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悪夢を振り払え〜あなたを魔王にはさせません!〜  作者: ねこおう
第4部 クズ達のレクイエム編(タイトル変更)
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415話 村襲撃の顛末

 アリスが外を見ながら呟いた。


「リオさん達っ遅いですねっ」

「もう帰ってこねーぜ」


 クズ冒険者の一人がボソリと呟いたのをサラは聞き逃さなかった。


「それはどういう意味ですか?」

「そういえばっ、さっきもリオさんがいなくなるみたいなこと言ってましたねっ」

「い、意味なんかねえ!俺の直感だ!」

「おう!俺もそう直感したぜ!」

「だな!」


 と言って笑い出すクズ冒険者達だったが、長くは続かなかった。



「ぐふ。賑やかだな」

「そうなんだ」

「「「なっ!?」」」


 彼らはリオとヴィヴィの姿を見て慌てて辺りを見回すが、帰って来た冒険者が他にいないことにひどく動揺する。

 彼らの想定と完全に逆だったからだ。


「お、おい、他の奴らはどうした!?」

「お前らが殺したのか!?」

「ぐふ?」

「ば、馬鹿野郎!」


 口を滑らしたクズ冒険者がハッとして口を押さえる。


「ぐふ。何故、私達が殺したと思ったのだ?」

「いやっ、すまねえ!コイツちょっと妄想癖があってなっ」

「ぐふ。そうか。奴らとは別れて見回る事になった。いくら待っても待ち合わせ場所に帰って来ないからもう戻って来ていると思ったのだがな」


 ヴィヴィの適当な話を聞いてクズ冒険者達は何か想定外のことが起きて暗殺を中止したのだろうと自分達に都合の良いほうへ考えた。

 自分達の正体はバレていないと思い安堵する。


「そ、そうか。はははっ、悪かったな。変なこと言っちまってよっ!」

「ったく、いい加減な奴らだな!」

「……」


 サラが見回りの結果を尋ねる。


「リオ、ヴィヴィ、変わった事はありませんでしたか?」

「ん?」

「ぐふ。大した事はない。盗賊を見つけて退治しただけだ」

「な、何っ!?」


 その言葉に一番大きな反応を示したのは先ほど失言したクズ冒険者だった。

 

「お前いい加減にしろっ」


 失言したクズ冒険者が他のメンバーにボコられているのを尻目にヴィヴィがリムーバルバインダーから盗賊から回収した荷物を取り出して床に置いた。

 それを見て彼らは争いをやめる。


「ぐふ。村長を呼んできてくれるか?」

「わかりました」


 サラが村長のところへ行こうとするのをクズ冒険者達が慌てて前を塞いで止める。

 

「ちょ、ちょ待てよ!」

「……何か?」

「村長らに見せる前によ、俺らがチェックしてやる」

「おうっ。その荷物をこっちへ寄越せ!」

「どうしてあなた達がチェックするのですか?」

「いや、そのっ、分け前をケチるかも知れねえだろ?」

「ぐふ。お前らには関係ない事だ」

「なんだと棺桶持ち!」

「お前らで独り占めする気か!?」

「ぐふ。する気かも何もお前らは関係ないと言っているだろう」

「うるせい!ともかくこっち……ぐへっ!」


 荷物を奪おうとした向かって来たリーダーがヴィヴィのリムーバルバインダーに豪快にぶっと飛ばされて気絶した。

 

「なっ……」

「ぐふ。いい加減にしろ」

「て、てめ……」

「村長さん連れてきましたっー」


 いつの間にかいなくなっていたアリスが村長を連れて来た。

 この時にはいつものアリスに戻っており、目の色も普段通りであった。


「あっ、アリエッタ!てめっ!……ひっ!?」


 荷物を奪おうとしたクズ冒険者達の鼻先をリムーバルバインダーが通り過ぎ、彼らは驚いて尻餅をつき小さな悲鳴を上げる。

 村長が不思議そうな顔でその様子を見ながらも盗賊の荷物を確認する。


「……はい、間違いないです。取り戻して頂きありがとうございます!……おや?中に手紙のようなものが……」


 クズ冒険者の一人が慌てて立ち上がりその紙を奪い取ろうとやって来たが、またもリムーバルバインダーに吹っ飛ばされて気絶する。

 村長が困惑した表情を見せる。


「あ、あの……」

「気にしないでください。彼らは勝手に報酬とか言って荷物を奪おうとしているのです」

「……そうなんですか?」


 村長が残ったクズ冒険者に不審の目を向ける。

 

「ち、違うっ」

「では先ほどからのおかしな行動は何なのですか?」

「そ、それは……って見るな!」


 ヴィヴィはクズ冒険者の制止を無視して村長から手紙を受け取り読んだ。

 既に一度読んでいるが、まるで今初めて読んだかのように振る舞う。

 クズ冒険者達の演技より数段上であった。


「……ぐふ。これは村の襲撃計画書だな。ほう、面白い。参加者の名前までご丁寧に書かれているな」

「う……」


 クズ冒険者の顔が真っ青に変わる。

 サラがチラリとクズ冒険者を見ながら言った。


「念書ですね。裏切り者がでないように残したのでしょう」

「ぐふぐふ。……おや?お前達の名前も載っているな」


 ヴィヴィのとてもわざとらしい演技にサラはヴィヴィが既に読んでここにいるクズ冒険者達の名が載っていることを知っていたと悟る。

 村長をはじめ、村人達の怒りの表情がただ一人“起きている”クズ冒険者に向けられる。

 

「ちょ、ちょ待てよ!俺は関係ない!本当だ!信じてくれ!なっ?サラ!お前は信じてくれるだろっ!?」


 クズ冒険者は引き攣った笑みからキメ顔をしようとして失敗した。

 キメ顔が出来たとして結果は変わらないだろうが。

 サラは冷たく言い放つ。

 

「全く信じていません。いえ、来た時からあなた達が盗賊とグルだと疑っていました」

「なっ……」

「ぐふ。奴らはギルドにも協力者がいると言っていたな」

「本当ですか?名前は?」

「ぐふ。口が固かった」

「そうですか。では彼らから聞きましょう」

「ぐふ。唯一の生存者だからな」

「なっ……」


 クズ冒険者はあれだけの数の仲間がすべて殺されたと知り恐ろしくなった。

 止めはサラの冷めた目だ。

 クズ冒険者はこのままでは殺されると思い、気絶した仲間を見捨てて逃げ出した。

 しかし、背後からリムーバルバインダーでぶっ叩かれ転倒して気絶した。

 気を失う瞬間、リサヴィの二つ名が頭を過った。


 死神パーティ、という二つ名を。



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