315話 インターミッション その3(アリス視点)
わたしはアリス。
ジュアス教団第三神殿所属の二級神官ですっ。
わたしは今、リサヴィというパーティの一員として旅をしてますっ。
わたしがこのパーティに入ったのはリーダーのリオさんがわたしの勇者だと思ったからですっ。
そのリオさんとはレリティア王国の街、マルコで出会いましたっ。
リオさんの事は会う前から噂を耳にしていましたっ。
あの六英雄の一人、ナナル様の弟子で“鉄拳制裁”の二つ名を持つサラさんが勇者だと思っている人だっていう噂ですっ。
サラさんがショタコンでその趣味で連れ回しているって噂もありましたが、リオさんはショタと呼ばれるような年には見えなかったのでサラさんに勧誘を断られた人達が逆恨みで悪い噂を流したんだって思ってました。
でも、パーティに入ってからヴィヴィさんにショタコンは真実だと知らされましたっ。
マルコでは酷い目に遭いましたっ。
マルコのギルマス、無能のギルマスことゴンダスがギルドの規則を破って低ランクの私達を無理やり魔物討伐に参加させたんですっ!
その討伐隊の一員にリオさんもいましたっ。
リオさんのパーティ、リサヴィのメンバーであるサラさんとヴィヴィさんはわたし達とは別の依頼、魔の領域攻略組に回されましたっ。
これは無能のギルマスに意見したサラさんへの嫌がらせだっていうのがもっぱらの噂でわたしもそう思ってますっ。
この依頼中、わたしは魔法を授かりましたっ。
リオさんの怪我を治すために必要な魔法をっ。
本来、神官が使用する神聖魔法は眠っている時に授かるものなんですっ。
それを戦いの中で授かったことで確信したんですっ。
リオさんがわたしの勇者だとっ!
結局、この二つの強制依頼は多くの犠牲者を出して失敗しました。
わたしが当初入る予定だったパーティも全滅してましたっ。
無能のギルマスはこの大失態で規則破りがギルド本部にバレてギルマスをクビになりましたっ。
ざまあみろですっ。
……あれ?
でも、もしこの依頼がなければわたしはリオさんのパーティに入る事はなかった……?
いえっ、そんな事はないですっ!
リオさんはわたしの勇者なんですからきっとパーティに入ってましたっ!!
この後、無能のギルマスの不正が次々と明らかになって、それに加担していたギルド職員も処分されましたっ。
さあ、ベルダに向かおう、ということになったのですが、
あ、ベルダには六英雄の一人のユーフィ様がいるんですっ。
サラさんが会いたいらしくてっ、わたし達には特に目的もないので行く事になったんですっ。
しかし、マルコのギルド職員のモモさんにあの手この手と引き止められてズルズルとマルコに滞在することになってしまいましたっ。
その手段の一つがリッキー退治ですっ。
リオさんは親の敵でもあるかようにリッキー退治の依頼があると受けちゃうんですっ。
それをモモさんが知ってあちこちからリッキー退治の依頼をかき集めて来るんですっ。
モモさんになんでわたし達を引き止めるんですかって聞いたらっ、無能のギルマスのせいで信用を失ったマルコ復興のためっていうんですけどっ、ちょっと信じられないですっ。
やっぱりリオさんを狙っているのかもしれませんっ。
リオさんは強いしカッコいいですっ。
そうっ美形なんですっ。
何故最初気づかなかったのか不思議ですけどっ、でもそれはわたしだけじゃなくてっ、ほとんどの人が気づいていませんっ。
もちろん、わたしより前から一緒に旅しているサラさんやヴィヴィさんは知っていますっ。
サラさんなんか時折っ、リオさんの事を魔物が獲物を猟るときのような目で見ている時があるので油断できませんっ。
ヴィヴィさんに聞くと今までもそうだったそうで、サラさんが襲う前にヴィヴィさんが阻止していたらしいですっ。
それを聞いてわたしもサラさんをしっかり見張ることにしましたっ!
ではヴィヴィさんはどうかというとっ、常に仮面をつけていて表情は読めませんがっやっぱり油断出来ませんっ。
ヴィヴィさんから妙な気配を感じる時があるんですっ。
でもそれは当然ですよねっ。
リオさんはカッコよくて強いんですっ。
モテない方がおかしいですっ。
でもわたしは負けませんっ。
「恋愛に出会う順番は関係ない」って一級神官のダッキア様も言ってましたっ。
もちろん、そんなリオさんに問題が一つもないわけじゃないですっ。
わたしの名前を間違えて呼ぶんですっ。
もしかしてわたしのことを嫌ってるのではっ?と思った事もあるんですけどっ、そうならパーティに入れてくれるわけないですよねっ。
一級神官のフラース様に「気にしなくていい」と言われましたしっ、ダッキア様からも「それも愛情表現の一つよ」って言われたんですっ。
男性経験豊富なダッキア様がいうんだから間違いないですっ。
でもやっぱりちゃんとアリスと呼んでほしいですっ。
問題点はもう一つありましたっ。
リオさんはたまにズレた事を言うんですっ。
でもそれは以前一緒に旅してたナックさんという魔術士の影響らしいのでリオさんのせいじゃありませんっ。
それに被害を被るのはだいたいサラさんですしっ。
パーティ以外でリオさんがカッコいいと気づいているのは一緒に依頼を受けたサキュ……、リトルフラワーの方達くらいですねっ。
あの人達は皆快楽都市ヨシラワンで働いていたことがあって、そっちのテクは凄いっていう話なので一緒に行動してる時は必死にわたしがリオさんを守ってましたっ。
あ、サラさんも神官になる前はそっちの仕事をしてたって話もありますねっ。
本人は必死に否定してますけどっ、その必死さが返って怪しいですっ。
やはり一番のライバルはサラさんですねっ。
それにしてもサラさん人気はすごいですっ。
サラさんは普段は戦士の格好でフードを深く被って顔を隠してるんですけどっ、何かの拍子にサラさんだってわかるとっ次々に冒険者達が勧誘にやって来るんですっ。
ギルドの規則には既にパーティ入りしているメンバーの勧誘は禁止っていうのがあるんですけどっ彼らは全くお構いなしですっ。
誘ってくる人達が皆、何故か自信満々で偉そうなのも不思議でしたっ。
冒険者ランクがわたし達より上の人達もいましたがみんなリオさん達より弱いんですっ。
口だけの人ばっかりでビックリでした。
そんな彼らに悪口言われても平然と聞き流しすわたしのリオさんは流石ですっ。
きゃっ、わたしのだなんてはしたないわよっアリスっ。
……こほん。
わたしは冒険者になったばかりだったので冒険者は皆あんな感じなんだっ、って思ってたんですけどヴィヴィさんにサラさんの特殊能力、クズコレクターのせいだって教えられて納得しましたっ。
サラさんの師匠のナナル様は冒険者として旅していた頃、悪党を片っ端から倒していたという話を聞いた事がありますっ。
でも、自分の足で悪党を探して回るのは大変ですよねっ。
それでナナル様はなんやかんやして自分の元に悪党を引き寄せる能力を身に付けたんだと思いますっ。
それをサラさんに伝授したんですけどっ、サラさんはうまくコントロールできずに中途半端なクズを引き寄せてしまうんだと思いますっ。
サラさんは必死に否定しますけど間違いありませんっ。
きっとナナル様にこの能力は強力過ぎるので秘密にするように口止めされてるんだと思いますっ。 水臭いですっサラさんっ。
サラさんに一番執着していたのがカリスっていう人でしたっ。
ウィンドっていう有名なパーティの元メンバーでしたっ。
賞金首であり、リオさんの親の仇でもある金色のガルザヘッサを倒すまで一緒に行動していたらしいのですがっ、何故か自分がサラさんの勇者だと思い込んで追い回し、最後にはストーカー登録までされたにも拘らず追ってきたんですっ。
そんなカリスと出会ったのは魔の領域の消失と共にカシウスのダンジョンが現れ、その探索のために集まってきた冒険者達の勧誘が酷くなったマルコを脱出してベルダへ向かう途中でしたっ。
カリスはサラさん本人の口からストーカーと呼ばれたのに信じないんですからもはやまともな思考ができないんでしょうねっ。
その時はサラさんがカリスをあっさりKOして逃げたのですが、再び出会ってしまいしました。
カリスは無謀にもリオさんにサラさんをかけて決闘を申し込んだんですっ。
それっ、結果を見るまでもないですっ、ってわたしが思っているとっ、リオさんもそう思ったようで決闘を拒否しましたっ。
代わりにヴィヴィさんが戦う事になりましたが、予想通りカリスをあっさり倒しましたっ。
決闘中に奇行に走るし本当にこの人Bランク冒険者っ?って疑うほどの弱さでしたっ。
これ以上関わりたくないと思っていたヴィヴィさんはカリスの右腕、右足を砕いて再起不能しましたっ。
わたしとサラさんなら治す事は可能ですけどごめんですっ。
全く反省してないですしっ。
あの怪我では流石にもう追ってくる事はないでしょうっ。
たぶん……。
こうしてわたし達は旅を続け、レリティア王国王都セユウに到着したのですっ。
目的地のベルダはセユウの更に先にありますっ。




