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悪夢を振り払え〜あなたを魔王にはさせません!〜  作者: ねこおう
第4部 クズ達のレクイエム編(タイトル変更)
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399話 イケメンズの野望

 ヴィヴィは笑い?を収めて首を傾げる。

 

「ぐふ?笑っていいと言ったではないか」

「ざけんな!てめえに言ったんじゃねえ!」

「おう!」

「大体お前なんかと話してねえんだから黙ってろ!」

「ぐふぐふ」


 どこかバカにしたような声を発してヴィヴィは沈黙する。

 彼らはヴィヴィを睨みつけた後、サラとアリスを見た。

 もちろん、カッコイイポーズをしてだ。


「あなた達が勇者になりたいのはわかりました。頑張ってください。それでは」

「おいおい待てって」

「まだ話は終わってないぜ」

「サラ、アリエッタ。勇者に必要なものが何かわかるか?」


 サラ達が答える前に質問した本人が答えた。


「それは顔だ」

「は?」

「はっ?」


 サラとアリスが「なに言ってんのこいつ」というような表情をするが、それに気付かず言葉を続ける。


「力なんて勇者になれば自然と手に入る。だが、生まれつきの容姿は勇者になったからって変えることはできないだろ?」


 どうやら彼はなんの努力もしなくても勇者になれ、すごい力を手に入れられると思っているようだった。

 他のイケメンズのメンバーも同意見だったようで「その通りだ」とでもいうように頷いた。

 そしてなおも続く。


「俺らのような見た目が完璧な奴こそが勇者になるべきだと思わないか?」

「思うよな?」

「思わないと嘘だぜ!」


 彼らが冗談ではなく本気で言ってる事はわかったが共感する事は出来なかった。

 サラは疲れた表情をしながら尋ねる。


「あなた達は何故勇者になりたいのですか?ランクを隠しても見ただけで相当弱いことがわかります」


 イケメンの一人が遠い目をしながら言った。

 もちろん演技だ。


「実はな、俺らはヨシラワン出身なんだ」

「「……」」

「そこでよ、俺らと同じ出のサキュバスの活躍を知って思ったんだ。こんな俺らだって冒険者になれるはずだ、そしてこの美しさがあれば勇者にだってなれるはずだってな!」

「「だな!」」


 今の言葉から彼らはヨシラワンで男娼をしていたらしいとサラ達は察した。

 もし、サキュバス、もとい、リトルフラワーがこの場にいたら彼らの言葉に激怒したことであろう。 

 リトルフラワーは“どちらも“実力は本物であったが、イケメンズは男娼としてのテクニックはともかく、冒険者としての実力はサラの指摘した通りまったくない。

 彼らの冒険者ランクはDでありながらギルド入会試験をどうにか合格する程度の力しか持っていなかった。

 つまりDランクとはいっても、実質Fランク並みの力しかないのであった。

 彼らがどうやってDランクにまで上がったかは後述する。



 そんな彼らの妄想はまだ続く。


「俺らは必ず勇者になってみせる」

「だがよ、それまでに俺達のこの美しい顔に傷が残ったりしたら大変だろう?」

「世界の損失だぜ!でなきゃ嘘だぜ!」

「その点、お前達のような優れた神官がそばにいれば安心して勇者になるのを待ってられるって訳だ!」

「な?お前達が俺達を必要とするように俺達もお前達が必要だったってわけだ」

「俺達はウィンウィンの関係だったってわけだ」

「これだけいえばわかるだろ?わからなきゃ嘘だぜ!」


 彼らは完璧な説明をしたと満足げな顔をしていたが、サラとアリスは全くわからなかった。

 サラとアリスが彼らの口撃で受けた精神的ダメージの回復を図っていると観客?のヴィヴィが再び口を開いた。


「ぐふ、お前達は冒険者を舐めすぎだ」

「なんだと!?」

「ぐふ。そんなに傷を残したくないなら家の中に閉じこもって勇者に選ばれるのを死ぬまで待ってろ」


 イケメンズはカッとしたものの、すぐに見下した笑みを浮かべて言った。


「それじゃあ世界中の女達が悲しむだろう。お前と違ってな!」

「嫉妬かよ?」

「男の嫉妬はみっともないぞ!」


 彼らはヴィヴィを男だと思っているようだった。


「顔だけでなく性格もそんなんだからモテねえんだぞ」

「「だな!」」

「ぐふ」


 ヴィヴィは彼らに自分が女性である事を告げず、戯言を聞き流した。

 精神的ダメージから立ち直ったサラが彼らの意見に反論する。


「少なくともその悲しむ女性とやらの中に私達は入っていません」

「ですねっ」

「なんでそう強がるんだ?素直になれよ、な?」


 彼らは自分達の容姿への絶対的な自信からサラの言葉を信じず強がりと受け取った。


「わたしっ、サラさんが人を殴りたがる理由がわかった気がしますっ」

「今の発言については後でじっくり話し合うとして彼らを殴りたいという意見には同意するわ」


 アリスは失言した事に気づき、それを有耶無耶にするため彼らの考えに異議を唱える。


「確かにっ勇者になれば力を得られると思いますけどっ、それでも限度があると思いますっ」

「そうですね。仮に、本当に仮にですが、私があなた達の名を神に告げても勇者にするとは全く思えません」

「おいおい酷いな。そんなことはないぞ」

「ああ。神様だって俺らの顔を見りゃ勇者にするって」

「だな!俺達が保証するぜ!」


 彼らの根拠のない保証でサラ達は納得した、

 などということは当然ない。

 すぐさまアリスが言い返す。


「絶対ないですっ。あなた達にならわたしでも勝てそうですしっ。そんな弱い人を絶対勇者にしませんっ」


 サラはアリスから好戦的な発言が出たことに少し驚きながらも同意する。


「そうですね。私が軽く殴っただけで死んでしまいそうですしね」


 鉄拳制裁サラに言われるならともかく、アリスの言葉に彼らはカチンと来た。


「おいおいアリエッタ。流石にそれは言い過ぎだろ」

「だな」

「事実ですっ」

「そうか。そこまで言うなら相手してやるぜ」


 イケメンの一人がそう言うと格好をつけながら一歩前に出た。

 そして腰に吊るしたショートソードの柄に手をかけてアリスを威嚇する。

 しかし、効果は全くなかった。

 そのイケメンはアリスが腰のメイスに手をかけるのを見て、アリスが本気である事を察すると隣のイケメンに視線を送る。

 それで通じたらしく、隣にいたイケメンも一歩前に出た。

 それでもアリスが平然とした表情をしているので最後の一人も一歩前に出た。

 どうやら彼らはアリス一人に三人がかりで戦う気のようであった。

 そこでアリスの表情が変わった。

 怯えた表情、ではなく呆れた表情に。


「ぐふ。なんだこの卑怯者どもは。よくそれで勇者になるなどとほざいたものだ」


 ヴィヴィが吐き捨てた言葉に彼らはピクピク頬を振るわせながらも聞こえないふりをする。

 彼らの愚行はそれだけでは収まらない。


「そうそう、戦う前に約束してもらうぜ」

「はいっ?」

「顔は狙うなよ」

「……」

「当然だろ」

「だな!でなけりゃ嘘だぜ!」

「あとな、万が一、そう、万が一だが俺らが怪我したらちゃんと治せよ」

「傷ひとつ残すなよな!」

「そんでもって怪我の責任をとって俺らのパーティーに入れよ。でなきゃ嘘だぜ!」


 アリスは彼らのバカな条件を聞いて戦う気が失せた。

 これがイケメンズの作戦なら大したものであるが、そんなものはない。

 アリスがゲンナリした顔をサラに向ける。


「サラさんっ、わたしっ、この人達の相手するのもう限界ですっ」

「アリス、あなたはよくがんばったわ。私はもうとっくに限界に来てるから」

「えへへっ」


 サラに褒められてアリスは満更でもない顔をする。

 一方、イケメンズはアリスが戦意を喪失したのを見て攻勢に出る。


「おいおい、まさか自分から言っておいて戦いを放棄する気か?」

「なら俺達の勝ちだな!」

「でなきゃ嘘だぜ!」

「「……」」

「よしっ、サラ、アリエッタ、俺らのパーティに入……」

「「寝言は寝て言え」」


 サラとアリスの声は見事にハモった。

 イケメンズは今までの自分勝手な言動を棚の上に放り投げて怒り出した。


「ざけんな!」

「俺らはな、プライドの高いお前らのためにここまで妥協してやってんだぞ!」


 彼らが何を妥協したのかさっぱり分からずサラとアリスが首を傾げると更に怒り出した。


「ここまで言ってもわかんねえのかよ!」

「お前ら思ってたよりダメダメだな!」

「これだけ言ってもわからないなんて嘘だぜ!」


 アリスが肩を震わせながらも腰のメイスに手を伸ばして言った。


「……ああっ、サラさんっ、わたしっもうダメですっ」

「我慢よ。今のあなたなら彼らを殺しかねないわ」


 サラはそう言ってアリスを宥めながらちらちらとヴィヴィを見る。

 ヴィヴィはその意図を悟った。


「ぐふ。人にクズを押し付けようとするな」


 サラがちっ、と舌打ちした。

 結局、アリスとイケメンズの戦いは有耶無耶になった。

 まあ、実際問題、街中でそんな事をしたら問題になったであろうが。


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