4部 クズ達のレクイエム編(タイトル変更)
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458話 クズ、功績を語る

 Bランクパーティはそのままゴーレムの警備についた。

 彼らは今回の事でこのゴーレムはまだ危険である事がはっきりしたので先ほど以上に気を引き締めることにした。



 リサヴィが復活したセーフティーゾーンへ戻ってきた。


「おかえり。大丈夫だったか?」

「ええ」


 サラが起きた事を説明する。


「簡単に言いますとクズ達がゴーレムに不用意に近づき、彼らの魔術士がゴーレム取り込まれて死にました」

「そうか」


 彼らは死んだクズの事については全く興味がないので何も聞かなかった。


「あのゴーレムはまだ動くという事だな?」

「はい。まだ十分注意が必要です」

「で、そいつらは?」


 冒険者の一人が部屋の角でアホ面晒して気絶しているクズ二人に目を向けて尋ねる。

 二人を担いで来たヴィヴィが部屋に入るなり乱暴に転がしたのだが、その程度では彼らは目覚めなかった。


「ぐふ。これ以上、私達の邪魔をされてはかなわんので黙らせた」


 ヴィヴィがそう言うとCランクパーティがクズに見下すような目を向けた。


「……なあ、そいつらさあ、そのまま放置してくればよかったんじゃないか」

「そうだな」

「始末してもよかったんだぜ」


 Cランクパーティは冗談でも言うように笑いながら言ったが、皆、目は笑っていなかった。

 今回の事件の発端はクズだ。

 彼らとは別のクズだが、クズである事は変わらないし、彼らのせいで小型ゴーレムを取り逃し、今またゴーレムを再起動させるという、迷惑しかかけない存在だ。

 ヴィヴィが小さく首を横に振る。


「ぐふ。私達は無駄な殺生はしない」

「そ、それもそうだな」


 彼らは何か言いたそうだったがそれを口にはしなかった。

 サラは彼らの言動から“リサヴィ派”という言葉が頭に浮かんだが、口に出すことはなく話を変える。


「小型ゴーレムを取り逃したのは残念ですが六階層への階段は使用できるようになりましたし、セーフティーゾーンも不完全とはいえ、復活しました」


 サラが皆の様子を窺うと皆頷いた。


「それでこれからのことですが、今警備しているゴーレムもそうですが、セーフティゾーンを無人にするのも配です」

「そうだな。セーフティくんは固定されている訳でもないから新たなクズが現れてまた盗むかもしれないからな」

「はい。とはいえ、外への連絡も必要ですので、」


 そこでサラがCランクパーティを見た。


「外への連絡をお願いできますか?」

「それはいいが、二組で大丈夫か?」

「ゴーレムの見張りは交代で行いますし、一方は復活したここセーフティゾーンで休憩できますから大丈夫でしょう」

「俺達手伝うぞ」


 会話に入って来たのは六階層へ向かう階段で休んでいたBランクパーティだった。


「いいのですか?」

「ああ、助けてもらった礼もしたいし、それにまだ俺達休み足りないしな。少なくともこのセーフティくんの見張りくらいはやれるぞ」

「それは助かります」


 Cランクパーティのリーダーがサラに向かって言った。


「わかった。交代要員をすぐに呼ぶようにする。外に待機してるからそんなに時間はかからないと思うぜ」

「あと、倒したゴーレムについても対応を尋ねてください。いつまでもあそこに置いておくわけにも行かないでしょう」

「ぐふ。あれは珍しいからな。魔術士ギルドが高く買ってくれるのではないか」

「わかった」

「それとゴーレムの討伐報酬ですが、リオとも相談して今回特別依頼を受けた全員で分けようと思っています」

「ほんと……」


 Cランクパーティのリーダーの言葉に叫び声が割り込んで来た。


「「ひやっほー!!」」


 クズである。

 さっきまで確かに気絶していたが、“報酬”という言葉が耳に届き、急速に覚醒したのだった。

 

「だが、まあ当然だな!」


 クズリーダーが転がされた格好でなんか誇らしげな顔をする。

 その姿はとても滑稽であった。

 クズのバカっぷりにCランクパーティが激怒する。


「アホか!お前らは特別依頼受けてねえだろ!」

「「ざけんな!!」」

「『ざけんな』じゃねえ!そもそもお前らは邪魔しかしてねえだろうが!」

「「ざけんな!!」」


 そう叫んだ後、クズリーダーがまたおかしな事を言い出した。


「お前らが特別依頼をこなせたのは俺らの仲間の犠牲があったからだぞ!」

「だな!」

「……は?」

「またですか……」


 サラは、いや、リオを除くリサヴィのメンバーが頭を押さえる。

 そんなサラ達に構わずクズは自分達の功績を語り始めた。

 “妄想を現実として語る能力”が発動したのだ。

 まず、クズ盗賊の愚行であるが、あれは“ごっつあんです”をしようとしたのではなく、ゴーレムを倒したと思い込んで油断していたリオを小型ゴーレムが狙っているのにいち早く気づいたクズ盗賊が自分の身を犠牲にしてリオを守ったのだそうだ。

 更にクズ魔術士は頭部を失ったゴーレムに再起動の兆しが見えたので、これまた自分の身を犠牲にしてゴーレムを制御し、わざとBランクパーティに討たれたらしい。

 語り終えたクズ達の顔はとても誇らしげだったが、サラ達は彼らクズの行動に感謝の言葉を言わなかったし、その話を聞いていた他の者達も感動しなかった。

 しかし、気を良くしたクズは報酬についても言及し始めた。


「という事でだ。サラ、お前はゴーレム討伐報酬を全員で分けると言ったが、俺らは納得しないぞ!」

「だな!確かにゴーレムを倒したのはお前らだ。それは認めてやる!だがな、俺らの仲間の犠牲がなければ少なくともリッキーキラーは間違いなく死んでいたんだからな!」


 その言葉にリオは無反応だったが、Cランクパーティからすごい殺気をサラは感じた。

 サラが目を向けるとその殺気は消えた。


(……彼らは間違いなくリサヴィ派ね)


 クズは彼らの殺気に気づく事なく気分よく話を続ける。


「それで肝心の報酬だが、そうだな……よし、俺らが七割、お前らが三割だ!俺らは二人も犠牲者が出たんだからな!!」

「文句は言わせねえぜ!!」


 しばし、沈黙後、救出されたBランクパーティのリーダーが勝ち誇った顔をするクズを見ながら呟いた。


「……すげえな。俺、今までいろんなクズを見てきたがここまでのクズ、初めて見たぜ」


 彼のパーティが皆頷く。


「「ざけんな!誰がクズだ!?」」

「お前らだ」


 救出されたBランクパーティのリーダーが無表情で言った。

 喚き続けるクズに我慢が出来なくなった救出されたBランクパーティはリュックから包帯を取り出し、「ちょっともったいねえけど」と呟きながら包帯を手に持ってクズに近づくとその口に猿ぐつわをして黙らせた。



 もがくクズを見ながらCランクパーティのリーダーがボソリと呟く。


「……これがクズコレクター能力か。初めて見たがすごいな」


 その言葉にサラが驚いた顔でCランクパーティのリーダーを見た。


「今の言葉をどこで!?」


 Cランクパーティのリーダーは「はっ」として「しまった」という表情に変わる。


「いや、その……」

「……」


 サラの視線に耐えきれずCランクパーティのリーダーは情報源を口にする。


「その、演劇で……」

「演劇?」


 サラが以前見た演劇“鉄拳制裁”でその言葉は出てこなかった。

 サラはとても嫌な予感がした。


「その演劇とは?」

「その、ほら……」

「……」


 Cランクパーティのリーダーはまたもサラの視線に耐えきれずその劇名を口にする。


「“世直し冒険者達”って演劇があってな、そこに出てくるパーティがリサヴィがモデルだって言われてて、サラらしき冒険者がそのコレ……能力を使ってクズ達を呼び寄せて退治してるんだ」

「……」

「ぐふ、ついにバレたか」

「で、ですねっ」


 アリスは自分は関係ありません、という表情で同意する。


「おいこら!」


 そこでクズリーダーの猿ぐつわが解けた。

「ぷはっ」とクズリーダーが息を吐いた後で叫んだ。


「それだ!」

「はあ?」

「その能力で俺らは呼び寄せられたんだ!」

「だな!」


 クズリーダーに遅れて猿ぐつわを強引に解いたクズ戦士が同意する。


「何を言ってるんですかあなた達は」

「ぐふ。まあ、待て。こいつらは自分達がクズである事をやっと認めたのだ」

「ざけんな!俺らはクズじゃねえ!」

「おう!俺らは間違えられてサラに呼び寄せられたんだ!」

「だな!つまり俺らは被害者だ!被害請求をするぞ!」

「お詫びに俺らのパーティに入れ!サラ!」

「……」

「ついでにアリエッタも入れてやるぞ!」

「……」


 調子に乗って喚きまくるクズを冷めた目で見ていたCランクパーティのリーダーが表情を消して言った。


「……もう、こいつら“口封じ”しとかないか?」


 Cランクパーティのリーダーの言葉にサラは思わず頷きそうになったがどうにか堪えた。

 しかし、大半の者達は頷いていた。

 それを見てクズは状況を理解できたようで怯え出す。

 救出されたBランクパーティが無言でクズに近寄ると再び猿ぐつわをした。

 今度はしっかりと。



 クズのせいで遅くなったが、Cランクパーティがギルドへ報告に出発する。


「まだ下層の魔物もいると思いますから十分注意してください」


 ここへ来る途中に六階層以降で出現する魔物を見かけたが、進路上ではなかったので退治しなかったものもいた。


「おう、任せてくれ!」


 Cランクパーティのリーダーは元気よく答えると一瞬だけ、クズに冷酷な視線を向けた。



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