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悪夢を振り払え〜あなたを魔王にはさせません!〜  作者: ねこおう
第4部 クズ達のレクイエム編(タイトル変更)
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349話 依頼争奪戦勃発

「おらっ、邪魔だ退きな!」


 マウの威嚇に冒険者達が怯んで道を開ける。

 快楽都市ヨシラワンでは名を知らぬ者はいないほど有名で男どもを夢中にした美女であるBランク冒険者の戦士リリス、美青年を思わせる美女であるBランク冒険者の戦士マウ、そして小柄で小悪魔的な容姿の美少女であるBランク冒険者の盗賊ジェージェーが笑みを浮かべた。

 その瞬間、彼女らの態度に怒りを露わにしていた冒険者達が、その笑顔に見惚れて思わず怒りを忘れてしまう。

 リトルフラワーのメンバーはそれぞれ美しさが異なり、大体の者はこの三人の誰かに好みがヒットするのだ。


「あ、リリスだ」


 リリスが自分の名を呼んだリオに微笑みかける。


「久しぶりですわね、リオ」


 そこへがマウとジェージェーが不満の声を上げる。


「おいおい、リオ!リリスだけじゃないだろ!あたい達もいるぞ!」

「そうだよ!」


 更に彼女らに続いて女魔術士がこそこそと不安げな表情をしながら後をついてくる。

 サラはその女魔術士に見覚えがあったがどこで会ったかまでは思い出せなかった。


「あなたが依頼主ですわね?」


 リリスに見つめられウーミは顔を真っ赤にする。

 

「は、はいっ」

「ベルダまでの護衛ですが私達、リトルフラワーも立候補しますわ」

「あ、ありがとうございます……」


 ウーミがチラリとリオを一瞬見てからサラに視線を移す。

 サラはその視線を受けて判断を任せられたと悟る。


「ウーミ、これから説明があると思うのですが、この依頼で募集しているパーティは何組ですか?」

「あ、はい。二組です。人数によっては三組も考えていました」

「なるほど。私達とリトルフラワーが受けると七、ではなく八名ですね」

「リトフラワーの皆さんの実力も噂で聞いていますので受けて頂けるなら戦力的にはこれで十分かと思います」


 ウーミの発言を聞いて彼女らに見惚れていた冒険者達が我に返り、ギルドが再び騒がしくなる。

 

「ざ、ざけんな!そんな後から来た奴らに美味しいところを持っていかせるかよ!」

「そうだ!大体そいつらのどこが有名なんだ!?嘘つくんじゃねえぞ!」

「リトルフラワーだかなんだか知らねえがな!金がほしけりゃ、その辺の角にでも突っ立ってろよ!俺が買ってやるぜ!」


 男は言葉の最後で本音がポロリと出て威勢のいい態度が台無しであったが、


「「「「だな!」」」」


 と彼の意見に次々と賛同する者が現れる。

 ここにいる冒険者達はサキュバスは当然知っていたが、本当のパーティ名であるリトルフラワーを知らず、彼女らも自己紹介をきちんとしなかったので正体に気づかず言いたい放題であった。


「静かにしてください!」


 ギルド職員の声を張り上げて叫ぶが騒ぎは収まらない。


「いい加減にしやがれっ!!バカども!!」


 マウの一声でやっとギルドは静かになった。

 敵意の籠った視線がマウに集中する。

 中にはイヤらしい視線も混じっており、それにマウは気づいていたがそんな視線に慣れっこのマウは気にせず言った。

 

「ようし!わかったぜ!お前らがそんなに不満だって言うならこの依頼をかけて勝負をしようぜ!」

「またそうやってあなたは事を大きくしようとする……」


 リリスが呆れた顔でマウを見ると任せろ、と手で合図を返した。


「そこまで言うんだからお前らは当然腕には自信があるんだろうな!」


 マウが冒険者達を睨みつけるとあからさまに視線を避ける者もいた。


「トーナメントだ!トーナメント戦を行おうぜ!それで勝った奴が依頼を受けることができる。それでどうだ?」


 マウがウーミを見た。

 またも美女に見つめられてウーミは顔を赤くしながらも不安を口にする。


「あの、納期が迫ってますので……」

「明日いっぱいくらいは待てんだろ?なっ?待つよな?」


 ウーミは美女に迫られて思わず頷いてしまった。

 

「よし決まった!時間もないと言う事だからよ、トーナメントはパーティから代表一名出して戦うって事にしようぜ!」


 マウがどんどん話を進めていく。

 それに抵抗を見せる者もいた。


「何勝手に仕切ってやがる!?」

「そうだ!」

「おっ?何んだお前ら、腕に自信がないってか。なら、依頼に立候補するんじゃねえ!」

「ざ、ざけんな!強ければいいってもんじゃないだろう!」

「だな!」

「はあ?お前ら依頼内容理解してんのか?ああ!?」


 美女の冷めた視線を受け、抵抗した冒険者達が凍りつく。


「マナッド・レインで凶暴化した魔物がいるベルダ山を登るんだぞ!力なくてどうする!?」


 それでも一人がなんとか抵抗する。


「あ、頭だ!」

「だ、だな!」

「馬鹿野郎!そっちがもっと足りねえだろうがお前らは!!」


 マウの怒声がギルド内に響いた。



 結局、マウの強引な推しで依頼争奪トーナメントが明日行われることが決定した。

 ギルド職員がトーナメント申し込みの準備を始めるのを横目にサラがため息をついて言った。

 

「なんか面倒なことになりましたね」

「あの、すみません。僕が優柔不断なせいで……」


 マウの勢いに流されたウーミが頭を下げる。

 

「いえ、それより本当に納期は大丈夫ですか?」

「ええ。まあ、なんとかギリギリ……」

「そうですか。それならいいのですが」


 それまでぼーとしていたリオがトーナメントの受付が開始したのを見て言った。


「じゃあ、僕がリサヴィ代表で出るよ」

「は?」

「えっ?」

「ぐふ?」


 呆気に取られたのはサラ達リサヴィのメンバーだけではなかった。

 トーナメント戦を提案したマウを始めリトフラワー、他の冒険者達、そして依頼主のウーミまでもポカンとして発言者のリオを見た。


「お、お前何言い出してんだ!?」


 立ち直った冒険者の一人がリオに喰ってかかる。

 

「ん?」

「『ん?』じゃねえ!お前らは確定だろ!不戦勝だ馬鹿野郎!」


 その冒険者の言葉に皆が頷くが、リオだけが首を傾げる。


「いや、これだけ人気なのに僕達だけ不戦勝は悪いよ」

「悪いのお前の頭だ!!」


 その叫びに冒険者達が深く頷いた。

 しかし、リオの意志は固く、これには依頼主のウーミが折れてリサヴィもまた依頼争奪トーナメントに出場する事になったのだった。


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