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311話 同じ過ちを繰り返す

 ストーカーパーティは夜の警備にまたもやリサヴィの持ち場へやってきた。

 最初にやって来たのは戦士だった。


「おいおいっ酷いぜサラ!俺の話だけ聞かねえとはよ!」


 今までは出来るだけ関わらないように避けていたが、流石に警備をサボるわけにはいかない。

 サラは仕方ない、という表情を隠す事なく戦士に答える。


「聞くだけ無駄ですし、休憩時間を無駄にしたくなかったのです」

「ひっでえなぁ。まあ、俺達のパーティはもう終わりだからよ。これが終わったら今後のことを話そうぜ」


 戦士もまた他の二人と同様に根拠ない自信でリサヴィに入れると思っていたようだ。

 サラは彼の“独り言”をスルーし、当然の質問をする。


「何故あなたはここにいるのです?早く自分の持ち場に戻って下さい」

「はははっ大丈夫だ。俺がいなくてもちゃんと警備してるさ。それでよ……」

「抜け駆けするな!」

「そうだぞっ!」


 リーダーと盗賊までもがお互い睨み合いがらリサヴィの持ち場へやって来た。

 

「おいっサラ!俺のパーティ入りの話……」

「俺が先だ!」

「残念だったな。俺が今話したところだ」

「「ざけんな!」」


 ストーカーパーティが言い争う様子をサラは冷めた目で見ながら言った。


「遊んでないで自分達の持ち場へ戻りなさい」


 サラの声に反応したのはリーダーだ。

 意味もなくキメ顔をして言った。


「大丈夫。今日も奴一人で十分だ」


 リーダーの言っていることが理解できずサラは首を傾げる。


「奴とは誰の事ですか?」

「何言ってんだよ。大ポカした魔術士の……」

「彼なら夕方村に立ち寄った商隊と共に村を去りましたよ」

「「「は?」」」


 サラの言葉にストーカーパーティの面々が揃ってアホ面を晒す。


「まさか知らなかったのですか?」

「っていうか、何で今までいない事に気づかないんですかねっ?」


 サラとアリスが呆れた表情をするなかで、ストーカーパーティは慌て出す。


「そういや、見てねえぞ!」

「そんな話聞いてねえ!」

「あの野郎!依頼ブッチして勝手に出て行きやがった!」


 サラはため息をついた。

 

「彼はあなた達のパーティを抜けたのでしょう。もう依頼は関係ないでしょう」

「ざけんな!」

「おうっ、抜ける事は認めたが依頼放棄は認めてねえ!」

「だな!あの野郎!ギルドに報告してやるぞ!」

「「だな!!」」


 三人が魔術士をとっちめようと団結したがサラが水を差す。


「それは無理でしょう」

「な、なに!?」

「あなた達が受けた依頼は村と直接交渉したものです。ギルドは関係ありません」

「「「あ……」」」


 三人が再びアホ面を晒す。

 

「それに彼は村長にきちんと話して了承を得てましたよ」

「なんだと!?」

「なんでサラがそんなこと知ってんだ!?」

「あなた達が愚行を諦めた後にやって来たのです」

「あの野郎!一緒の部屋の俺達を無視してサラにだけ挨拶して行ったのか!」

「許せん!」

「何を言ってるんですか。彼は言ってましたよ。村を出ていく事をあなた達に話したら『うるせえ、勝手にしろ。寝てんだから起こすんじゃねえ』と言われたと」

「お、俺じゃねえぞ!誰が言いやがった!?」


 とリーダーが残り二人を睨むが、向こうも睨み返して否定する。

 サラはため息をつく。


「あなた方三人に、です。それで私達のところに挨拶しに来た時に伝言を頼まれたのです。もし覚えていなかったら伝えてくれ、と」

「「「……」」」

「ともかく、今、あなた方の持ち場には誰もいませんのですぐに戻ってください」

「「「よしっお前に任せたっ!」」」


 ストーカーパーティの言葉は見事にハモり、しかも指差した相手は見事に重ならず、うまい具合にひと回りする。

 彼らは互いに睨み合いながら見張りをなすりつけ始めた。


「俺はリーダーだぞ!」

「もう解散が決まってんだ!そんなの関係ない!」

「ああ、その通りだ!」


 ストーカーパーティがリサヴィの持ち場で騒ぐ事に我慢できず、ヴィヴィが口を出す。


「ぐふ。全員出ていけ。バカ共」

「誰がバカだ!」

「俺達の事に口を出すな!」


 サラは呆れた。

 

「……どの口が言うのかしら」



 結局、誰も持ち場に戻らず、時が過ぎてリサヴィの持ち場にリッキーが現れた。


「リオ、使いますか?」


 サラがスリングと弾をリオに見せる。

 

「うん」


 リオはそれらを受け取るとスリングに弾をセットし、ゆっくり回しながら歩き出す。

 

「はあ?スリングだあ?お前、舐めてんのか?なあ、サラ」

「……」


 盗賊は心底バカにした顔をリオに向けてそう言うと同意を求めるようにサラを見た。


「……」


 彼はリオをバカにするのに夢中でスリングの持ち主がサラである事に気づいていなかった。

 リオはといえばそんな野次で心を乱されるような繊細な神経など持っていなかった。

 自然体でリッキーに狙いを定めると弾を放った。

 続けて合計五発放ったところでリオは戻ってきた。


「どうでしたっ?」

「アリエッタ、聞くまでもないだろうっ!」


 リオより早くリーダーがバカにしたような顔で答えた。

 それに戦士が続く。


「おうっ。あんな適当に放って当たるわけない!」

「それにスリングって、原始人かよ!なあ、サラ!」


 盗賊はスリングに嫌な思い出でもあるのか、相変わらず言葉が酷かった。

 リオは彼らを気にする様子もなく結果を答えた。

 

「五体倒したら逃げていった。何体かは向こうの畑に行ったね」


 リオの言う“向こう”とはストーカーパーティの持ち場である。

 目がいいはずの盗賊を始め、ストーカーパーティの誰もがリッキーの動きを把握できていなかった。


「はあ?」

「何ってんだお前。適当な事ばっか……」

「口ではなく、手を!足を動かしなさい!」


 サラがストーカーパーティの言葉を遮り、怒鳴りつける。

 ストーカーパーティが唖然としたまま動こうとしないので更に叫んだ。

 

「畑が荒らされるでしょう!さっさと持ち場に戻りなさい!」

「「「は、はひっ!」」」


 ストーカーパーティは慌てて持ち場に戻っていった。

 結局、ストーカーパーティはリッキーに畑を荒らされた挙句、一体も倒すことが出来なかった。

 更に付け加えると畑を荒らしたのはリッキーだけでなく、リッキーを追い回したストーカーパーティもだった。

 彼らの方が畑を派手に荒らして村人達の怒りを買った。

 彼らは前回の失敗から何も学んでいなかったのである。



 翌朝。

 ストーカーパーティは再び出禁をくらい、村人達に文句を言いながらも村を出ていった。

 彼らがいなくなるとリッキー退治の依頼は順調に進み、二日後に依頼は完了した。


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