457話 クズゴーレム爆誕
サラ達がゴーレムを倒した場所へ向かうとゴーレムが立ち上がっていた。
小型ゴーレムが戻って来て合体したのかと思ったが違った。
ゴーレムには頭がついていた。
元のではなく、クズの一人の頭だ。
人の二倍上の大きさもあるゴーレムの頭としては当然小さく、とてもアンバランスだった。
「……なんですか、あれ」
「あっ、見てくださいっ!ゴーレムの背中っ!」
小型ゴーレムが抜けた後、その背中にはぽっかりと穴が開いていたが、そこからクズの下半身が飛び出していた。
サラはクズの顔を覚えていなかったが、服装からクズ魔術士だとわかった。
「……ぐふ、どうやったらああなるのだ?」
サラ達が来たことに残りのクズが気付き、慌ててそばにやって来た。
「ゴーレム野郎が俺らの仲間を取り込みやがった!」
まるで自分達が被害者かのようなクズの口振りにすぐさまBランクパーティの一人が怒鳴りつける。
「何が取り込んだだ!どうせプリミティブがないかと自分から背中の穴に入ったんだろうが!」
図星だったらしくクズは一瞬言葉を失うがすぐさま反論する。
「ざ、ざけんな!!」
「お、俺らがそんなことすると思うのかよ!?」
「ぐふ。思うな」
「それ以外思い当たりません」
ヴィヴィに続き、サラも冷たく言い放つ。
「「な……」」
そんな事をしているうちにゴーレムがこちらを見た。
その顔は青白く、生気はない。
その口が開いた。
「リーダー……」
「お、お前、生きてたのか!?」
クズ魔術士と合体したゴーレム、略してクズゴーレムの顔が笑顔に変わった。
「リーダー」
「な、なんだ?」
「俺は……俺は、俺は人間をやめるぞ!リーダー!!うほほほほおおっー!!」
クズゴーレムがゴリラのような奇声をあげて、両腕で胸を叩く。
まさにその動きはゴリラであった。
クズゴーレムが青白い表情に満面の笑みを浮かべて叫んだ。
「俺の溢れんばかりの魔力と!この強力なボデーがあればあ!完全だぁ!完全体だあ!完全体となった俺は無敵だぁ!無敵無敵むてーきいー!!」
クズゴーレムは自分の力に酔っていた。
「ぐふ。何が溢れんばかりの魔力だ。お前から溢れているのはクズ臭だけだ」
ヴィヴィの呟きはクズゴーレムには聞こえなかったようだ。
「この力があれば姉ちゃん達にもモテモテだぜ!」
その言葉にすぐさまツッコミが入る。
「いや、気味悪がるだろ」
「てか、その体でどうやって姉ちゃんと遊ぶ気だお前は!?」
「そのガタイじゃ店にも入れないだろ」
Bランクパーティの突っ込みは聞こえたようだ。
「ざ、ざけんなっー!!」
図星を指されクズゴーレムは激怒し、襲いかかって来た。
「俺らに任せろ!」
クズ達に騙された責任感からかBランクパーティが前に出る。
サラがリオの様子を見るといつもの無表情でクズゴーレムを見ていた。
武器も手にしておらず全く戦いに参加する気はないようだった。
先程の戦闘の疲れが残っていたからか、戦う価値がないと判断したのかはわからない。
クズゴーレムがぶんぶんと腕を四回ほど振り回した頃だろうか。
クズゴーレムから何かが落ちた。
それは取り込まれたクズ魔術士の下半身だった。
クズゴーレムは痛みを感じないようでそれにしばらく気づかなかったが、その足が何かをグシャっと踏み潰したことに気づいてそれが自分の下半身だとわかり絶叫する。
「お、俺様の下半身があああああ!!姉ちゃんと遊ぶための大切なモノがあああ!うほほおほおおおおお!!」
「うるせえ!」
Bランクパーティの攻撃はクズゴーレムの体にダメージを与える事が出来た。
クズゴーレムはリアクティブバリアを発生しなかったからだ。
クズ魔術士の魔力ではリアクティブバリアを発生させられないのか、リオの攻撃で故障したのか、それとも小型ゴーレムがいないと無理なのか、どれかはわからない。
ただ、リアクティブバリアがなくても十分硬く厄介であった。
「手を貸しましょうか?」
「大丈夫だ!」
「そこで見てろって!」
サラの援護を彼らは断った。
倒す手がないわけではないのだ。
今はわかりやすい弱点がある。
そう、生身の頭だ。
Bランクパーティは連携攻撃を仕掛け、出来た隙を見逃さずにリーダーの戦士がクズゴーレムの頭を切り飛ばした。
「うほほぉぉぉ……」
頭が地を転がり、その後、クズゴーレムの体が力が失ったようにバタンと倒れて動かなくなった。
それを見てヴィヴィが呟く。
「ぐふ。あんな頭でもないよりマシということか」
「ですねっ」
戦いが終わり、Bランクパーティがクズを問い詰めていた。
「よくも騙してくれたな!!」
「「ざ、ざけんな!」」
「『ざけんな』じゃねえ!!」
「何故を嘘をついたのですか?いえ、理由は聞かなくてもわかっていますが一応念の為に聞きます」
「お、俺達も役に立つってところを見せようと思っただけだ!」
「おう!お前らが俺らの事を『クズクズ』言いやがるからな!」
「ぐふ、なるほどな。それで見事役立たずのクズであることを証明した、と言うことか」
「「ざけんな!」」
ここで彼らは驚くべきことを口にする。
「大体な!今のだってゴーレムを倒せたのは俺らの仲間が身を犠牲にしたからだぞ!」
「「「「「「……は?」」」」」」
「……ぐふ?」
「そうなんだ」
ゴーレムが再起動したのは彼らクズのせいなのだが、その事が綺麗さっぱりなかった事にされていた。
クズは更に調子に乗って続ける。
「ちゃんとギルドに説明しろよ。俺達の仲間が身を犠牲にしたおかげで依頼が達成できたってな!」
「だな!ギルドに交渉して俺達の事後依頼を認めさせろよ!」
「「「「「「……」」」」」」
驚くべき事に彼らはリサヴィ相手にクズスキル?コバンザメを発動させたのであった!
だが、それは当然の事であった。
彼らにとってクズスキル?は既に体の一部なのだ。
チャンスが到来すると考えるより先に行動してしまうのである。
オートでクズスキル?コバンザメが発動し、考えなくても言葉がすらすらと出てくるのだ。
クズのバカな言い分に呆気に取られていたBランクパーティが我に返った。
「ふざけるのも大概にしろ!」
「何がお前らのお陰だ!」
「お前らクズが起動させたんだろうが!」
「お前らクズのバカな行動のせいでどれだけ俺達が迷惑を被っていると思う!?」
アリスも加わる。
「ですねっ!何の役にも立たないどころかっ、邪魔ばかりしてますっ」
「ざけんな!!」
「こっちは二人もメンバー失ってんだぞ!!もっと優しい言葉をかけたらどうだ!?」
「ぐふ。自業自得、という言葉を送ろう」
「「ざけんな!!」」
四面楚歌の中でクズの言葉が見事にハモる。
ヴィヴィがため息をついて言った。
「ぐふ。とりあえずこのクズ達は縛っておこう。これ以上、邪魔されてはかなわん」
「ざ、ざけん……ぐへっー……」
「ちょ、ちょま……ぶほっー……」
クズ二人はヴィヴィのリムーバルバインダーにぶっ飛ばされ、アホ面晒して気絶した。
そんな二人を皆でぐるぐる巻きに縛った。




