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悪夢を振り払え〜あなたを魔王にはさせません!〜  作者: ねこおう
第4部 クズ達のレクイエム編(タイトル変更)
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407話 カリス、リサヴィを全滅させる?

 カリスは吟遊詩人からリサヴィがリッキー退治の依頼を受けたと聞くと、吟遊詩人が止めるのも聞かずに飛び出して行った。

 その村に着くとすぐさま酒場に向かう。


「さらぁ!ゆうしゃになったおれがむかえにきたぞぉ!」


 店内を大の大人のみっともないショタマネ声が響く。

 どこのバカだと皆の視線を浴びるカリスだが、そんな事はお構いなしに店内を見渡し、コソコソしている冒険者達を見つける。

 中年戦士、戦士風の大男、そして魔装士。


「またお前らかあ!!」


 そう、そこにいたのはリサヴィの名を騙りただ飯喰いをして旅する偽リサヴィ一行であった。



「ちょ、ちょ待てよ!」


 自称リッキーキラーが必死に言い訳をする中で酔っ払って状況が理解できていない偽鉄拳制裁サラが立ち上がって叫ぶ。


「我が鉄拳制裁サ……」

「うるせー!!」


 偽鉄拳制裁サラの腹をカリスの鉄拳が撃ち抜く。

 「ぐへっ!?」と血を吐きながら吹っ飛んでいく偽鉄拳制裁サラ。

 今の一撃で確実に内臓破裂を起こしただろう。


「ま、待ってくれ!も、もう二度としねえからよお!」

「……ああ、二度とさせねえよ!」


 カリスの右腕がうなり、偽リッキーキラーの頭を吹き飛ばした。

 頭を失った体がゆっくりと倒れる。

 その様子を見て遅まきながらに店内の客が悲鳴を上げて逃げ出す。


「あと一匹はどこだ!?」


 偽ヴィヴィことヴィクトリーはリムーバルバインダーの中に隠れてブルブルと震えていた。

 その揺れがカリスに居場所を伝える。


「……なんだ。もう死ぬ準備できてんじゃねーか」


 カリスは顔を歪め、狂気を帯びた笑みを浮かべると背中の大剣を抜く。

 ヴィクトリーの魔装具は戦場漁りで手に入れたものでろくに手入れをしておらず、その知識もなかった。

 しかもヴィクトリーはヴィヴィのような強力な魔術士でもなかったため、リムーバルバインダーは本来の十分の一の力も発揮出来ず、カリスの大剣は易々とリムーバルバインダーの装甲を貫いた。

 中から悲鳴が上がるが、カリスは気にも止めず笑いながら滅多刺しにする。

 悲鳴はすぐ聞こえなくなった。

 カリスはリムーバルバインダーから大剣を引き抜き、血で染まった大剣の刃を見て笑みを浮かべる。

 そして、ピクピク痙攣していた偽鉄拳制裁サラに目を向けるとそばに寄り、大剣で止めを刺した。


「これでもう偽物やりたくてもできねーだろ!」


 カリスは「ガハハ!」と大笑いしながら酒場から去っていった。


「やめるやめる」と言いながらも偽リサヴィを続けたパーティはこうして全滅したのだった。



 リサヴィは翌日にその村にやって来た。

 吟遊詩人の情報通りであった。

 ただ、カリスの来るのが早すぎ、そこに運悪く偽リサヴィと居合わせてしまったのだった。

 村長にその惨劇を聞き、偽リサヴィの墓の前にやって来た。


「彼らが偽物だとはわかっていたんですけど、リッキー退治をしてくれるのならまぁいいかな、と思ってたんですけどね」


 村長から遺品の冒険者カードを受け取り、今更であるが彼らの本名とパーティを知った。


「それで彼らを殺した自称勇者はショタ真似をする大剣使いの大男だったのですね?」

「はい」

「ぐふ。間違いなくバカリスだな」

「あの怪我治ったんですねっ」

「ぐふ。運良く、いや、私達にしては運悪くだが、優れた神官に出会ってしまったのだろうな」

「しかし、あのバカリスがここまでやるとは……」

「ぐふ?何を言っているのだ。会う度におかしくなっていただろう。この程度のことをやったところで私は疑問に思わん」

「そうですね」


 サラは犠牲者が自分達の名を騙って悪さしていたこともあり、それほど罪悪感は覚えなかったが、それでもカリスを放置したことに負い目を感じていた。


「……ともかくギルドに報告しておきましょう。今のバカリスは何をするかわかりません」

「ですねっ」



「じゃ、依頼をこなそう」


 リオにとってカリスはかつて一緒に行動を共にしていたウィンドのメンバーであり、この中で一番付き合いが長いはずであるが、全く興味ないようであった。

 まあ、以前会った時には名前すら忘れていたのでその態度は当然とも言えたが。


「ぐふ。そうだな」

「ですねっ」

「はい」


 カリスがこの村にやって来たのは偶然かもしれないが、協力者がおり、リサヴィの行動を知って先回りした可能性をサラは疑っていた。

 結局、リサヴィはその村に二日間滞在したが、カリスが再び現れることはなかった。



 吟遊詩人がカリスのために借りた部屋にやって来るとカリスは酒を飲んでくつろいでいた。


「カリス、あなた、冒険者ギルドに賞金首として指名手配されたみたいですよ」

「何?何でだ?」


 カリスは全く思い当たることがないと首を傾げる。

 それを見て吟遊詩人がため息をつく。


「村で冒険者達を殺したでしょ?それも大勢の目の前で」

「……ああ。あのクズ達のことか。それは仕方がない。奴らはリサヴィを騙って俺に無駄足を踏ませたんだからな。それも今回が初めてじゃない。二度もだ。天罰が下って当然だ」

「天罰、ですか。しかし、あなたはもう冒険者ではないですし、誰もあなたを擁護してくれないと思いますよ。ですからこれからはもう少し慎重に……」

「大丈夫だ。心配すんなって。サラをリッキーキラー達から救出したらよ、サラが俺の無実を証明するさ」


 吟遊詩人は「いやいやいや!無実ってなんだ!?お前がやったんだろうが!しかも、お前の仕業だってギルドに報告したのはリサヴィなんだぞ!」と叫びたかったが我慢した。

 また勝手に動かれては困るからだ。


「大体だな、あの村にリサヴィがいるって言ったのはお前だぞ」

「行き違いになったみたいですね」

「何だと!?」

「あなたが早く着きすぎたのですよ。私が止めるのも聞かずに出ていくからです」


 吟遊詩人の嫌味に対してカリスは自分は悪くないのだと偽リサヴィに責任転嫁する。


「くそっ!あの偽者達がいなければ勘違いしなかったんだ!俺は悪くない!あの偽者どもが全部悪いぜ!って、こうしちゃいられねえ!サラが俺を待ってるからな!さらあ!!おまえのゆうしゃがたすけにいくぞお!!」


 吟遊詩人はショタマネして出て行こうとしたカリスの背中に声をかける。


「今から向かってももう間に合いませんよ」


「何だと!?今どこにいんだ!?」

「確認中です」


 吟遊詩人はリサヴィの居処を知っていたが知らないふりをした。

 カリスは「ちっ!」と舌打ちして戻って来た。

 しかし、すぐ機嫌がよくなり復活した右腕を自慢げに振り上げた。


「それにしてもすげえぜ!あの薬はよ。パワー半端ねえぜ。素手で殴って頭が吹っ飛んでいったんだぜ!」

「それはよかったです」

「まあ、力あり過ぎるせいでよ、村まで全力疾走しちまってサラより早く着いちまったんだけどな!ガハハハ!」

「だから言ったでしょう。まずはその力をコントロール出来るように……」


 吟遊詩人が注意するもののカリスは全く聞いておらず自慢を続ける。


「それからよっ!自分の意思とは関係なく体が動きやがったぜ!」

「……!!」

「ホントすげえな!勇者の力ってよ!」


 自分の意思とは関係なしに体が動くなど不自然であり、普通なら疑問や不安に思うところであるが、元々の頭の出来が悪いせいか、それともあの薬による影響によるものなのか、どちらにせよカリスはその事に全くひとつも疑問に思わなかった。


「……それはよかったです」


 吟遊詩人はカリスの言葉に相槌を打ちながらも心の中では別の事を考えていた。


(思った以上に扱いづらいバカだな。もう少しあの薬の効果をこの目で観察したかったが、ギルドの賞金首になった以上、一緒にいると私達の足を引っ張る可能性もあるし、出来る限り早くリサヴィにぶつけて処分するか)



 吟遊詩人は今計画中のリオ暗殺計画にカリスを参加させる事を決めるのだった。


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