413話 暗殺隊全滅
「もう大丈夫だろう」
リオを暗殺しようとしたBランクパーティはリーダーの声で足を止める。
一番体力のない魔術士が荒い息を吐きながら不安げな表情で尋ねる。
「リーダー、この後どうする?」
「安心しろ。ものは考えようだ。アイツの死は無駄にしねえ。リッキーキラーの奴に村を襲った盗賊と“間違われて”殺されたって事にすればいい」
しかし、魔術士と戦士の不安げな表情は晴れない。
「そう上手くいくか?」
「まあ、任せろ。ギルド職員にコネがあるからな」
「おお、あいつか」
「それなら……」
「そうなんだ」
「「「!!」」」
彼らが突然声がした方へ顔を向けるとそこにはリオが立っていた。
「リ、リッキーキラー!」
リーダーが叫びながらも剣を抜いて構える。
「ど、どうしてここがわかった!?」
「そんなことより、それ、どこのギルドの誰?」
リオの問いに答える者はおらず、代わりとばかりに魔術士が攻撃呪文を唱え始める。
リオの放った短剣が魔術士の喉を貫いた。
魔術士は詠唱を中断され、喉を押さえながらその場を転がり回る。
「ひっ!」
逃走を図ろうとした戦士が、頭上から落ちてきた何かにグシャっと押し潰される。
Bランクパーティを追跡していたヴィヴィのリムーバルバインダーだ。
たった一人残されたリーダーにリオが片手で短剣を弄びながら迫る。
(な、なんだこいつ!?剣だけじゃなく、弓も、短剣までも使いこなすだと!?しかも棺桶持ちが盾の遠距離操作をここまで出来るなんて聞いてねえ!そんなの全然聞いてねえぞ!!)
「ちょ、ちょ待てよっ!」
「ねえ、どこのギルド?」
『ぐふ。そのギルド職員の名はなんだ?』
リムーバルバインダーからヴィヴィも尋問する。
無意識に後退していたリーダーの背中に行き止まりとばかりに木が立ち塞がる。
「わ、わかった!話す!話すから見逃してくれ!俺一人くらいいいだろう!?」
『ぐふ。ダメだ』
「そ、そんなこと言っていいのか!?」
リーダーはなんとかこの場を逃れようと必死に策を巡らす。
しかし、
「ヴィヴィ、時間もったいないから終わらせよう」
『ぐふ。そうだな』
「へっ?ま、待て!いいのか!?本当にいいのか!?リッキーキラー!お前を殺したがってる奴は俺達だけじゃないんだぞ!」
「……」
『ぐふ。興味深いな』
リッキーキラーが自分の事と思っていないからかリオの反応はなかったが、魔装士には手応えを感じたリーダーはすかさず交渉に出る。
「興味あるだろっ?俺の知ってることはすべて教えるっ。だからよっ頼む見逃してくれっ!」
「……」
『……』
沈黙を考慮しているためだと思ったリーダーは更に欲が出た。
「そうだ!俺をお前らのパーティに入れてくれ。俺のパーティはみんなお前らが殺しちまったからな。いいだろ?なっ?決まりだな!それでリーダーだがよ、経験豊富でランクも上な俺が……」
リオが剣を一閃する。
リーダーの首がころん、と地に落ち、遅れて体が倒れる。
「これで“みんな”だ」
『ぐふ。地獄で再結成できるな』
リオがボソリと呟き、ヴィヴィが付け加える。
『ぐふ。よかったのか?』
「まだいるなら向こうから来るでしょ」
『ぐふ。そうだな』
そこでリオは思い出したかのように尋ねる。
「そういえばそっちは終わったの?」
『ぐふ。ちょっと手間取ったがな。今、そちらに向かっているところだ』
「わかった」
『ぐふ』
リオはカリスがどうなったか聞かなかった。
ヴィヴィも言わなかった。
リオとヴィヴィはBランクパーティの冒険者カードを含む荷物を回収し、更にクズ冒険者達に待ち伏せにあった場所に戻って彼らの荷物を回収した。
クズ冒険者達の荷物を調べると村から奪ったと思われる品物がいくつも見つかった。
そして今回の作戦に関して裏切り者が出ないようにと参加者全員の名を記した念書も見つかった。
この念書にはカリス及びBランクパーティの名はなかった。
「ぐふ。村に残っているクズが盗賊とグルだった証拠が見つかったな」
「じゃ、帰ろうか」
「ぐふ」
ヴィヴィが彼らの荷物をリムーバルバインダーに収納し、二人は村への帰路についた。




