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悪夢を振り払え〜あなたを魔王にはさせません!〜  作者: ねこおう
第4部 クズ達のレクイエム編(タイトル変更)
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320話 俺たちゃフラインヘイダイ討伐隊! その1

 リサヴィが応接室から出て来ると多数の視線を感じた。

 その多くがアリスであるところを見るとリサヴィだと気付いているのではなく、単純に神官の仲間が欲しいだけのようだ。

 しかし、中には明らかにリサヴィだと知っているかのように粘着質なとても嫌な視線をサラは感じていた。

 先ほどの元マルコ所属のパーティの騒ぎを見ていたからからだろうか、ギルド内で露骨な勧誘をする者はいなかった。

 そう、ギルド内では。



 リサヴィがギルドを出ると、それに合わせたように二組のパーティがゾロゾロと別々に出て来た。

 サラは偶然だと思いたかったが、先ほど感じた粘着質な視線をサラに向けていたのは彼らであった。

 そして、しっかりとリサヴィの後をついてくる。

 更に先ほど逃げていった元マルコ所属のパーティも合流してリサヴィの後をついて来る。

 彼らは後になってサラ達がリサヴィだと気づいたようだ。

 彼ら三パーティはリサヴィがフラインヘイダイ退治に行くと勘違いしているのでは?とサラは思ったが、向こうが何も言ってこないのにわざわざ言う必要はないと判断して黙っていた。

 万が一、いや、億が一にもリサヴィの後をつけているというのがサラの勘違いである可能性もあるからだ。


 だが、サラの推測通り、彼らはリサヴィがフラインヘイダイ退治の依頼を受けたと思って後をついて来たのだった。

 


 ざっさっざっざっ。

 リサヴィの後を三パーティが続く。

 リオ達がリッキー退治をする村は幸か不幸か、フラインヘイダイが目撃された方向にあった。

 それが更に彼らの誤解を招いたのは間違いなかった。

 彼らの間で話し声はほとんどなかったが、しばらく進んだ後、一組のパーティがサラ達を追い抜き、前に立ち塞がる。

 それは先ほど強引な勧誘をした元マルコ所属のパーティではなく、最初からついて来ていた二組のうちの片方だった。

 

「邪魔です」

「慌てんなって。な、サラ」

「……」

「ぐふ」


 サラがどこか嬉しそうな声を上げたヴィヴィを睨みつけている間も男は話を続ける。


「そろそろこの集団、フラインヘイダイ討伐隊の指揮を誰がとるか決めておくべきだろう?」


 そう言ってリーダーがキメ顔をサラに向ける。

 

「私達には関係ない事です。退いてください」


 しかし、リーダーはサラの抗議をスルー。


「よしっ、サラ!先任Cランク冒険者であるこの俺がフラインヘイダイ討伐隊の指揮を取る!」

「「「「……」」」」


 そう言ったCランクパーティAのリーダーの顔はどこか誇らしげだった。


「あのですね……」


 サラが話す途中で別のパーティのリーダーが割り込んで来た。

 それは最初にアリスにちょっかいをかけて来た元マルコ所属のCランクパーティBだった。


「ざけんな!リサヴィに最初に目をつけたのは俺達だぞ!」


 その言葉を聞いてCランクパーティAがCランクパーティBに見下した笑みを浮かべる。


「何言ってやがる。お前らは話しかけてる相手がリサヴィだと気付いてなかっただろうが」

「な……、い、いや、そんなことは……」

「言い訳しようっても無駄だ!お前らがサラではなく、アリエッタを勧誘してるところをこの目で見てたんだからな!」


「誰がアリエッタよ」とアリスが小声で抗議するが、聞こえないように言ったので誰の耳にも届かなかった。


「そ、それは演技だ!」

「「だな!」」


 CランクパーティBは仲間内で頷き合うが、それを見てCランクパーティAは鼻で笑う。

 

「よく言うぜ。サラの事を『ブスブス』言ってたくせによ!」


「ぐふ。それはそれほど間違いではない」と呟いたヴィヴィをサラが睨みつける。


 CランクパーティBの苦しい言い訳は通用せず、フラインヘイダイ討伐隊の指揮はCランクパーティAのリーダーがとることになるかと思われた時だった。

 最後のパーティが参戦した。


「いい加減にしやがれ!Cランクごときが偉そうにすんじゃねえ!!」

「「なんだと!?」」

「俺達はBランクだ!文句があるのか!?あんっ!?」


 Bランクパーティのリーダーは冒険者カードを取り出すと、どうだ!とでも言わんばかりに彼らに見せつける。

 それに合わせてパーティ全員が冒険者カードを見せつける。

 ちなみに彼らはマルコからリサヴィを追いかけてきたパーティである。


「な……」

「くっ……」


 冒険者のほとんどがランクで上下関係を決めたがる。

 彼らもそうだった。

 クズスキル?を使いこなす者達にとってランクこそが絶対なのだ。

 CランクパーティA、Bの面々は悔しそうな顔をしながらも沈黙した。

 その様子を見て満足そうに頷くBランクパーティのリーダー。


「よしっ、サラ!Bランクパーティのリーダーであるこの俺がフラインヘイダイ討伐隊の指揮を取る!文句はないな!いや、言わせねえぜ!」


 Bランクパーティのリーダーはそう言ってサラにキメ顔をする。

 サラはため息をつく。


「……付き合ってられません。行きましょう」


 サラは言うまでもなく、リオ達に言ったのだが、Bランクパーティのリーダーが反応した。


「おいおい、サラ。今決めただろう。俺がこの討伐隊の指揮は俺がとると。だがまあ、お前が仕切りたがり屋なのは知ってるから今は好きにさせてやる。だが、戦いになったら俺の指示に従えよ!わはははっ!」


 Bランクパーティのリーダーがなんか笑い出すと彼のパーティメンバーも「わはははっ!」と笑い出した。

 サラは頭が痛くなった。



 ざっざっざっざっ。

 フラインヘイダイ討伐隊がリサヴィと進む。

 フラインヘイダイ討伐隊の構成は、次の通りである。


 Bランクパーティがリーダーを含む戦士が三人、盗賊一人の四人パーティ、

 CランクパーティAはリーダーの戦士、魔術士、盗賊がそれぞれ一人の三人パーティ、

 そしてCランクパーティBはリーダー含む戦士三名の三人パーティである。

 ちなみに全員男である。

 確かにこれでは変態オートマタのフラインヘイダイは近づいても来ないだろう。


 CランクパーティA以外は非常にバランスの悪い構成であった。

 中でもBランクパーティに魔術士、神官のどちらもいないなど、普通はあり得ない。

 間違いなく問題ありのパーティだとわかる。

 ……まあ、構成を見なくても彼らの態度から問題があるのは容易にわかることではあったが。

 


 サラとアリスは彼らから代わる代わる勧誘されたが無視し続けた。

 やがて前方で道が二手に分かれているのが見えて来た。

 分かれ道の手前で立ち止まり、サラが地図を広げるとヴィヴィが覗き込み、右の道を指差した。

 それを見てBランクパーティのリーダーが叫んだ。


「馬鹿野郎!そっちじゃねえ!」

「おうっ、フラインヘイダイが目撃されたのは左だ!左の道を進んだ先だ!」

「棺桶持ち!少しでも分前を増やそうと思って役に立つところをアピールしようとしたんだろうが大間違いだ!」

「棺桶持ちが出しゃばるんじゃねえぜ!!」


 冒険者達の罵声がヴィヴィに飛ぶ。

 ヴィヴィは言い返す事なく、無言を貫く。


「よしっ、行くぞ!」


 Bランクパーティのリーダーの掛け声に、


「「「「「「「「「おうっ!」」」」」」」」」


 フラインヘイダイ討伐隊の声が見事にハモった。


 ざっざっざっざっ。

 フラインヘイダイ討伐隊、三パーティ、総勢十名の冒険者達が左の道を進む。

 それを見送るリサヴィ。


「さっさとついてこいよ!」


 CランクパーティBのリーダーが立ち止まったままのリサヴィに声をかける。

 と言っても実際はサラとアリスに対してだが。

 その証拠に彼女らに向かってキメ顔をした。

 もちろん、効果は全くない。


「では私達も行きましょう」


 サラの声に皆が頷き、歩き出す。

 右の道へと。

 しばらくして、後ろから怒声が聞こえた。

 振り返るとフラインヘイダイ討伐隊の面々が顔を真っ赤にして走って追ってくるのが見えた。

 

「お前らはバカか!」


 それがBランクパーティのリーダーの第一声だった。

 

「……何を言ってるのかわからないのですが?」

「フラインヘイダイは左の道だと言っただろう!聞こえなかったなんて言わせねえぞ!」

「聞こえていましたがそれが何か?」

「何かだと!?てめえ……」

「私達はフラインヘイダイを討伐に来たのではありません」

「俺の指揮に従……へ?」


 リーダーがアホ面を晒している間もサラは気にせす続ける。


「そもそも私達は『フラインヘイダイ討伐に行く』などと一言も言っていませんが」

「ふ、ふざけんな!」

「そうだ!今頃そんな事言うなんて卑怯だぞ!」


「そうだそうだ!」とあちこちから非難の声が上がる。


「大体だな!俺達はお前らがベルダに向かってると聞いてわざわざ追いかけて来てやったんだぞ!」

「は?」


 Bランクパーティのリーダーの発言でリサヴィは彼らが新たなストーカーだと知って唖然とする。

 更にBランクパーティの文句は続く。


「セユウで待ってやってるのにお前らときたら全然来やがらねえ!」

「何日も待たせやがって!」

「俺達がどんだけ宿泊費使ったと思ってんだ!?あん!?」

「「「「……」」」」


 どうやらリサヴィがストーカーカリス対策で寄り道した事でBランクパーティのサイフに大ダメージを与えていたようだった。

 リサヴィはその事を知り、彼らに心から謝罪する、

 わけはなかった。

 言うまでもないがそんなの知ったことではない。

 罪悪感ゼロであった。

 そもそもリサヴィに近づいて来る者達の大半が自分勝手で理不尽な怒りをぶつけてくるのだ。

 それはもうリサヴィにとって慣れたもので日常茶飯事と言ってもいいだろう。

 だからサラは彼らの暴言にムキになって反論せず、あっさりした返事をする。


「頼んでません」

「「「「ざけんな!」」」」


 サラの正論に納得せず、怒りの形相で追求してくる。


「じゃあ、なんの依頼を受けたってんだ!?あんっ!?」

「リッキー退治ですがそれが何か?」

「はあ!?リッキー退治だと!?」

「ええ」

「ギルド職員に応接室にわざわざ呼ばれてリッキー退治依頼されたって言うのか!?」

「はい」

「「「「「「「「「「ざけんなっー!!」」」」」」」」」」


 フラインヘイダイ討伐隊の怒声が見事にハモった。

 フラインヘイダイ討伐隊が怒り狂う様を見て、リサヴィの面々はため息をつく。(リオは除く)


「何を怒ってるのかさっぱり理解出来ませんが、ともかく私達とあなた達では目的も場所も違うということはわかったでしょう。ーーそれでは」


 まだ文句を言い続けるフラインヘイダイ討伐隊を放ってリサヴィは歩みを再開した。



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