450話 クズ達の帰還
ギルドの事後依頼禁止、リサヴィにちょっかいをかけての自滅、冒険者達の自衛、そしてリサヴィ派による粛清などで急激に数を減らしていったクズ冒険者達。
このままでは絶滅危惧種に指定されるのではと心配する者もいた、
なんてことはなく、冒険者達は安心して依頼をこなせると安堵していた。
当のクズ冒険者達だが、
「このままクズスキル?を失わせてなるものか!」
と思ったかどうかはともかく、まだクズスキルを使い続ける者達がいた。
その中のいくつかのパーティはダンジョンへ新たな活路を見出そうとしていた。
その標的となったのは活ダンジョンの一つであるカシウスのダンジョンである。
クズ冒険者達の帰還にマルコギルドは両手を挙げての歓迎で迎えた、
なんてことはなく、それを予期してカシウスのダンジョンへの入場審査を厳しくしていた。
今までの依頼履歴を調べて限りなく黒に近い者も入場を禁止としたのだ。
結果、クズ冒険者達はことごとく入場を拒否された。
これには近隣のギルドも倣い、クズ冒険者達のカシウスのダンジョン入りは不可能かと思えたが、
「クズ冒険者の名は伊達ではない!」
と(本人達は自分達をクズだと思っていないが)クズ包囲網をすり抜ける者達がいた。
カシウスのダンジョンは冒険者だけでなく、レリティア王国の許可を得た者も入ることができる。
もうおわかりであろう、彼らはギルドに拒否されると王国へ入場許可を求めたのだ。
こちらの方が取り分は減るがそれでもゼロよりはマシである。
こうしてまんまと王国から許可を得た彼らはカシウスのダンジョンへ入る事に成功したのだった。
クズ冒険者達は上層の階段付近で待ち伏せして自分達が扱いやすそうなパーティが通りかかると、
「手伝ってやるよ」
と声をかけて強引に同行し、クズスキル?“ごっつあんです”によって獲物を奪っていった。
この待ち伏せ場所を巡ってクズ同士で争う場面もみられた。
下層へ行くほど魔物から得られるプリミティブの価値は高いがその分魔物も強い。
これが外なら安全な場所で雑談しながら他の冒険者が獲物が倒すのを待っていればいいが、狭いダンジョン内ではそうはいかない。
魔物と戦おうにもそのようなクズ行為をする者達に力がある方が稀であり、返り討ちにあうのが関の山である。
当然、ランクを叫んでも魔物が怯むことはない。
そのため、ベストプレイスを取るのに必死だったのだ。
他に努力することがある気はするが彼らはそう思わなかったようである。
それだけクズスキル?を愛していたのかもしれない。
ところで、ダンジョンや迷宮にはセーフティゾーンが存在する。
セーフティゾーンには魔物の侵入を防ぐ結界が張られており、安全に休むことができる。
セーフティゾーンには大きく分けて二種類ある。
一つはダンジョン、あるいは迷宮内に最初から設置されているものだ。
そしてもう一つはそれらを攻略する冒険者達自身が設置するものだ。
このセーフティゾーンの作成方法も二つある。
一つはサラも以前使用したことがあるが使い捨ての魔除け板などを用いるものだ。
もう一つは魔道具、セーフティくんである。
セーフティくんは魔力が切れない限り効果が持続し、使い捨てのものより効果も高く、Bランクの魔物さえ寄せ付けない物もある。
魔力の代わりにプリミティブでも代用できるのでダンジョン内であれば不自由しないだろう。
セーフティくんを出来るだけ多くの階に設置したいところだが非常に高価であり、設置に手間も時間もかかるため多用されることはない。
さて、カシウスのダンジョンだが、もっとも探索が進んでいるパーティは九階層まで進んでいたが今のところセーフティゾーンは見つかっていなかった。
ただ、五階層のある部屋でセーフティくんを設置するのに好都合な台座が見つかった。
その台座中央には小さな穴があり、そこから魔力が噴き出していた。
つまりこの部屋にいれば魔力を通常より早く回復出来るのだ。
冒険者からその報告を受け、近隣ギルドが共同で出資してセーフティくんを購入し、その台座に設置してその部屋をセーフティゾーンにした。
その場所はギルドの掲示板で冒険者達に連絡済みだ。
セーフティゾーンが設置されたことで冒険者達は安全に休憩できる場所を確保でき、地上に戻ることなく長期間ダンジョン探索ができるようになった。
順調にダンジョン探索が進むと思われたが、ここで予期せぬ事件が起きる事になる。
その主役はクズパーティであった。
そのクズパーティは他のクズパーティとの待ち伏せ場所の取り合いで敗れた者達であった。
だが、このまま何もせずに戻れない。
ダンジョンに入るための許可証を得るために借金までしたのだ。
「こうなりゃあ、俺らで魔物を狩ってやろうぜ!」
経緯はともかく、その考えに至ったことは素直に褒めてやりたいところだ。
彼らは皆Cランク冒険者でクズに落ちる前はCランクに見合った力を持っていたが、クズスキル?の取得と共にその腕はDランクにまで落ちていた。
「確かに見下されるのは面白くねえしな」
「いっちょ本気ってヤツを見せてやるか!」
そのことに気づかず調子に乗るクズ冒険者達。
彼らは調子に乗ると止まることを知らないのだ。
「だな!周囲警戒なら俺に任しておけ!奇襲だってさせてやるぜ!」
盗賊はろくにダンジョン探索などしたことないのに自信満々に答えた。
彼らは根拠のない自信を持ってダンジョン探索を開始した。
彼らは順調にダンジョンの奥へと進んだ。
他の冒険者達が作成したマップを入手しており、迷う事なく最短距離で下層へと降りていく。
運よく一度も魔物に遭遇する事なく五階層までやってきた。
何もやっていないのだが五階層まで来れたことで彼らの根拠のない自信はマックスになっていた。
だが、この後すぐに自分達の力のなさを思い知る事になる。




