323話 俺たちゃフラインヘイダイ討伐隊! その4
その日の夜。
畑の見張りをしているリサヴィのもとに何故かBランクパーティとCランクパーティAがいた。
彼らは一列に並んで立ち、腕を組んで偉そうだった。
「お前達の腕前、見せてもらうぞ」
Bランクパーティのリーダーが上から目線で偉そうに言った。
キメ顔もしていたがサラは無視した。
他の者達も偉そうに上から目線で話しかける。
「“鉄拳制裁”の二つ名が伊達ではない事を俺達に証明して見せてみろ!」
「俺達、Bランクパーティに入るに相応しいかしっかり見極めてやるぞ!」
「……」
「お前もだリッキーキラー!お前の事を“冷笑する狂気”なんてふざけた二つ名で呼んで恐れる者がいるらしいが俺は信じてねえ。この目で見るまではな!」
「どうしても俺らのパーティに入りたいってならまずは力を示せ!」
「……」
彼らは自分に酔っていた。
言われた方はどうだったかといえば、どちらも彼らを相手にしてなかった。
リオは自分の事を言ってると思ってなかっただけであるが。
そしてしばらくしてリッキーが現れた。
リオがリッキーに向かう。
しかし、
「よっしゃー!」
「俺らに任せろ!」
「これで報酬なしとは言わせねえぜ!」
追い出されたCランクパーティBが現れ、各々好き放題に喚きながらリッキーに向かって突撃した。
リッキー達は彼らの叫び声に驚き、たちまち逃走を図る。
「……あのバカどもが!」
「ですねっ」
「ぐふ」
「……」
リッキー達の姿が見えなくなるとCランクパーティBがサラ達の元へやって来た。
リッキーを一頭も仕留めていないにも拘らず、何故か彼らの表情は誇らしげだった。
「見たか!俺達の力を!」
「おうっ、リッキーの野郎、尻尾巻いて逃げていきやがったぜ!」
「はははっ!これでもう報酬ゼロとは言わせねえぜ!」
「……」
リオが無言で冒険者に向かうのを見てサラが咄嗟に叫ぶ。
「殺してはいけませんよ!」
サラの声がリオに聞こえたかどうか。
CランクパーティBのリーダーが近づいてくるリオに見下した表情をしながら言った。
「リッキーは全然大した事なかったな。でも安心しろリッキーキラーの二つ名はお前の方がお似合……」
「お前ら、邪魔」
「なんだと……ぶへっ!?」
リオに殴られてぶっ飛ぶリーダー。
「テメエっ!」
向かって来た彼のパーティの戦士の斬撃をかわし、蹴りを放って足をへし折る。
「いでえ!」
「うるさい」
リオは表情一つ変えず転倒した戦士の顔を踏み潰した。
顎が砕け、声にならない悲鳴を上げる戦士。
更に先ほどぶっ飛んだリーダーが起きあがろうとしたところでリオがその顔に蹴りを放った。
リーダーの鼻が折れ、歯が折れ、顎を砕けた。
あっさり倒された仲間達を見て残りの一人はリオと目が合うと身を震わせて首をプルプル横に振る。
「そこまでです!もういいでしょう!」
サラの言葉にリオは足を止めた。
「本当にいい加減にしなさい」
顔を苦痛に歪め助けを求める二人の冒険者にサラが説教をしていた。
「あなた達が邪魔したせいで滞在期間が伸びそうです」
「そ、そんな事より早く治してやってくれよ!」
サラはただ一人無傷だった戦士の言葉を聞き流し説教を続ける。
「もう二度と邪魔をしない、いえ、これではまた自分達の都合のいい方に考えるわね。治療が終わったらすぐ村から出て行きなさい。その約束が出来るなら治療します」
「わ、わかったから早く治してやってくれっ!頼むよ!」
無傷の戦士がサラに治療を懇願する。
サラがぼろぼろの二人に目を向けると涙目で頷いているように見えたので怪我を治してやる事にした。
彼らの怪我はサラとアリスがそれぞれ一人ずつ治した。
普通の神官が大怪我を治した場合、今まで通り動かすのはしばらく時間がかかるものであるが、サラとアリスが治療した彼らはすぐに普通に話せ、体も動かせた。
それを見て、本人だけでなく他の者達も驚く。
サラはまだわかるが、アリスまで同等の力を持っているとは思わなかったのである。
治療が終わるとサラがCランクパーティBへ言った。
「あなた達が依頼の邪魔をした件をギルドに報告します」
傷が治り安心したからか、G世代の誇りがそうさせるのか、彼らはその言葉を聞き、怯むどころから強気に出て来た。
「ふざけんな!俺達が被害者だ!」
「おうっ、俺達の方こそ報告するぞ!いいのか!?」
更に彼らはサラの弱み握ったと思い、攻勢に出た。
「よしっ、サラ、今回の件、不問にして欲しかったら俺達のパーティに入れ!」
「おうっ、パーティに入って一緒に行動すれば俺がお前の勇者だとわかるはずだ」
「馬鹿野郎!俺に決まってんだろ!」
自分達の立場が有利になったと勝手に思い込んだだけでなく、もうサラがメンバーになった気になって争いを始める。
あまりのバカさ加減にサラが頭を押さえる。
「……言うのは自由です。とにかく約束通り出て行きなさい。出て行かないなら……元に戻します」
サラが彼らに冷めた目をしながら拳をぐっと握る。
「「「ひっ……」」」
サラは言う事を聞かなければ同じ怪我を負わすぞ、と脅したのだ。
頭のおかしい彼らでも今の意味を理解できたようで体を震わせながらコクコクと頷いた。
「後悔するからな!」
CランクパーティBは十分距離をとり、声が届くギリギリでサラとリオの悪口を喚いて去っていった。
サラが残りのパーティに目を向けると彼らは怯えた表情でリオを見ていた。
サラが少し大きめの咳払いをして彼らの注目を集めてから言った。
「今のが警告です。あなた達も邪魔をするようならああなります。ただし、あなた達が怪我しても治療しませんので絶対に私達の邪魔をしないでください」
二組のパーティはコクコク頷き、まだ腕を組んで偉そうにしている事に気づき、慌てて腕を解いた。
その日、もうリッキーは現れなかった。
それから二日間、リサヴィはリッキー退治を行い、依頼は達成となった。
その間、CランクパーティBを除くフラインヘイダイ討伐隊は村に留まっていたが、加勢(邪魔)する事はなかった。
フラインヘイダイ討伐隊はリオが強いという噂が本当である事を知った。
と同時にリオには勇者としての資格はないことも確信した。
「確かに奴は強いが、あれは勇者の行いではない!」
「だから俺達にもチャンスはまだある!」
と自分達の日頃の行いを棚に上げてそう判断したのだった。




