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悪夢を振り払え〜あなたを魔王にはさせません!〜  作者: ねこおう
第4部 クズ達のレクイエム編(タイトル変更)
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319話 待っていた依頼

 マルコギルドは威張るだけで役に立たないクズ冒険者の排除をギルド総出で行なった。

 それを知っているサラ達は、彼らがギルド職員にうまく誘導された、実質的にはギルド側に不要と判断されて所属を解約させられた者達だと確信する。


「そうですか。ともかく、神官が必要なら他を当たってください」


 だが、彼らは元マルコギルド所属、しかも無能のギルマスことゴンダスがギルマスだった時代に冒険者になった、いわゆるG世代であった。

 それで諦めるほど聞き分けがいいはずもない。

 

「おいブス!お前生意気だぞ!お前らランクはなんだ!言ってみろ!俺達はCランクだぞ!」


 強そうに見えないリオを見て自分達の方が絶対ランクが上だと思ったらしく、更に態度をデカくする。


「Cですが、それが何か?」


 サラから予想外の答えを受け、彼らは一瞬黙るがサラが嘘を言っていると思ったようだ。


「嘘つけ!じゃあ、カード見せてみろ!」

「おうっ」

「さっさと出せよ!このブス!」

「てめえもだ!ガキ!」

「お断ります」

「てっめえ!」


 パーティの一人がサラに殴りかかろうとしたところで、遅まきながらギルド職員が止めにやって来た。

 

「ギルド内でのケンカはやめてください!」


 ギルド職員の言葉を聞き、手をあげようとしていた男が慌ててその手を下ろす。


「ケンカなんてしてねえだろう。なあ?」


 その男がサラに話を合わせろ、とでもいうように下手くそなウィンクを送る。

 もちろん、この失礼極まりない男達にサラが話を合わせてやる義理はない。

 ただ、サラが口を開く前にリオが口を開いた。


「この人がサラに殴りかかろうとした」

「て、てめっ!」

「あのっ、この人達の強引な勧誘で困ってましたっ!」


 リオの後にアリスも続く。


「て、てめえらっ!」


 更にサラがダメ押しをする。


「本当に困ってました。この人達はギルドの規則を全く理解できていないようです。適性検査を受けた方がいいと思います」


 サラ達の言葉を聞き、ギルド職員がそのパーティに冷たい視線を送る。

 彼らは慌てて言い訳を始める。


「ちょ、ちょ待てよ!」

「誤解だ!誤解!」

「そ、そうだっ、コイツらはよ、ちょっと俺らの話を誤解してんだ!」

「ぐふ。誤解しようがないぞ」


 ヴィヴィも話に加わる。


「黙れ!棺桶持ちが!」


 ギルド職員は彼らの言い訳を聞いても表情を緩めることはなかった。


「あなた方は“先ほど”注意した時も同じような事を言っていましたね」


 どうやら彼らはアリスにちょっかいをかける前にも同じような事をしていたようだった。


「へ、へへっ」

「なんかよっ、俺達の話って誤解されやすいみたいだなっ」

「おうっ、困ったもんだぜ!」


 そのパーティの面々は自分達の非を認めず、愛想笑いで誤魔化そうとするが、当然通じるはずもない。

 ギルド職員が冷たい声で言った。

 

「ーーやはり、あなた方が私どものギルド、セユウ所属になるのは難しそうですね」


 どうやら彼らのパーティはマルコギルドを解約されてからどこのギルドにも所属できておらず、このギルドに話を持ちかけていたようだった。


「ちょ、ちょ待てよ!」

「そんな事言うなよ!俺達はCランクだぞ!」

「おうっ。それによっ、言われた通りちゃんと結果出すからよっ」


(この人達、ランク以外誇るものがないのかしら……いえ、ないから今もどこにも所属できていないのよね)


 ギルド職員がため息をついて言った。


「次、同じような事がありましたらあなた方のカードに不名誉な記録が残ることになりますので十分注意してください」

「わ、わかってるぜっ」

「おうっ」

「今度からはよ、誤解されないように話すぜ!」


 そう言うと彼らは最後まで自分達の非を認めず逃げるようにギルドを去って行った。



「ご不快な思いをさせて大変申し訳ありません」


 ギルド職員はサラ達に振り返ると去っていった冒険者達に対する態度とは打って変わってとても丁寧な言葉遣いとともに頭を下げた。


「いえ。あなたのせいではありませんので」

「そういって頂けますと助かります」

「いえ、本当の事ですから」

「では、どうぞこちらへ」

「はい……え?」


 サラは何故呼ばれたのかわからないが、そのギルド職員の後をリオがついていくのでサラ達も後についていく。

 その様子をじっと見つめるパーティがいた。

 それも二組。

 その一つはマルコからリサヴィを追ってきたブラックリスト上位ランカーで占めるBランクパーティだった。



 ギルド職員はリサヴィを応接室に案内して、一度部屋を後にする。

 そこへ、女性のギルド職員がお茶とお菓子を持って来た。

 どちらも高価なもので明らかに高待遇である。

 しばらくして先程のギルド職員が手に書類を持ってやって来た。

 その書類をリオ達の前に置く。


「そろそろこちらに来る頃だと聞いておりましたので取り揃えて待っておりました……リサヴィの皆さん」


 ギルド職員が置いた書類、それはすべてリッキー退治の依頼書だった。


「「「「……」」」」

「どれからお受けになりますか?」


 ギルド職員はリサヴィがこれらの依頼を受ける事を全く疑っていなかった。

 サラは内心焦る。


(まずいわ!これっ、マルコの二の舞になるんじゃないの!?このままズルズルとセユウに滞在するなんてことになるかも!絶対断らないと!!)


「あのっ……」


 サラが依頼を断ろうとしたが、


「じゃあこれ」


 とリオが依頼書を指差すのが早かった。


「ちょ、ちょっと待っ……」

「承知致しました!すぐに処理いたしますのでカードをご提示願いますっ」

「はい」

「「「……」」」


 リオがカードを出すのを見てサラは渋々カードを出すのだった。



 ちなみに彼からセユウ所属にならないかと熱心に誘われたがそれは断った。



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