423話 リサヴィ派
彼らリサヴィ派を名乗った者達は以前、マルコでリオが決闘するのを目撃し、リオの強さに魅入られた。
リオのように強くなりたいと思った。
更にリサヴィがマルコで行った新米冒険者研修でリサヴィにくっついて行ったクズ冒険者達が全滅したことを知った。
クズ冒険者達は魔物に殺されたのだが、彼らはリサヴィが殺したと信じて疑っていなかった。
そして思ったのだ。
「そうだ、リオさんに近づくために俺達もクズを一掃しよう」
と。
クズ冒険者達に迷惑をかけられた者達は多い。
中にはクズスキル?“三途の川渡し”で家族や恋人を失った者達もいた。
彼らと同じような考えを持つ若者達が次々と集まり、やがてリサヴィ派と名乗るようになったのだった。
「な、何がリサヴィ派だ!」
「そ、そんなことして許されると思ってんのか!?」
「お、俺らはCランクだぞ!」
「そ、そうだ!俺らはCランクなんだぞ!」
この後に及んでまだランクだけで言うことを聞かせられると考えている彼らにリサヴィ派のリーダーはため息をつく。
「そうか。俺らはDランクだ」
「わかってんじゃねえか!なら俺らに逆らうんじゃねえ!」
「俺らのほうがランクが低いからお前らに従え、って言いたいのか?」
「そうだ!」
「なるほどな……だが、断る」
「な……」
リサヴィ派の一人が呆れ顔で言った。
「おいおい、俺らはリサヴィ派だと言っただろ。リサヴィが、リオさんがランク如きに屈したか?逆だろ、逆」
「そうそう。リオさんはいつもランク“だけ”が上の者達などに屈しない」
「いやいや、リオさんは何者にも屈しないぜ!」
「だな!」
クズパーティはリサヴィ派を自称するこのパーティの笑顔に狂気を見た。
彼らは決してちょっかいをかけてはいけない相手に手を出してしまったことを悟る。
クズパーティはランクは自分達の方が上でも実力は彼らの方が上であることを認めていた。
そうでなければコバンザメを行おうとは思わないのだ。
戦いになれば負けるとわかっていて尚、彼らは今まで通り上から目線で話すことをやめない。
「お、お前らは俺らの事をクズって言うがなっ、言い過ぎだぞ!ほんのちょっと上前はねてるだけだろ!」
「「「……」」」
コバンザメが成功すれば報酬の半分を奪うことになるだろう。
半分をほんのちょっとという彼の感覚はおかしいはずだが、彼の仲間にその言葉を訂正する者はいなかった。
何故なら彼の仲間全員頭がおかしかったからだ。
「おうっ、そのくらい大目に見ろよ!」
「だな!」
「……お前達の感覚のズレはやっぱり死なないと治らないな」
リサヴィ派のリーダーが剣を構えると残りのメンバーもそれぞれの武器を構えた。
「お、おい……」
「そろそろ死ね」
ここまで来ると流石に頭のおかしいクズパーティも戦闘が避けられないと悟り、卑屈な態度を取り始める。
「ちょ、ちょ待てよ!お、俺には家族がいるんだ!俺が帰ってくるのを待ってんだ!」
「おうっ、もうしねえ!しねえからよ!許してやってくれよ!な?いいだろう?」
その言葉を聞いてリサヴィ派のリーダーは笑って言った。
「リオさんだったらこう言うと思うぜーー『それがどうした』ってな」
「ああ、言う言う!リオさんなら言いそうだぜ!」
「だろ?」
「ちょ、ちょ待てよ!」
リオがどう発言するかでリサヴィ派が盛り上がっている中、それに加わっていないリサヴィ派の一人があの男に剣を向けた。
「俺さあ、あんたが一番許せないんだ」
「な、なんだと?」
「あんた、冒険者養成学校を主席で卒業したんだろ?それにさ、俺達後輩の憧れだった先輩を嫁にしたのにさ……不幸にしやがって」
「ちょ、ちょ待てよ!お前もマルコの養成学校出か!いや、それよりあいつとならこの後よりを戻すつもりなんだ!だからよ!わかんだろ!?」
「……は?」
冒険者養成学校の後輩が冷めた目を男に向ける。
「本当だ!信じてくれ!今度は絶対幸せにする!」
その言葉を聞いて冒険者養成学校の後輩は笑い出す。
「な、何がおかしい!?」
「いやあ、クズって感染するんだなあと思ってさ」
「なんだと!?」
「よりを戻す?手遅れだバーカ!先輩はもう再婚してるぜ!」
「ば、バカな!嘘つくんじゃねえ!」
「本当だぜ。相手はあんたもよく知ってるよ。なんせあんたがいた元パーティにいるんだからな」
「なんだと!?誰だ!?いや、どっちだ!?」
「知っても仕方ないだろ。あんたここで死ぬんだから」
「ちょ、ちょ待て……」
「よし、じゃあ、みんな十分笑ったからさっさと終わらせよう」
リーダーの合図で一方的な殺戮が始まった。
かつては男の方が後輩より圧倒的に強かった。
才能に加えて努力も怠らなかったからだ。
しかし、男がクズレベルを上げる努力をする一方で後輩は憧れのリオに近づくために剣の腕を磨き続けた。
その結果、今では力は完全に逆転していた。
「バイバイ、クズ先輩」
「ちょ、ちょま……ぐ、あああっー……」
男はあっさり死んだ。
クズパーティの他のメンバーも次々とリサヴィ派の刃にかかり命を落としていく。
そして残るはクズパーティのリーダーのみとなった。
「ちょ、ちょ待てよ!な?わかんだろ!?」
「さっぱりだ」
そう言ったリサヴィ派のリーダーの顔はしてやったりの顔をしていた。
今の言葉にリサヴィ派のメンバーが叫ぶ。
「あっ!そのセリフはリオさんの!」
「俺が言おうと思ってたのに!」
「ははははっ!残念だったな!次頑張れ!」
「くそ!」
クズパーティのリーダーは必死に命乞いをする。
「おいっ、話を聞いてくれよ!なあ!頼む!俺だけ見逃してくれ!!それくらいならいいだろう!?なっ?」
リサヴィ派のリーダーは笑いながら命乞いをするクズパーティのリーダーの命を断った。
こうしてリサヴィ派を名乗る者達によって一組のクズパーティがこの世を去った。




