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悪夢を振り払え〜あなたを魔王にはさせません!〜  作者: ねこおう
第4部 クズ達のレクイエム編(タイトル変更)
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421話 使徒達の反省会

 フェラン製魔装具を装備したメイデス神の使徒が彼らのアジトに帰ってくるなりため息をついた。

 その様子を見て他の使徒達はリオ暗殺作戦が失敗した事を悟る。


「失敗だったようだな」 

「ああ。失敗も失敗、大失敗だ。クズ集団はともかく、本命だったBランクパーティもリッキーキラーの野郎にあっさりやられちまったぞ」

「詳しく話してくれ」

「俺も遠くからこいつの目で見ていただけだから多少間違いはあるかもしれないがな」


 そう前置きしてリムーバルバインダーの目を指差していた魔装士が戦いの様子を話した。


「……なるほど。リッキーキラーもそうだが棺桶持ちも想定外だったな。強いとは思っていたがそこまでとは思わなかった」


 魔装士は使徒の一人の感想を聞いてその時の状況を思い出したらしく、怒りを露わにして叫ぶ。


「あのクズども!あれほどリッキーキラー一人だけ誘いだせと言ったのによ!その程度の事も出来ないのかよ!!ったく役立たずだな!しかも勝手に作戦変更までしやがって!村に残りやがった奴らが捕まってギルドに連行されちまった!」

「まあ落ち着けって」

「そのギルドに連行されたクズどもは放っておいて大丈夫か?」


 魔装士は自分でも興奮していると気づき、深呼吸してから質問に答えた。


「ああ、それは問題ない。クズどもは俺達の素性を知らない」

「なら放っておけばいい。さっきの話ではそいつらが作戦通りリッキーキラー抹殺に参加していても結果は変わらなかっただろうしな」

「そうだな」

「これでお前の言う事が事実だと証明されたな」


 皆の視線が一人の神官に集まる。

 それはベルダでクズ集団プライドを結成したBランクパーティ唯一の生き残りの神官だった。

 彼は皆の視線に気づいているはずだが沈黙を保ったままだった。

 彼が寡黙なのはいつものことなので話を振った使徒は無視されても気にしなかった。


「数は確かに力だが、元々の力の差が開き過ぎていたな。ドラゴンに百人の雑魚が向かって行っても勝てないのと同じだ」

「リッキーキラーがドラゴンかよ」

「たとえが気に入らなかったか。では人にアリが百匹で立ち向かうようなものだ。これでいいか」

「ふん」


 魔装士がクズを集めてきた吟遊詩人に目を向けた。


「しかし、お前、よくあれだけのクズを集めたな」


 そう、クズ達は吟遊詩人が声をかけて集めたのだった。

 カリスの時のようにさり気なく彼らに近づき、「リサヴィに恨みを持つ者達が集会を開くらしいですよ」と自分も噂を耳にしたかのように集合場所を教えて誘い出したのだった。


「それは違います」


 魔装士の言葉に吟遊詩人は心外だとばかりに反論する。


「何?クズじゃないってか?」

「そっちではありません」

「どういう事だ?」

「リサヴィに恨みを持つ者達を集めたら全員クズだっただけです。話を聞いてみると『パーティに誘ってやったのに断られた』とか『リサヴィのせいでクズスキルが使いにくくなった』とか『所属ギルドを解約された』とか。更には『稼ぎが悪くなって嫁が出て行った』などすべて逆恨みでした」


 その場がしん、となった。

 魔装士がこほん、と咳払いした後確認する。


「……それはつまりだ、リサヴィのもとへはクズばかりが集まって来る、ということか?」

「さあ。しかし、棺桶持ちがサラとアリエッタの事を“クズコレクター”と呼んでいるのを聞いた者がいましたね」

「「「……」」」


 正直に言って彼らメイデス神の使徒達が作ろうとしている世界にクズの居場所はない。

 そのため、キリの良いところでクズをまとめて処分するつもりだったから、


「リサヴィをもう少し泳がせてクズを減らしてもらった方が俺らの手間が省けるんじゃないか?」


 と思う者も少なからずいたが、口に出す者はいなかった。



 魔装士は話をカリスの事に変えた。


「そうだ!クズと言えばなんだあのほら吹きカリスの奇行は!?てか、なんで奴があそこにいたんだ!?今回の作戦には参加しないはずじゃなかったのか!?」


 吟遊詩人は魔装士に睨まれ?(仮面で顔は見えないが)困った顔をする。


「……どうやらクズ達の話を盗み聞きして後をつけて来たみたいですね。身体能力が向上して耳も常人よりよくなっていましたから離れたところにいても作戦内容を聞き取れたのでしょう。それはともかく、確かにあの奇行は想定外でしたね。せっかく“スクウェイト・ベータ”を寄生させて強化させても隙を見せてはね」

「ああ。棺桶持ちなんか接近戦に持ち込んで連続攻撃すれば殺せたはずだ!なのに攻撃するごとにバカなポーズをとって棺桶持ちに距離をとる時間を与えやがって!しかも途中でなんか余裕かまして会話までしてるようだったからお前のことを話したかもしれぞ」

「それは大丈夫です。私はカリスに名乗っていません。聞かれたときのために偽名を用意していたのですがね。それに私達に繋がるような事も話していません」

「ならいいがな」


 吟遊詩人はまだ数の少ない貴重な寄生生物スクウェイト・ベータの寄生相手にカリスを選んだ事を反省していた。


「以前に『頭はいらない』と言いましたがそれにも限度がありましたね」

「ああ。あれは酷すぎだ。せめてベータが“第二形態“になってればな。そうすりゃカリスの頭なんか不要だったんだ。実際、もう少しで第二形態になりそうだったんだが棺桶持ちの野郎がその前に倒してしまったからな」


 その言葉に別の使徒が疑問を投げかける。


「ベータは寄生行動をとらなかったのか?宿主の体が使い物にならなくなると本能で倒した相手に寄生するのではなかったのか?」

「行動は起こしたようだ。だが、棺桶持ちとの距離がありすぎて寄生する前に殺されたみたいだった」

「そうか」

「しかし、ちょっと意外でしたね」

「何がだ?」

「棺桶持ちがカリスをあっさり殺した事です。前回、命まではとらなかったのでまだかつての仲間への情が残っていて、今回も躊躇すると思っていたのですが」

「確かにな」


 彼らは大きな勘違いをしていた。

 前回、ヴィヴィがカリスに止めを刺さなかったのはカリスへの情からではない。

 カリスを殺してリオの反感を買うのを恐れたからだ。

 ヴィヴィはカリスがどうなろうと全く気にしていなかったのである。

 いや、カリスの愚行の結果、貴重な魔道具であるサイファのナンバーズを無くしたので情があるどころか、殺したいほど恨んでいた。



「次は冒険者クビになったポンコツじゃなくてよ、まともな奴に寄生させて試そうぜ」

「そうだな」


 魔装士の言葉に吟遊詩人は難しい顔をする。


「しかし、まともな者は勇者になれると言っても色からして怪しいあんなモノを普通は飲まないと思いますよ。しかも知らない相手から渡されたとなると尚更警戒するでしょう」

「そうだな。俺ならまず毒味しろと言うだろうな」


 使徒の一人が吟遊詩人に同意する。

 そこで魔装士が笑いながら吟遊詩人に言った。


「そこはお前の腕次第じゃないか」

「え?また私が相手探すのですか?」

「期待してるぞ!」

「……」


 吟遊詩人は不満げな表情をしたものの、使徒達を見回し、自分が一番適任だと察して渋々頷くのだった。



「しつこいようだがクズは避けてくれよ」

「ええ。探そうとしても難しいかもしれませんし」


 吟遊詩人の言葉に皆が首を傾げる。


「何?それはどういう意味だ?」

「知りませんか?」

「何のことだ?」


 吟遊詩人は他の者達がまだこの情報を知らないと察し、重要な単語を口にした。


「“リサヴィ派”がクズを抹殺しているのです」

「リサヴィ派、だと?」


 首を傾げる使徒達に吟遊詩人はリサヴィ派がなんなのか説明を始めた。



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