447話 魔装士の八つ当たり その1
カルハン製第二世代魔装具を装備した魔装士が路地に入った。
先ほどヴィヴィに成りすまそうとして失敗した魔装士だ。
彼はヴェインの中で一番治安が悪いスラムと呼ばれる区域へと向かっていた。
そしてあるボロい家の中へと入っていった。
そのすぐ後に一組のパーティがその家に入って来た。
「ぐふ?なんだお前達は?」
そのパーティに魔装士は不機嫌であることを隠さずに尋ねる。
そのパーティのリーダーが残忍そうな笑みを浮かべて言った。
「冷てえな。お前の依頼を受けてやったのは俺達だぞ」
「ぐふ?なんだと?」
彼らはヴィヴィを襲った者達で闇ギルドに属していた。
闇ギルドは言葉から想像できるように表に出せない類の依頼を行うギルドで、その依頼の中には善悪を問わない殺人も含まれている。
メンバーには冒険者ギルドを追放された者達も多く在籍しており、彼らもまた冒険者ギルドを追放された者達であった。
「ぐふ、闇ギルドの守秘義務はザルだな」
魔装士が吐き捨てる。
「はははっ。まあそういうことだ」
「それで何の用だ?いや、いい。わかった」
「ほう、話が早いな」
「ぐふ。依頼を失敗したから報酬を返しに来たと言うわけだ。感心感心」
「ざけんな!そんなわけあるか!」
「ぐふ?すると他には見当がつかないな」
「こっちはな、お前の依頼を受けたせいで怪我したんだ。慰謝料を払って貰うぞ!」
確かに彼らには怪我人が何人かおり、中でも女魔術士が一番酷そうで顔を包帯で巻いていた。
彼女が怪我したために他の者の治療が出来ていないのだろう。
魔装士は治療費を支払う理由がどこを探しても見つからず、「ぐふ?」と首を傾げる。
「聞こえなかったか?慰謝料だよ。慰謝料」
「ぐふぐふぐふ」
「てめえ、笑ったな!?何がおかしい!?」
「ぐふ。これが笑わずにいられるか。依頼を失敗しておいて、更に金をせびりに来るとはな。そんな話聞いたことないぞ」
「あんなあ、冒険者ギルド本部のあるヴェインでの暗殺だぞ?どんだけ危険なことかわかってんのか?ああ!?」
「ぐふ、それも含めての報酬だったはずだ」
「わりーな。あれっぽっちじゃ足りなかったんだ」
「ぐふ。契約違反だな」
「はっ、これが闇ギルドじゃ常識なんだよ!覚えておけ!」
「ぐふ。断る」
「「「ざけんな!」」」
「ぐふ。まあ、暗殺に成功していたら考えなくもなかったが、失敗したお前らには銅貨一枚だって払う気はない」
「おいおい棺桶持ち。こっちが下手に出ているうちに素直に出したほうが身のためだぞ」
「ぐふ、また笑わせるのか。お前ら役者が向いているぞ。実体験を演じるだけで喜劇になる」
「「「ざけんな!」」」
「棺桶持ち風情がいい気になるな!!」
「ぐふ。その棺桶持ちに手も足も出ず逃げ帰って来たのだろうが」
「「「ざけんな!!」」」
「あいつはな、棺桶持ちの中でも別格だ。“暴力の盾”なんて二つ名があるくらいだからな」
「それに比べてお前はなんだ?ただの棺桶持ちだろうが!」
「ガハハ」と周りで笑い起きる。
「……ぐふ、そう見えるのか?」
「そうでなきゃ、俺達に奴の暗殺を頼みやしねーだろうがよ!」
「……」
「そうそう、慰謝料と言ったがよ、口止め料もあったな」
「ぐふ、口止め料だと?」
「これからも真っ当に生きたければな、“クズキラ”さんよ」
リーダーは「お前の身元は割れているんだぞ」と脅したつもりであったが、魔装士は全く動じなかった。
何故ならその名前は偽名だったからだ。
というか、何故偽名だと思わないのか彼は不思議に思ったが、相手はクズだからと考えるだけ馬鹿らしくなり途中でやめた。
そんなことを魔装士が考えているとも知らず、闇ギルドのメンバー、いや、もうクズでいいだろう、クズ達は脅しが聞いていると勘違いして調子に乗る。
「ほれ、これからも普通に生きたいならさっさと金を出せ」
「まあ、金がなくなったらせびりに来るかも知れんけどな!ガハハ!!」
「……ぐふ、なるほどな。ここでキッパリ終わらせたほうがいいな」
彼らは魔装士の今の言葉を手切れ金として大金をくれるのだと思った。
「まあ、まずは金だ。いくら出すかで今後の対応を考えてやる」
そう言ったクズリーダーの顔は偉そうだった。
「ぐふ、めでたい奴らだな。本当に」
「なんだとテメェ!」
「ぐふ。何度も言わせるな。まともに依頼も果たせないクズにやる金などない」
「「「ざけんな!」」」
クズどもが各々の武器に手をかける。
「ぐふぐふ」
「てめえ!身の程を知れ!!」
クズ戦士が斬りかかって来たが、魔装士は慌てる事なく、右肩にマウントされていたリムーバルバインダーをパージし、その斬撃を受け止めた。
「やるじゃねえか……ん?」
そのリムーバルバインダーの扉が開いた。
中には騎士の装備が一式入っていた。
それを見てクズ達がニヤリと笑う。
「ほう、金がないからそれで許して欲しいってか」
「ぐふ、バカが」
「んだとてめえ……!?」
装備と思われていた鎧の腕が動きリムーバルバインダーの縁を掴んで外に出て来た。
「な……盾ん中に仲間を隠してやがったのか!?」
その言葉を聞いて魔装士は「ぐふっ」と笑った。
「ぐふぐふ、やはり無知だな」
「てめえ……」
「リ、リーダー!そいつ、なんかおかしいぞ!」
「ぐふ、これはな、カルハン製オートマタ、ナイトメアだ」
「な……」
「ぐふ、その力は先の教団との戦いで異端審問官共をぶち殺したことで既に実証済みだ。ここまで言えば流石に無知でバカなお前達も理解できるだろう」




