444話 鉄拳炸裂
魔道具屋に向かったリオ達であったが、修理には数日かかると言われた。
明日にはヴェインを出発する事になっていたので断念することにした。
「ぐふ。私はブラックマーケット覗いてくる」
「ブラックマーケット?」
リオが首を傾げるとヴィヴィが説明を始める。
「ぐふ。出所不明の訳あり品を売っているところだ」
「そうなんだ」
「ぐふ。私一人で行く。お前達は目立つからな」
「ヴィヴィさんも目立ちますよっ」
「ぐふ。そうか?」
ヴィヴィが辺りを見回す仕草をする。
アリスも辺り見回すと魔装士の姿が目に入る。
「確かに魔装士結構見かけますねっ」
「ぐふ、私よりお前達の容姿の方が目立つし、神官は悪目立ちするぞ」
「確かにそうですね」
「わかった」
リオも特に行きたいわけではなかったようで頷く。
「ぐふ。その間にベルフィ達の所へ行ったらどうだ」
「ヴィヴィさんはウィンドの皆さんと会わなくていいんですかっ?」
「ぐふ。別に話す事はない」
サラは元パーティとは言え、メンバーを殺した手前、直接顔を合わせ辛いのだろうと一瞬思ったがすぐに思い直す。
(そんな繊細な性格の持ち主ではなかったわね)
「分りました。では待ち合わせは中央広場ということにしましょうか」
「ぐふ」
リオ達がベルフィ達ウィンドの家に向かっていると(言うまでもなく案内役はリオだ)周辺を巡回している警備員に声をかけられた。
「お前達、どこに行くつもりだ?」
「ベルフィのところだよ」
「ウィンドか……ん?」
「何か?」
「お前ら、リサヴィか?」
「はい」
「やっぱり……ん?だが、棺桶、いや魔装士がいないな」
「ちょっと別行動しています」
「そうか。ところで冒険者カードを見せてもらえるか?」
「わかりました」
三人が警備員に冒険者カードを見せる。
「ありがとう。では俺がウィンドの家まで案内する」
「それは助かりますがいいのですか?」
「これも仕事のうちだ。最近、不審者が多くてな」
「不審者ですか?」
「ああ。元パーティだとか言って、図々しく家に侵入しようとする奴とかな」
その時の事を思い出したのだろう、警備員は顔を顰めた。
「そうですか」
サラは一瞬、カリスのニヤケ顔が頭に浮かんだが殴り飛ばして消した。
「着いたぞ」
警備員が家の呼び鈴を鳴らすが誰も出て来なかった。
「冒険にでも出かけたのでしょうか?」
「悪いな。そこまでは俺にはわからない」
「それもそうですね」
「鍵は持ってないのか?」
「はい。そこまで親しい関係ではありませんので」
「そうか」
「では出直してきます」
「悪いがそうしてくれ」
「そんなに会いたかったんですかっ?」
残念そうな顔をしているサラを見てアリスが尋ねる。
「と言うよりもリオの故郷の場所を教えて欲しかったのですが」
「そうなんですねっ」
リオは首を傾げる。
「僕はどうでもいいのになんでそんなに気にするのかな?」
「気にしてください。あなたのお父さんですよ。墓参りとかしたくないんですか?」
「別に」
「それは流石に薄情ではないですか」
「そうなんだ」
「いえ、そこは『そうなんだ』じゃなくてですね……」
「はっ!?」
アリスが当然大声を上げた。
「どうしました?」
アリスが疑うような目をサラに向ける。
「もしかしてっ、サラさんはリオさんのお父さんの墓の前でっ『息子さんのことは私が面倒見ますから安心してください』とか言って鬼嫁面するつもりなんですねっ!?」
「そうなんだ」
「そんなわけないでしょう!ってか、なんで鬼嫁なのよ!?」
「流石ですっサラさんっ!いつもわたしの数歩先を進むっ!そんなずる賢いサラさんに嫉妬しますっ!でも負けませんっ!」
「そうなんだ」
「違うって言ってるでしょうが!」
サラがリオ、アリスと続けて鉄拳をお見舞いする。
「痛いですっ」
サラはそこで視線を感じて振り返る。
そこにはまだ警備員がおり、引いた顔をしていた。
そして、「鉄拳制裁」と呟くのが聞こえた。
「さ、さあ早く行きますよ!」
顔を真っ赤にしたサラに引っ張られるようにしてその場を後にした。




