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36話 幽霊屋敷の依頼確認

 宿屋にギルドから連絡が来た。

 明日屋敷にて討伐完了確認を行いたいとの事だった。

 


 屋敷の前にはサラの予想通りブレイクがいた。ギルドの制服ではなく、冒険者の姿だった。

 他にも何人か武装した者がおり、中にギルド職員の制服を着た者達もいた。

 その中にあの受付嬢の姿がないことにサラはほっとしていた。


「何日も足止めして申し訳なかった」

「いえ、ブレイク様はそちらの方がお似合いです」

「ははは。まあ、俺も正直そう思う。……ところでそちらは?」


 ブレイクが営業スマイルでヴィヴィを見る。

 営業スマイル、と言ったがあくまでもブレイクがそう思っているだけで実際は鋭い眼光をヴィヴィに向けていた。


「ヴィヴィだよ」

「ぐふ」


 リオが説明にならない説明をし、ヴィヴィはそれに相槌を打ったようだ。

 サラはため息をつき、一緒に行動することになった経緯を説明する。


「ほう、魔装士が一人で行動か。珍しいな」

「ぐふ」


 ブレイクはそれ以上質問する事はせず、確認作業に移った。



 確認作業を行う中で一人不審な行動をする者がいた。

 冒険者の格好をしたその者はただ一人建物の損傷をチェックしているようだった。

 その者は窓際に来た時、指先で窓の下をなぞった。

 その指を見てサラに一直線に向かって来ると埃がついた指をサラに見せる。


「それが何か?」

「掃除できてませんね」

「何を……!?」


 サラは気づいた。その冒険者の格好をした者があの受付嬢であることを。

 どうやら言いがかりをつけて報酬を下げようとしているのだと気づく。

 その値下げにかける情熱に半ば感心し、半ば呆れた。


「掃除は依頼内容に含まれていません。自分でしてください」


(全くあなたは姑ですか)


 サラは他のギルド職員を見た。

 睨んだともいう。

 睨まれた職員は即座に状況を理解し、その冒険者の姿をした受付嬢を外へ連れ出した。

 何かギャーギャー騒いでいたがサラの知ったことではない。



 無事依頼達成が確認され、報酬の銀貨二十枚と依頼ポイントを二十ポイント得た。

 どう贔屓目に見てもサラの方が活躍していたのだが、自分の功績を主張することなく均等に分け、報酬は二人とも全てギルドに預ける事にした。


「ところで本当にこの報酬でよかったのか?デイスを倒してるんだ。俺がいうのもなんだがいくらなんでも少なすぎるだろ?」

「いえ、これで大丈夫です」

「依頼内容が実際と大きく異なる場合には報酬の見直しを要求する事も出来るんだぞ」

「はい、それは知ってますが、その……正直、もうあの方とは関わりたくないので……」

「そうか。すまんな。報酬の変更はしないにしてもだ、依頼ポイントなら俺がなんとかしてやれるぞ。検討会を開く必要があるからすぐには適用されないかもしれないが、今回の内容を見て反対する奴はいないだろう」

「それも大丈夫です。それほど急いでランクを上げようとは思ってませんので」

「……そうか。わかった。これ以上は余計なお世話だな」

「いえ、気を遣って頂いてありがとうございます」


 ブレイクはサラがやはり何か目的があって冒険者となった事を確信した。



「ところで、私からもいいでしょうか?」

「なんだ?」

「その、あまりこんな事は言いたくないのですが、今回の依頼を出したあの人ですが、」

「あ、ああ、それか」


 ブレイクがちょっと困った顔をする。

 ブレイクには気の毒だとは思ったが、これ以上、彼女の犠牲者を出さないためにもはっきりいうべきと判断する。


「あのような人がギルド職員というのは問題ではありませんか?」

「いや、彼女はギルド職員ではない」

「は?」

「本当だ」

「え、でも受付嬢してましたよ」

「今は違う」

「……今は?」

「……」


 ブレイクの額から一筋の汗が流れた。


「済まない」


 更に追求する事も出来たがブレイクが不憫に思えてきた。


「……もういいです。二度とカウンターには立たないのですよね?」

「それは保証する」


 ブレイクがほっとした表情をする。



「これで二十七ポイントか。あと七十三ポイントでEになるんだね?」

「そうですね」

「ぐふ。あのギルド職員、ブレイクといったか、あいつの言った通りポイントの交渉をした方が良かったのではないか?」

「必要ないです」

「ぐふ。リオ、お前はどうなのだ?」

「サラのいう通りでいいんじゃないかな。僕、活躍してないし」

「ぐふ」


 それ以上、ヴィヴィは口出しする事はなかった。



「ぐふ。これからどうするのだ?」

「そうだね。次はどんな依頼を受けようか」

「ぐふ。ウィンド、だったか。お前のパーティとは合流しなくていいのか?」


 ヴィヴィの言葉に依頼掲示板に向かいかけていたリオの足がピタリと止まる。


「……あ、忘れてた」

「「……」」


 サラはもちろん覚えていた。こんな重要な事を忘れる方がどうかしているのだ。

 その事を指摘しなかったのはサラはウィンドに急いで合流したいと思っていなかったからである。

 ヴィヴィに対して内心、余計なことを、と思いながら口にしたのは別のことだ。


「そうですね。依頼もひと段落つきましたし、新たな依頼を受けるとしても待ち合わせ場所に向かいながらにしませんか?」

「わかった」



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