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悪夢を振り払え〜あなたを魔王にはさせません!〜  作者: ねこおう
第4部 クズ達のレクイエム編(タイトル変更)
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322話 俺たちゃフラインヘイダイ討伐隊! その3

 リサヴィが依頼内容の確認を終えて、今夜から泊まることになる村に一軒しかない宿屋に向かった。

 だが、


「すみません、部屋がいっぱいでして……」


 宿屋の主人が済まなそうな顔で頭を下げた。

 なんと部屋すべてをフラインヘイダイ討伐隊が借りてしまっていたのだった。

 サラ達が宿屋の主人と話をしているところへ勝ち誇った顔でBランクパーティがやってきた。


「満室になっちまったようだな」

「「「「……」」」」

「だが、気にするな。フラインヘイダイ討伐に協力するっていうなら部屋を譲ってやらなくもないぞ」


 Bランクパーティのリーダーが上から目線で言った。


「「「「……」」」」


 そこへCランクパーティAが現れた。

 そのリーダーがチラリとBランクパーティを見て、ニヤリと笑った。


「災難だったな、サラ」

「「「「……」」」」

「よし、サラ!それとアリエッタ!俺達が借りた部屋を貸してやるぞ!その代わり俺達のパーティに入れ!」

「「「「なっ……」」」」


 その言葉に驚いたのはリサヴィではなく、Bランクパーティだった。


「て、てめえら何抜け駆けしてやがる!?」

「安心しろ。フラインヘイダイ討伐はやるし、お前らも参加させてやる。だが、サラとアリエッタは俺達のパーティがもらう!」


 BランクパーティがCランクパーティAを睨むが彼らは涼しい顔で返す。

 先ほど分かり合えたと思ったがそれは勘違いだったようだ。

 更にもう一組のCランクパーティBも参戦してきた。


「待て待て!サラ!アリエッタ!俺達が借りた部屋に泊めてやる!もちろん俺達のパーティに入るのが条件だ。あ、言うまでもないがテメエらはダメだ!リッキーキラーと棺桶持ち!オメエらはいらねえ!!」


 そう言ってCランクパーティBのリーダーが見下した表情でリオとヴィヴィを指差す。

 焦ったBランクパーティのリーダーが起死回生の素晴らしい?提案をする。


「サ、サラ!それとアリエッタ!俺達の借りた部屋に泊まれ!俺と同じベッドに寝かせてやるぞ!」

「「……」」


 サラとアリスの冷めた視線を受けてもリーダーは気にせず続ける。


「いや、気にするなっ!深い意味はない!がははは!」

「「……」」


 鼻の下が地面につきそうなくらい伸びた顔で言われても説得力は全くなかった。

 Cランクに落ちそうとはいえ、Bランクに上がったのだからそれなりの力を持っているはずだとサラは思っていたが、少なくとも頭の出来は子供以下だと悟る。

 何故、こんな知能でBランク試験どころかギルド入会試験に合格出来たのか理解に苦しむ。

 サラとアリスはBランクパーティのリーダーのバカな提案は言うまでもなく、他の提案も受ける気はない。

 サラは宿屋の主人に向き直るとある事を確認する。


「ところで、彼らは複数の部屋を借りているのですよね?」

「あ、はい、そうです」

「宿泊代はもらいましたか?」

「え?いえ、皆さん何泊するかわからないので後で払うと言いまして……」

「では二日分は前金でもらった方がいいですよ。私の経験上、この手の者達は難癖つけて一部屋分かし支払わない可能性が高いです。下手すると宿泊代全てを払わない可能性もあります」


 サラの言葉に彼らは顔を真っ赤にして激怒した。

 サラが発言が余りにも失礼だった、

 からではなく、実際サラの言う通りでその作戦を宿屋の主人にバラしたからだ。

 とはいえ、その事を素直に口にすることは流石になかった。


「おいおい、サラ。俺達はそんなに信用ないか?」


 Bランクパーティのリーダーがサラと視線を合わせずに言った。


「そうだぜ。コイツらは知らんが」


 CランクパーティAのリーダーがサラと顔を合わせずに言った。


「俺達の事は信じてるよな。そいつらは知らんが」


 CランクパーティBのリーダーが下を向いて言った。

 その後、すぐ三パーティが互いの貶し合いを始めるが一向に誰も宿代を支払おうとしない。


「彼ら、ああやって騒いで有耶無耶にしようとしてますよ」

「「「!!」」」


 サラの指摘で呆然と成り行きを見ていた宿屋の主人が我に返る。


「あ、はい。では皆さん。申し訳ありませんが二日分前払いしてしただけますか?もちろんその前に出発する事になりましたら払い戻しますので」

「おいっ親父!お前、俺達が信用できないのか?あんっ!?」

「あの、」

「その態度を見て信用できるわけないでしょう」

「お前には聞いてないぜサラ!」


 サラの言う事を半信半疑で聞いていた宿屋の主人だったが、彼らの態度を見てサラの言う事が正しいと悟る。


「申し訳ありませんが支払えないようでしたら今すぐ出て行ってください」

「そんなこと言っていいのか?俺ら全員出ていったら困るだろ?大損だぞ?」


 Bランクパーティのリーダーが宿屋の主人を脅す。

 しかし、


「構いません」

「な……」

「リサヴィの皆さんだけで十分です」


 宿屋の強気な態度に彼らの態度が豹変した。


「お、おいおい、待てよ。そんな事言ってると依頼を受けないぞ?」

「あなた達は無関係だと言ってるでしょう」


 Bランクパーティのリーダーの発言をサラが否定する。


「皆さん、支払う気がないようなので出て行って下さい」

「「「「「「「「「「……」」」」」」」」」」


 本来、借りる部屋は各パーティ一部屋でいいものを、サラをフラインヘイダイ討伐に参加させるために各パーティが複数の部屋を貸し切って満室にしたためどのパーティも結構な出費となる。

 作戦を継続するためには支払うしか手がなくなり、BランクパーティとCランクパーティAは渋々宿代を支払ったが、CランクパーティBだけは愛想笑いをしたまま支払おうとしなかった。 

 宿屋の主人が厳しい表情で今だに支払おうとしないCランクパーティBに言った。


「前払いをお願いします。他の方達は払ってくれましたよ」

「へ、へへっ」

「いや、まあ」

「ちょ、ちょ待てよ」


 サラがため息をついて言った。


「どうやら本当にお金を払う気がない者達がいたようですね」


 クズ冒険者は自分にはとことん甘いが他人にはとても厳しい。

 BランクパーティとCランクパーティAも例外ではなく、自分達も宿代をブッチしようとしていた事など棚の上に放り投げてCランクパーティBに軽蔑した視線を送る。


「ちょ、ちょ待てよ。ギルドで金下ろすの忘れたんだ。なっ、サラ、わかるだろ?」

「わかりません」

「な……」

「お金がないならさっさと部屋を空けなさい」


 CランクパーティBのリーダーが卑屈な笑みを浮かべてサラに懇願する。


「か、金貸してくれ。この依頼が終わったら返すからよ。なっ?それならいいだろ?」

「この依頼とはどの依頼ですか?」

「リッキー退治に決まってるじゃねえか」

「本当に頭が悪過ぎですね」

「なんだと!?」

「これは私達だけで受けた依頼だと何度言えば理解するのですか。あなた方に支払われる報酬などありません」

「じゃ、じゃあフラインヘイダイの報酬で払うからよ」

「ではこんなところで遊んでいないでさっさとフラインヘイダイを討伐してきなさい」


 彼らはこのサラの言葉を自分達に都合がいいように曲解した。


「よしっサラ!こんな下らん依頼より先にフラインヘイダイの討伐に行くぞ!」

「「だな!」」


 キメ顔を向けるCランクパーティBにサラは冷めた目を向けて言った。


「私達はやらないと何度も言っいてるでしょう。本当にどういう頭をしているのですか」


 サラの表情がどんどん厳しくなり、更に焦り出すCランクパーティBの面々。


「じゃ、じゃあ、ギルドに帰ったら払うぜ!それなら文句ないだろ!」

「ありますっ!」


 たまらずアリスも口を挟む。


「なんでっあなた達にお金貸してっ、わたし達が泊まれなくなるんですかっ!?」

「いや、待て待て。落ち着けってアリエッタ。お前らは俺らの部屋に泊めてやる。それなら文句ないだろ。あ、もちろん、リッキーキラーと棺桶持ちはダメだ!絶対だ!」

「だな!」

「おうっ、お前らは許さん!」

「「「「……」」」」


 自分達の立場を全く理解できず堂々と言い切ったCランクパーティBに皆が呆れる。


「なっ?」


 自分達の愚かさに気づかずサラとアリスにキメ顔をするCランクパーティB。

 サラ、そしてアリスはもはや彼らと話していると頭がどうかなりそうだった。

 それは彼女達だけではなかったようだが。

 サラが頭を振ってバカが言った言葉を追い出す。

 

「ともかく、私達があなた達にお金を貸すことはありません。お金がないならとっとと部屋を明け渡しなさい」


 サラの正論に普通の者ならとうの昔に屈していただろう。

 しかし、彼らは元マルコギルド所属で、しかもG世代の冒険者達である。

 この程度の困難など今まで何度も経験し、その度に持ち前の屁理屈と身勝手さで乗り切って来たのである。

 そう簡単に正論如きに屈する訳がなかったのである。

 彼らはリサヴィがダメとわかるとフラインヘイダイ討伐隊へ愛想笑いを向ける。


「なあ、金貸してくれ。頼むぜ。俺達、分かり合えただろ?」

「同じ崖っぷち冒険者仲間じゃないか」

「おうっ、助け合おうぜっ」


 彼ら、フラインヘイダイ討伐隊の面々は客観的に見れば同類であった。

 しかし、彼らは自分達を客観的に見ることが出来る者は一人もいなかったので、CランクパーティBに「崖っぷち」と言われたBランクパーティとCランクパーティAは怒り出す。


「ざけんな!お前らと一緒にすんな!」

「この程度の金も出せん奴と一緒にすんじゃねえ!」

「おうっ、こんな端金払えねえで駄々こねる奴見てみたいぜ!」


 リサヴィのメンバー(リオは除く)は「お前らもだ!」と口まで出かかったがなんとか言葉を飲み込んだ。



 BランクパーティとCランクパーティAのどちらかが CランクパーティBの宿代を出せば作戦は継続出来る。

 しかし、彼らはそうしなかった。

 彼らのような他のパーティに寄生して依頼をこなすクズ冒険者達は寄生するに値する優良冒険者と値しないクズ冒険者を嗅ぎ分ける事に秀でている。(ただし、自身のことはわからない)

 その彼らがCランクパーティBはメンバーすべてがクズ冒険者だと判断したのだ。

 クズに金を使う気のない彼らはこの作戦自体の中止を決断したのだった。


「おい、おやじ。やっぱ俺ら一部屋だけにするから金返せ」

「俺らもだ」


 BランクパーティとCランクパーティAが宿屋の主人に余分に借りていた部屋の代金の返金を求める姿を見てCランクパーティBが怒り出す。


「ざけんな!そんな事したら作戦がダメになるだろう!!」

「「「「「「「ダメにしたのはお前らだ!!」」」」」」」


 BランクパーティとCランクパーティAの怒鳴り声が見事にハモった。



 こうしてCランクパーティBは金が払えず、宿屋を追い出され、リサヴィは部屋を確保した。

 追い出された彼らがおとなしく帰ったかといえば当然そんなことがあるわけもなく、何年も放置された空き家に勝手に入り込んだのだった。



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