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悪夢を振り払え〜あなたを魔王にはさせません!〜  作者: ねこおう
第4部 クズ達のレクイエム編(タイトル変更)
404/867

404話 鬼嫁、襲来!

 ウーミの商隊はフットベルダに到着した。

 リサヴィの護衛依頼は完了し、ウーミと別れた。


 リサヴィがフットベルダの冒険者ギルドに入ると、その姿を見て声を上げる者達がいた。


「げっ!!リサヴィ!?」


 その声で皆がリサヴィの姿を認め、何組かのパーティが顔色を真っ青にしてギルドから逃げ出していった。

 言うまでもなくクズパーティだ。


「失礼ですね」

「ですねっ」


 ギルドに残った者達のほとんどは真っ当な冒険者達で彼らはリサヴィに尊敬と羨望の眼差しを向ける。

 そんな中、ギルドにしぶとく残っていたあるクズパーティが勇気を振り絞ってリサヴィの前にやってきた。


「お、お前ら俺達をここまで追って来たのかよ!?」

「はあ?」


 彼らは自意識過剰、いや、被害妄想が甚だしかった。


「どんだけ執念深いんだ!俺達はお前らに何もしてないだろうが!」

「確かに昔の俺達はちょっとズルかったかもしれねえ!」

「だがな、今は心を入れ替えて真っ当に生きてんだぞ!」

「だな!だから俺達の事は放っておいてくれ!」


 クズ冒険者達はいわれのない事で文句を言い続ける。

 ヴィヴィが呆れた顔(と言っても仮面で見えないが)で言った。


「ぐふ。私達からお前達クズに近づいたことなど一度もない」

「誰がクズだ誰が!!」

「そうですね。今のようにあなた達の方から寄って来るのです」

「じゃ、じゃあ俺達に手を出さないってことだな?」

「全く興味ありません」

「絶対だぞ!?」

「ぐふ。うるさいな奴らだ。さっさとどっか行け。それともこれはフリか?実はボコられたいという」

「そんなわけあるか!!」

「よし!約束したからな!忘れんなよ!」


 クズ冒険者達は元気を取り戻すと早速ギルド内にいる冒険者達を物色し始めた。

 そして、依頼を受けたと思われるパーティがギルドを出て行くのを見つける。


「俺達も稼ぎに行くぞ!」

「「おうっ!」」


 彼らは今出て行ったパーティの後を追いかけるように出て行った。

 それを見ていたアリスが首を傾げる。


「……あれっ、コバンザメかっごっつあんですっ狙いじゃないですかっ?『真っ当になった』って言ってた気がしましたけどっ?」

「ぐふ。私達とクズでは“真っ当”の意味が違うのではないか?」

「そうなんだ」


 今まで沈黙していたリオがボソリと呟いた。



 クズ冒険者達と入れ替わるように主婦の格好をした目つきの鋭い女性が入ってきた。


「リサヴィってのはいるかいっ!」」


 死神パーティと恐れられるリサヴィに喧嘩を売りに来たように見えるその女性に冒険者達の視線が集まる。


「隠れても無駄だよ!あんたらが来てることはわかってんだ!さっさと出てきな!」


 冒険者達の中から「また来やがった」と囁く声が聞こえたので彼女がギルドに来たのは今回が初めてではないようだった。

 

「リサヴィは私達ですが」


 リサヴィを代表してサラがそう言うとその女性はサラを見て更に目つきが鋭くなる。

 今の顔と比べるとさっきまでは笑っていたのではないかと思えるほどだった。


「なんでフットベルダに帰って来てすぐあたいの旦那んとこに顔を出さないんだいっ!?」


 その女性が何を言ってるのかさっぱり理解できないサラをはじめリサヴィの面々。


「はい?一体何のことですか?」

「何だいその生意気な態度は!?」

「あの……」

「あたいの夫達のパーティはね!あんたらをベルダに行かせるために迫り来る魔物達の盾になって商隊を守ったんだよ!」

「「「……は?」」」

「あんたらはあたいの夫やその仲間達が怪我した責任を取る必要があるんだよ!そんな簡単な事もわからないのかいあんたらは!!」

「「「「……」」」」


 どうやら彼女はフットベルダから後を追ってきたクズ冒険者達の事を言っているのだとサラ達は気づいた。

 彼らは勝手に大声で騒ぎまくって魔物を引き寄せた挙句に戦闘となり怪我を負ったに過ぎない。

 彼らの行動と商隊とは全く関係なく、彼らの自業自得だ。

 だが、そのときの冒険者はこの鬼嫁が怖くて怪我した本当の事が言えなかったようだ。

 いや、もしかしたらクズ冒険者の特殊能力、妄想を現実のものとして話す能力が発動して本当にそう思って語ったのかも知れない。

 まあ、それがどちらだとしても、彼らのクズ行為が美談に昇華されていたのである!

 この鬼嫁は自分の夫の話をまったく疑っていないようであった。

 リサヴィが彼らの妄想話に乗ってやる義理は無いので、鬼嫁に真実を語ったのだが信じてもらえなかった。


「ざけんじゃよ!あんたらは護衛の報酬惜しさに適当な事言ってんだろうが!」


 サラはため息をつきながら言った。


「どうしてもと言うのでしたら私達ではなく、商隊の方に話してはいかがですか?」

「何言ってんだい!商隊を守るのはあんたら護衛の仕事だろう!あんたらがだらしないから夫達は怪我したんだよ!責任はあんたらにあるだろうが!この報酬泥棒が!!」


 今の言葉には流石にムッと来たサラであるが、相手は住民なのでいつものクズ冒険者達のようにぶっ飛ばす訳にも行かずどうしたものかと悩んでいると空気が読めない事には定評のあるリオが珍しくサラの心を読んだかのように呟いた。


「ぶっ飛ばそう」

「ダメに決まってるでしょう!」

「ダメですっリオさんっ」

「ぐふ。ここではダメだ」

「そうなんだ」

「ヴィヴィ!ここじゃなくてもダメです!」

「そうなんだ」



 ギルド職員が騒ぎに気づき、騒ぎまくる鬼嫁とリサヴィを応接室に連れていく。

 そしてギルド職員からも正しい経緯を鬼嫁に説明したが、やはり鬼嫁は納得しない。

 

「あんたらあたいの夫がそんなクズだと思ってんのかい!?」

「ぐふ。思っている、のではなく、事実だ」

「そうかい!!そんなにあたいの夫をバカにするのなら勝負しな!」

「は?勝負、ですか?」

「あんたらとあたいの夫のパーティが同じ魔物討伐の依頼を受け、たくさん倒した方が正しいってことにしようじゃないか!」


 何のその脳筋の決着方法は、とサラ達が呆れている隙をつき、リオが「いいよ」と返事したため、クズ冒険者達との魔物討伐勝負が行われる事になった。



 んで、対決の日の朝。

 約束の場所に向かうとクズパーティは既に来ていた。

 ただ、来ていたのは彼らだけではなかった。

 ギルドにやって来たあの鬼嫁と他のパーティメンバーの鬼嫁(あるいは恋人)そして姑らしき者達まで勢揃いしていた。

 鬼嫁達はそろって棍棒を手にし、「腕が鳴るわね」などと話し、やる気満々であったが勝負相手であるはずのクズ冒険者達は困惑した表情をしていた。


(あれ?勝負相手どっち?)


 首を傾げるリサヴィであった。(リオを除く)



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