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悪夢を振り払え〜あなたを魔王にはさせません!〜  作者: ねこおう
第4部 クズ達のレクイエム編(タイトル変更)
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384話 商隊と救援隊

 ベルダ鉱山へ救援に向かった騎士団と冒険者達の混成隊は魔物討伐を終えてベルダへの帰路にあった。

 救援隊の数は出発時の七割ほどに減っていた。

 うち二割が戦死で、残り一割は重傷で動かせる状態ではない者達とその付き添いでベルダ鉱山に残っていた。

 戦死した者のほとんどはハンドレッドアイズとハンドレッドアイズが率いる魔物によって倒されていた。

 ハンドレッドアイズの麻痺、石化などで状態異常させられたところへ魅了された魔物が死を恐れず襲いかかる。

 魅了された者達との同士討ちもあった。

 救援隊はハンドレッドアイズとの初戦で対応の悪さから戦力のおよそ一割を失った。

 ハンドレッドアイズはAランクに相応しい力を発揮して救援隊を苦しめたのだった。

 しかも今回はマナッド・レインの影響を受けて更に強くなっていた事も付け加えておく。

 救援隊はハンドレッドアイズ配下の魔物を掃討しつつ、マナッド・レインの効果が収まるのを待って少数精鋭でハンドレッドアイズに挑み、倒したのだった。



 救援隊の帰りの歩みは遅い。

 それは急ぐ必要がないからという理由だけではない。

 重傷者を乗せている馬車に合わせていたからだ。

 先程、重傷者は鉱山に残ったと言ったが、冒険者達は全員が残った訳ではなかった。

 騎士達は上官の命令が絶対だが、冒険者は自由だ。

 帰路の途中で命を落とす危険がある事を承知の上で本人の希望を優先したのだ。

 


 リサヴィが護衛するウーミの商隊がベルダを出発し、しばらく進むと前方に騎士達の姿が見えた。

 冒険者達の姿も見える。

 ウーミは彼らがベルダ鉱山へ向かった救援隊だと気づいた。

 ただ、彼らがその場に停止しているのを疑問に思い、商隊を停止させると護衛の馬車へ向かった。


「リサヴィの皆さん!」

「前方で大勢の気配がしますね」


 サラにウーミが頷く。


「少し先でベルダ鉱山へ向かった救援隊らしき人達が停止してます。ただの休憩かも知れませんが、様子を見に行きたいので同行して頂けませんか?」

「わかりました。では私が行きます」

「僕も行くよ」

「そうですね。ではヴィヴィとアリスは待機していてください」

「ぐふ」

「はいっ。お気をつけてっ」


 ウーミ、それにサラとリオが救援隊に近づくと騎士が数人やって来た。

 最初に口を開いたのは騎士達だった。


「お前達はベルダ鉱山へ向かうのか?」

「はい。そのあとはユーフィ様のもとへ向かう予定です」

「そうか。しかし、この状況でよく向かう気になったな。それともベルダ鉱山の戦いが終わった事を知ってのことか?」

「いえ、知りませんでしたが、勝利したのですね。おめでとうございます」

「ああ、ありがとう……」


 どこか歯切れの悪い返事だったが、ウーミは気づかない振りをする。


「ところで今は休憩中ですか?」

「いや、実はな……」


 騎士が簡単に状況の説明を始めた。

 彼ら、救援隊はベルダ鉱山での戦いに勝利し、帰還するところだったのだが、途中で重傷者の一人の容態が悪化したため歩みを止め、その者の容態が安定するのを待っているとの事だった。



 話を聞いてウーミが疑問を口にする。

 

「ポーションが不足しているのですか?でしたら……」

「いや。確かに十分ではないが、それよりも短期間に多用したため効果が弱くなって飲んでも意味がないんだ」


 ポーションを飲み過ぎると体に耐性が出来て回復し難くなる。

 今の言葉でベルダ鉱山での戦いが厳しいものだった事がわかる。

 ちなみにポーションへの耐性だが、しばらく期間を空ければほとんどの者は耐性が消える。


「そうでしたか」

「神官や魔術士はいないのですか?」


 神官や魔術士の回復魔法もかけ続けると耐性が出来るが、それでもポーションよりは耐性は出来難いはずだった。

 サラの言葉に騎士達が苦悶の表情を浮かべる。

 

「……いるが、数が足りないのだ」

「え?」


 サラが驚くのも無理はない。

 Bランク以上の冒険者達が救援に向かったと聞いていたからだ。

 それに騎士団にも専属の魔術士や神官がいるはずなのだ。

 

「それは一体……」

「魔物は神官や魔術士を集中的に狙って来やがったんだ!まるで親の仇のようにな!」


 そう言った騎士も今回の戦いで親しい神官か魔術士を失ったようだった。


「それに回復魔法を使える者の多くは重傷者の治療に鉱山に残ってもらった」

「なるほど」

「今回、俺達と一緒に帰還する神官や魔術士の数は少ないし、彼らは何日もマナポーションを飲み続け、魔法もかけ続けて精神疲労も限界に来ている。これ以上無理はさせられない」


 マナポーションは魔法を使用するために必要な魔力を回復させる効果がある。

 しかし、ポーションと同様に飲み過ぎると耐性が出来て回復効果が弱くなるだけでなく、術者の最大魔力量を減らすという副作用もあるため、無闇に飲むのは危険なのだ。


「それに回復魔法も使用し過ぎで効果が弱くなっているようだしな」

「えっと、それなら重傷者は全員鉱山に残してきた方が良かったのではないですか?」


 騎士達はウーミの当然の質問に難しい表情で答える。

 

「本人の意思だ」

「我らと同じ騎士ならともかく、冒険者に強制はできない」

「なるほど」

「冷たいようだが、重傷者達は満足な治療ができない事を承知でベルダに戻りたいと言ってついてきた者達なんだ」


 騎士達は口には出さなかったが、自己責任だと言いたいのだろう。



「では私達が治療してみましょうか?」

「何?」


 サラが重傷者の治療を申し出ると騎士達が驚いた表情をした。

 サラの姿からてっきり戦士と思っていた騎士達が首を傾げる。

 サラがフードを脱ぎ、素顔を見せて言った。


「私はリサヴィのサラ。ジュアス教団の神官です」

「サラ!?」


 その名を聞き思わず騎士が大声を上げた。


「あのサラか!?鉄拳制裁のサラ!?」

「……その呼び方はやめて下さい」

「す、済まない!いや、しかし、本当にあのサラなのか?」

「はあ、まあ、たぶん、そのサラです」

「それは助かる!」

「お前なら、お前の魔法なら効果があるかもしれない!悪いがすぐお願いできるか!?」

「はい。あと私と同等の力を持つアリスという神官もいますので手伝ってもらいましょう」

「何!?お前と同等だと!?」

「ええ。回復魔法は彼女の方が上かも知れません」

「本当か!?ぜひ頼む!」

「はい。リオ」


 サラがリオをそばに呼び、耳元で何事か囁く。


「わかった」


 リオが馬車に戻って行った。



 サラとアリスが重傷者の治療をするのを見た騎士、冒険者から驚きの声が上がる。

 彼女らが魔法を使うと重傷者達の傷が治ったのだ。

 騎士達の話では回復魔法にも耐性が出来て効果が弱くなっているとの事だったが、そのような耐性があるなどとは全く感じさせなかった。

 ただ、手や足などの部位欠損は怪我から時間が経ち過ぎたものは再生しなかったが、少なくとも命の危険は脱した。

 治療が終わっても彼らの体はすぐ動けるようにはならなかった。

 これはサラとアリスが力をセーブしていたからだ。(部位欠損の再生はこのセーブと無関係)

 魔力の消費を抑える意味もあるが、それ以上に目立ちたくないからだ。

 さっきサラがリオに耳打ちしたのはアリスに力をセーブするようにとの伝言だった。

 もし、セーブしなかったら治療を終えた直後から普段通り動けるようになり、もっと騒ぎになった事であろう。


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