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悪夢を振り払え〜あなたを魔王にはさせません!〜  作者: ねこおう
第4部 クズ達のレクイエム編(タイトル変更)
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396話 ユーフィの苦悩

 アリスは部屋に戻るなり、ずっと気になっていた事を口にする。

 

「あのっ、先程のユーフィ様のお話に出てきたリオンさんって人ですけどっ、カレンの魔術士の方が探していた人の事ですかねっ?」

「ぐふ。リオもその名をどこかで聞いた事があると言っていたな」


 三人の視線を受けてリオは首を傾げる。

 

「どうだろう?」


 リオから予想通りの答えが返ってきて三人はため息をついた。



 アリスがユーフィを話題にする。


「ユーフィ様って思ってた人と違いましたっ」


 アリスは六英雄の物語が大好きだっただけに本人の性格があまりにも物語の登場人物とは掛け離れ過ぎていてショックを受けたようだった。


「もっといろんなことを聞けると思ったんですけどっ」

「ぐふ。確かに六英雄と言われている割には度量の狭いババアだったな」

「ヴィヴィ!ユーフィ様がどこかで聞いているかもしれませんよ」

「ぐふ」

「リオさんもっラグナのこと聞きたかったですよねっ?」

「そうだね」

「ユーフィ様との会談の時に私も一応聞いてみますがあまり当てにはしないでください」

「わかった」



 その日の夜。

 サラはユーフィと二人で話をする時間を得た。

 サラは自分が見た未来予知のことをユーフィに話した。

 話し終えるとサラは少し肩の荷が下りた気がしてホッとした。

 そしてユーフィの言葉、アドバイスを待っていたのだが、


「わしのアドバイスを期待しているのであれば無駄じゃぞ。わしはアドバイスはしない」


 的確なアドバイスを貰えると思っていただけにショックは大きかった。


「そ、そんなどうして……」

「理由は二つある」

「二つ……それは一体なんですか?」

「一つ、わしはお前の見た未来を知らぬ」

「え!?ユーフィ様が知らない?でもいくつもの未来を見ていると……」

「その通りじゃ。じゃが、その中に今と繋がる未来を見たことがないのじゃ」

「そ、そんな……」

「その最たるのがサラとアリス、お前達二人が同時にここにやって来たことじゃ」

「!!」

「ここへ来るのは必ずどちらか一人じゃった。じゃからわしはこの先どうなるのか予測出来ぬのじゃ」

「で、でも……」


 ユーフィはサラの言葉に割り込んで話を始める。


「そして二つめ。こちらが最大の理由じゃが、正しい道を示してやれる自信がないのじゃ」

「!?」

「わしは未来を知り、正しいと思っての行動の多くは確かに良い結果を残した。じゃが、全て良い結果になったわけではないのじゃ」


 そう言ったユーフィの表情に今まで見てきた意地悪い笑みはなく、苦悶、後悔が現れていた。



「一つ、昔話をしてやろう」

「昔話、ですか?」


 ユーフィは静かに頷いた。


「かつてわしは大災害が起き街が滅びる夢を見た。わしはそれが未来の出来事だと察し、その対策を練り実行に移したのじゃ。その甲斐あってその街の壊滅は免れた。じゃが、」

「……」

「それにより小さな村が滅んだ」

「!?」

「わしが何もしなければ滅ばなかった村じゃ」


 そう言ったユーフィには英雄と呼ばれる者の面影は全くなく、ただの老婆に見えた。


「単純に救われた人の数だけ見ればわしの行動は正しいのじゃろう。じゃが、その滅んだ村の者からすればわしは死神じゃろうな。あの世でわしをさぞ恨んでいることじゃろう」

「ユーフィ様……」

「わかったじゃろう。わしは未来を知り、自信を持って行動した結果、一つの村を滅ぼしたのじゃ。わしは死ぬまで悔い続けるじゃろう」

「……」

「わしはなサラ、皆が思っておるほど強くないのじゃ。じゃからわしは安易なアドバイスは出来ぬし、これからお前達に起こるかもしれぬ出来事についても話さぬ」

「……わかりました」

「じゃが、それでも望むのならひとつだけアドバイスをしてやろう」

「え?」

「聞きたいか?」

「……お願いします」


 サラは少し悩んだ末にアドバイスをもらう事にした。


「うむ。わしからのアドバイスは、夢で見た未来を信用し過ぎるな、じゃ」

「それは……」

「未来は定まっておらぬ。見た未来にこだわり過ぎるとろくな事にならぬ。今後、見てもただの夢だと思う事じゃ」

「……正直自信がありませんがユーフィ様のお言葉を心に記憶しておきます」

「うむ」



「ところで未来の事以外でお聞きしたいことがあるのですが?」

「なんじゃ?」

「リオはラグナを覚えたがっているのですが、方法をご存知でしょうか?」

「うむ、アリスがそのようなことを言っておったのう」

「あ、はい。その、ご存知でしたら教えて欲しいのですが?」


 ユーフィの答えはあっさりしたものだった。

 

「知らぬ」

「そうですか……」

「それに必要ないのう」

「えっ?それはどういう事ですか?」

「いずれわかる」


 ユーフィは意味ありげな意地の悪い笑みを浮かべながら言った。

 こうしてサラはユーフィとの会談を終えた。

 


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