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悪夢を振り払え〜あなたを魔王にはさせません!〜  作者: ねこおう
第4部 クズ達のレクイエム編(タイトル変更)
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448話 魔装士の八つ当たり その2

 騎士姿のオートマタであるナイトメアが剣を抜き、盾を構える。

 その動きはとても自然で何も言わなければ鎧の中に人が入っていると思った事だろう。


「ぐふ。お前らもナイトメアの力を味わうが良い。やれ」


 ナイトメアが魔装士の命を受け、身近にいたクズ戦士に攻撃を仕掛けた。

 クズ達もただ見ているだけではなかった。


「死ね!棺桶持ち!!」


 魔装士にクズリーダーが斬りかかるが、それより早く魔装士が後方へ飛んだ。

 そして左肩にマウントされていたリムーバルバインダーをパージする。

 そのリムーバルバインダーの扉が開いた。


「ちっ、もう一体……な……!?」


 リムーバルバインダーの中にオートマタは格納されていなかった。

 その代わり、その扉と盾の内側は無数の深紅に染まる鋭い棘で埋め尽くされていた。

 それは肉食獣が獲物を捕食しようと口を大きく開けたようにも見えた。

 クズリーダーが空振りした隙を狙ってリムーバルバインダーが迫る。


「な、ちょ、ちょ待……」


 リムーバルバインダーがクズリーダーを呑み込んで扉を閉じる。


「がああああぁぁぁ!……」


 中からクズリーダーの絶叫が聞こえた。


「ぐふ、アイアンメイデンの味はどうだ?」


 クズリーダーから返事は無い。

 ただ、その代わりにリムーバルバインダーの扉の隙間から赤いものが流れ落ちる。

 それと同じくしてナイトメアと戦っていたクズ戦士の悲鳴が聞こえた。

 ナイトメアの斬撃で致命傷を負ったのだ。

 次の瞬間にはその首が宙を舞っていた。


「ひいっ!」


 クズ盗賊が恐怖し勝ち目なしと見て、その場から逃げ出そうと窓にタックルをかました。

 鈍い音と共に「ぐへ!?」とクズ盗賊の悲鳴が聞こえた。

 クズ盗賊は窓ガラスを割ることができず、跳ね返されて床を転がった。


「ぐふ、馬鹿め。その窓にはロックをかけてあったのだ」


 ロックの魔法は鍵閉め魔法であるが、その副作用で鍵のあるドアや窓を強化する。

 ロックで強化された窓ガラスはコンクリート以上の硬さを誇る。

 クズ盗賊はコンクリートの壁に自ら突撃したようなものであった。

 その衝撃で盗賊の首はおかしな方向に曲がり、ぴくぴくしているところをリムーバルバインダーがぐしゃっ、と押し潰した。

 最後の一人となったクズ女魔術士に魔装士が目を向ける。

 彼女はヴィヴィに受けたダメージでろくに口がきけず、魔法が使えない状態であった。

 何故戦えない状態でついて来たかと言えば、相手は棺桶持ちだと甘く見ていたのとその場にいないと分け前を減らされる恐れがあったからだ。

 クズ女魔術士は首を必死に左右に振り許しを乞うが、魔装士には通じなかった。


「ぐふ。お前には特別に死を選ばせてやろう。ナイトメアに斬り刻まれて死ぬか、リムーバルバインダーに押し潰されて死ぬか、それともアイアンメイデンで串刺しにされて死ぬか」


 リムーバルバインダーの扉が開き、全身穴だらけになったクズリーダーが現れてぼてっ、と倒れた。

 クズ女魔術士は涙を流して必死に許しを乞う。


「ぐふ。助けて欲しいのか?」


 クズ女魔術士が大きく頷いた。

 しかし、魔装士は非情であった。


「ぐふ。だが、断る。俺は“クズキラー”だからな」



「よう、少しはスッキリしたか?」


 ボロい家から出てきた魔装士に戦士姿の男が話しかけてきた。

 彼は魔装士の仲間で事情は飲み込めていたようだ。


「ぐふ。少しはな」


 この魔装士と戦士はメイデス神の使徒であった。

 リオ達がヴェインに来たことを知り、ヴェインにいた使徒達は急遽、リオの暗殺計画を立てた。

 今回のヴィヴィへの成りすましは彼らメイデスの使徒達がリオを暗殺するための計画の一部であった。

 彼は闇ギルドの者達がヴィヴィを殺せるとは思っていなかったし、ずっと成りすませるとも思っていなかった。

 彼らが仕掛けた罠までリオ達を誘導する。

 それまでの間、バレなければよかったのだ

 だが、彼らの計画はクズ魔装士達の登場により、いきなり躓くことになった。

 罠へ誘導するどころか、ヴィヴィに成りすますのさえ失敗してしまったのだ。

 様々な準備が無駄になり、彼はクズ魔装士達に怒り心頭であった。

 そんなところへノコノコと闇ギルドのクズ達がやってきたのである。

 闇ギルドのクズ達は多少なりともヴィヴィの足止めをしたようだったので、彼は役立たずと思ったものの殺すつもりはなかった。

 しかし、彼らがバカな話を始めたので殺すことに決めたのであった。



「ぐふ。だが、これは八つ当たりではないぞ。依頼を失敗しておきながら脅して金をせびりに来るなど万死に値する、というかそれ以外考えられないだろう」

「まあそうだな」


 戦士は「でも八つ当たりだろ」と思ったが口にはしなかった。


「しかし、闇ギルドも大したことないな。棺桶持ち一人も殺せないとは。俺達が行くべきだったな」


 その言葉に魔装士が首を横に振る。

 

「ぐふ。今回は闇ギルドがどのくらい使えるかの確認の意味もあった」


 魔装士は更に吐き捨てるように言葉を続ける。


「ぐふ、時間がなかったとはいえ、あんなクズしか用意できないなら高が知れている。依頼主の守秘義務も守らんしな」

「まあ、闇ギルドに集まるのは冒険者ギルドを追放されるような奴らばかりらしいし、クズしかいないんじゃないか」

「ぐふ」

「それでどうする?再チャレンジするか?」

「……ぐふ。やめておこう」


 他にも偽者達がいたとは言え、ヴィヴィの装備を真似ていたのは彼だけである。

 実質、選択はひとつしかなかったはずなのだ。

 にも拘らずサラは彼を選ばなかった。

 そのことからサラは最初から彼が偽者だと気づいていた可能性が高いと思ったのだ。

 偽者が複数いたことで慎重にさせてしまった可能性も否定できないが、それでも一度失敗した作戦をやる気は起きなかった。

 またクズ達の邪魔が入らないとも限らないし、次からは少しでも違和感を覚えたらすぐに顔なり冒険者カードを見せろということだろう。


「そうか。しかし、そうするとあの罠はどうする?急ごしらえとはいえ結構いい出来だったんだがな」

「どうしても使いたいなら相手を紹介するぞ」

「……あのフェラン製のクズ魔装士とそのクズパーティか?」

「ぐふ」


 魔装士がニヤリと笑った。

 その残虐性を秘めた笑顔は仮面で見えなかった。


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