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悪夢を振り払え〜あなたを魔王にはさせません!〜  作者: ねこおう
第4部 クズ達のレクイエム編(タイトル変更)
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382話 さらば!誇り高き者達よ!

 Bランククズパーティとその他二組のクズパーティがギルドから正式に依頼を受けていたにも拘らずリサヴィが全滅させたことを知って(事実は違うが)クズ冒険者達は、リサヴィは気に入らない(自分達をクズと思っていないためそう考える)冒険者を陰で始末するのをやめたのだと思った。

 リサヴィと一緒に行動していたCランクパーティと途中で合流したBランクパーティのカレンが彼らは魔物に殺されたとギルドに説明し、リサヴィが手を下した事を否定した。

 それでギルドは納得した(これが表面上である事はギルマスの発言で明らかだ)が、被害妄想に取り憑かれたクズ冒険者達は彼らが口裏を合わせていると思い込んで信じなかった。

 ちなみに別行動をとったBランククズパーティの神官はベルダに戻って来ておらず、一緒に殺されたと思われていた。



 その後のクズ集団プライドだが、結成したBランククズパーティのリーダーを始め主だった者達が消えたため、その半数近くが本性を現した?リサヴィを恐れ、逃げるようにベルダを去った。

 ベルダに残ったプライド残党は今までの行いを反省して改心した、

 はずもなく、我こそ次のプライドのリーダーだと主導権争いを始めた。

 クズ冒険者戦国時代の到来である!

 だが、いつまでも呑気に覇権争いをしているわけにはいかない。

 リサヴィだけでも手に負えないのにベルダ鉱山から融通の利かない冒険者達(クズ視点)が帰ってきたらプライドが完全に終わることを理解していた。

 彼らには早急にプライドを立て直す必要があった。

 そして一人の男がプライドのリーダーに選ばれた。

 彼、新リーダーは嬉しくあったが、それと同時に恐怖を抱いていた。

 プライドのリーダーともなればリサヴィの次なる標的となる可能性が高いからだ。

 被害妄想なのだが彼らの中でそれが真実であった。

 新リーダーは早急にリサヴィ対策を考える必要があった。

 そして新リーダーはある秘策を思いついた。

 新リーダーのパーティメンバーの一人が彼の変化に気づいた。


「何か思いついたのか!?」


 新リーダーは笑って答えた。


「いつも通りだ」

「いつも通り?」

「強い奴がリーダーだ」

「だからお前だろうが!」


 男は笑顔のまま首を横に振った。


「リーダーを倒したのは誰だ?」


 それだけでクズ達には以心伝心だった。


「あー!なるほどな!」


 彼の考えにプライドの残党が賛同した。

 

 

 リサヴィはウーミとの待ち合わせ場所である商業ギルドへ向かっていた。

 そのリサヴィの前にプライド残党が現れた。

 何事かと通りかかった住民や冒険者達が静かにことの成り行きを見守る。

 彼らの中から一歩進み出た新リーダーが口を開く。


「リサヴィ、あんたらは俺達のリーダーを……排除した」


 新リーダーは直接的な言葉を避けた。

 彼のいうリーダーがBランククズパーティのリーダーの事だと察する。

 サラが彼の間違いを指摘する。


「誤解です」

「いや、気にしないでくれ。責めてるんじゃない。俺達は敵討ちに来たんじゃないんだ」

「「「「……」」」」


 ギルマスと同じく彼もリサヴィが殺したと信じて疑っていない。

 実際のところ新リーダーにはどちらでもよかった。


「俺達の中じゃ強い者が上に立つ。それが常識だからな」


 そう言って新リーダーが片膝をつくと、後ろのクズ達も一斉に片膝をついて首を垂れる。

 そして新リーダーが言った。


「リサヴィ!俺達プライド、八パーティ二十九名は、今日からあんたらの傘下に入るぜ!俺達全員の命をあんたらに預ける!好きに使ってくれ!」

「「「「……」」」」


 この演出は今回が初めてではなかった。

 自己顕示欲が人一倍強かったBランククズパーティのリーダーが自分の力を誇示するために今回のように人通りの多い場所を狙ってクズ冒険者達にやらせたものだった。

 Bランククズパーティのリーダーはその言葉を聞き、横柄に頷いてプライドの結成を宣言したのだった。

 それを新リーダーがそっくりそのまま真似たのだ。

 冒険者の多くはBランククズパーティのリーダーと同じく、自己顕示欲が強く、地位や名誉を欲するものである。

 実際、新リーダーもそうであった。

 公衆の面前で持ち上げられて悪い気分になる者などいない。

 気分が良くなったところを狙って彼が想定したプライドに代わる新しい集団、リサヴィ団結成を同意させるつもりであった。

 公衆の面前で言質をとればもうこちらのものである。

 リサヴィが最恐の敵から最強の味方になるのだ。 

 リサヴィに殺される心配をせずに済み、安心してこれまで通り、いや、これまで以上にやりたい放題出来ると考えていた。

 彼らクズ冒険者達は皆誇らしげな表情をし、自分達の演技に酔っていた。

 そしてリサヴィもまた、自分達のような素晴らしい?手下を手に入れたことに興奮し、酔っているものと信じて疑わなかった。

 リサヴィから返事がないのは感動して言葉が出ないものと思い、新リーダーは予定通り話を進めていく。


「それで今後の俺達の呼び名だが……そうだな、リサヴィ団てのに変えるってのはどうだ?」


 最初から決めていたグループ名をさも今考えたかのように提案する。

 サラがため息をついて言った。


「さっきから何を言ってるのかさっぱりわかりません」


 新リーダーはサラの言葉をスルーして話をどんどん進めていく。

 彼はリサヴィから明確な答えをもらわなくともなし崩しにリサヴィ団を結成するつもりだった。


「もちろん、俺らがあんたらと一緒に行動したら邪魔になることくらいわかっている。こんだけの大人数だからな。だからあんたらがベルダを離れても俺達はこのままベルダに残ることにするぜ」

「「「「……」」」」

「ああ、そうそう、リサヴィの名は使わせてもらうぜ。だが、安心しろ。おかしな事には使わねえ。俺が保証するぜ!」


「おうっ!」と、新リーダーを除いた二十八名が元気よく叫ぶ。

 彼らの顔は皆根拠のない自信に満ち溢れていた。

 しかし、肝心のリサヴィは無反応であった。

 少なくとも表情を見る限り、全くうれしそうには見えなかった。

 それは当然のことであろう。

 リサヴィからすれば、


「リサヴィの名を借りてこれからもベルダでクズ行為をするぜ!いいよな!?」


 と言われているようなものだ。

 こんなバカな提案を受けられるはずがなかったのである。

 しかし、プライド残党はリサヴィが頷く事を疑っておらず、その顔は皆期待に満ちていた。

 そんな彼らの耳に冷めた声が聞こえた。


「ぐふ。寝言は寝て言え」

「な、なんだと棺桶持ち!!」


 新リーダーがヴィヴィを睨みつける。


「ちょっと待ってよ、ヴィヴィ」 


 そう言ったリオは珍しく無表情ではなく笑顔だった。

 それも優しい笑顔だった。


「ぐふ?」


 リオの顔を見て「作戦成功だ!」と彼らプライド残党の誰もが思ったのも束の間、リオの表情が徐々に冷笑へと変わる。

 その表情を見て、クズ冒険者達はリッキーキラーとは異なるリオのもう一つの二つ名を思い出した。


 冷笑する狂気、

 

 を。

 今、まさにリオが浮かべている表情がそれであった。

 リサヴィの力を利用しておいしい思いをしようと行動したつもりが、自ら断頭台の上に首を乗せる行為だったのでは?と彼らクズ冒険者全員が思い始める。

 空気を読まない事には定評のあるリオは新リーダーの言葉をそのまま言葉通りに受け取った。


「この人達の命を僕が好きに使っていいんだよね?……“使い切って”もいいんだよね?」

「ぐふ、そうだ」


 リオの問いにヴィヴィが嬉しそうに答える。

 恐怖を覚えた新リーダーがリオに必死に言い訳を始める。


「ちょ、ちょ待てよ!命を預けるっていうのは言葉のあやだ!あや!わかんだろ!?」

「サッパリだ」

「な……」

「大丈夫大丈夫。そう簡単には死ねないから」


 リオは冷笑を浮かべたまま言った。

 彼らの一人が恐怖の限界を超えて叫んだ。


「う、うわっー!!殺されるっー!!」


 そのクズ冒険者は立ち上がるとその場から逃げ出した。


「あ、違った。死なないから。だってこっちにはサラとアンリがいるからね」

「リオさんっ!アンリじゃないですっ」

「うん、知ってた」


 リオとアリスの会話をクズ冒険者達は聞いておらず、先のクズ冒険者を皮切りに他のクズ冒険者達も我先にとその場から逃げ出していた。


「ちょ、ちょ待てよ!お前ら!!」


 そう言いつつも新リーダーも逃げ出した。

 気づけばその場に残っているのはリサヴィと何事かと集まってその様子を見ていた住民達やプライドと無関係の冒険者達だけだった。

 クズ冒険者達が逃走する無様な姿を見て観客?から笑いが起きた。

 プライド残党は公衆の面前で挽回不可能な大失態を犯し、その野望は潰えた。



 リオが首を傾げる。


「……あれ?誰もいなくなった」

「ぐふ。私達に命を預けるのはやめるそうだ」

「そうなんだ。サラとアリス、意外と信用ないんだね」

「……そうですね」

「ほんとっ失礼ですっ!」


 サラは「逃げた原因はそこではありません」と口から出かかったがやめた。

 アリスは本気でぷんぷん怒っていた。


「ぐふ。ともかくだ、クズ達の企みは崩れ去ったな。クズだけに」

「あっ、ヴィヴィさんっ、うまいこと言いますねっ」

「ぐふ」


 ヴィヴィは顎をクイっと上げてどこか誇らしげであった。


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