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310話 リサヴィの新リーダー?大いに語る

 ストーカーパーティがリサヴィの部屋に押しかけて来てから三十分後、リーダーが一人でやってきた。

 何故か当然のようにノックもせずにドアを開けようとして鍵が閉まっているのに気づいてからノックする。

 しかも、

 

『おいっ、何故鍵を閉めている?俺だ。話があるから開けろ』


 と無作法に対する謝罪の言葉がないどころか、上から目線で命令してくるのだった。

 サラ達は当然無視。

 しかし、


『おい、こら開けろ。大事な話がある』


 とノックと掛け声を繰り返し、最後には、

 

『いいのか?畑の警備の話だぞ。後で困るのはお前達だぞ!』


 と脅しまがいの事を言い出したので仕方なく、ドアを開けた。

 すぐに後悔した。


「というわけで俺は今のパーティを解散してお前らのパーティに入ることにした」

「「「「……」」」」


 サラ達には何が「というわけ」なのかさっぱりわからないが、リーダーがその説明をする事はなく、不機嫌な顔をするサラ達を見てトンチンカンな事を言い出す始末であった。


「いや、お前達の言いたいことはわかる。いきなりリーダーが変わることに不安を覚えるんだろう。だが、安心しろ。今まで通りちゃんと平等に扱う事を約束する!」

「「「「……」」」」


 どうやらストーカーパーティのリーダーはリサヴィに入るだけは飽き足らず、リサヴィでもリーダーをするつもりのようだった。


「その意気込みやよし!」


 などと思う者は当然いなかった。

 サラが面倒くさそうに新リーダー?に尋ねる。

 

「あなたが『畑の警備で話がある』と言ったので仕方なくドアを開けたのです。バカな話をするだけならさっさと帰ってください」


 サラのキツイ言葉に新リーダー?は全く堪える様子はなかった。


「おいおい、サラ。パーティ編成が変わるんだ。警備の見直しが必要だろう?」

「は?」


 サラがバカを見える目を新リーダー?に向けるがそれに全く気づいた様子はない。


「しっかりしてくれよ。お前の勇者になる俺に恥をかかせんな。わはははっ」

「「「……」」」


 何がおかしいのか新リーダー?が豪快に笑う。

 サラ達が沈黙を保つのをいい事に新リーダー?は話を進める。


「俺が加わってリサヴィは五人になる。そこで今後の隊列だが、そうだな、今まではどうだったか知らんが最初は前衛が俺とサラ、真ん中が棺桶持ちとアリエッタ、そしてリッキーキラーを後衛とする。だが、これは決定ではないぞ。冒険しながらその都度修正していくし、役に立たん奴は容赦なくパーティ追い出していくからな!覚悟しておけよ!わははは!」


 新リーダー?は好き勝手な事を言うとまたも豪快に笑うが、あっと何かに気づいた表情をする。

 リサヴィ入りを認められていない事に気づいた、わけではなかった。

 彼の中ではリサヴィ入りは確定事項だったからだ。


「悪い悪い。その前に明日からの畑の警備の話だったな。いやいや、その前に部屋割りも再考する必要があるな。いやあ、リーダーになってやる事山積みだな!わはははっ!」


 新リーダー?の頭の中は春満開のようだった。


「「「……」」」

「俺もリサヴィのメンバー、それもリーダーなんだ。リーダーの俺だけ別の部屋ってのは変だな」


 そう言ったあと、新リーダー?がニヤリと笑った。


「よしっ、リッキーキラー!今日からお前は俺の部屋を使え!俺がお前のベッドを使ってやる!」


 新リーダー?の発言に反論する者はいなかった。

 新リーダー?の言葉にみんな納得したから、と言うことは当然のことながら全くなく、呆れ果てて突っ込む気力がなかったのだ。

 その事に全く気付いていない新リーダー?は名指ししたリオから返事がないので怒鳴りつける。

 

「リーダーの命令を無視するとは何事だ!」


 新リーダー?が怒りの表情をリオのベッドに向けた。

 リオはいつの間にか横になり、壁側に顔を向けて寝ていた。


「って、何寝てやがる!!」


 新リーダー?は無反応のリオに怒りで体を震わせ、顔を真っ赤に染める。


「リッキーキラー!リーダーの言うことを聞きやがれ!さっさとベッドから降りろ!俺がそこを使うっ!」


 しかし、リオは身動きしない。

 新リーダー?は実力行使に出ようとリオのベッドに向かって歩き出した。

 が、


「ぐへっ!?」


 新リーダー?の行動を遮り、悲鳴を上げさせたのはヴィヴィのリムーバルバインダーだった。

 リムーバルバインダーを新リーダー?の正面から叩きつけそのまま押す。

 ヴィヴィは手加減したため新リーダー?は大きな怪我は負っていないが、鼻血を出していた。


「何しやがる!痛えだろ!棺桶持ちぃ!!」

「……」


 ヴィヴィは無言のまま新リーダー?をリムーバルバインダーで押すのを止めずドアの方へ追いやる。


「こ、こら!やめろ!リーダーの命令だぞ!!サラァ!!その棺桶持ちをやめさせろ!!」


 もちろん、ヴィヴィはやめないし、サラも新リーダー?の命令を無視。

 サラは無言で新リーダー?の横を抜けてドアを開けると、ヴィヴィがリムーバルバインダーで新リーダー?を部屋の外へ押し出した。

 ヴィヴィは新リーダー?の言葉を忠実に守り“役立たず”を追放したのだった。

 すかさずサラがドアを閉め、アリスがドアの鍵を閉める。


 どんっ!どんっ!どんっ!!

 

 リサヴィの新リーダー?もとい、ストーカーパーティのリーダーが激しくドアをノックする。


『おいっこらっ!開けろ!サラァ!アリエッタァ!』


 「誰がアリエッタよっ」とアリスが外に聞こえない程度の大きさで呟く。


『リーダーにこんなことしていいと思ってんのかぁ!?後でお仕置きだぞ!すっごいのを食らわせてやるぞ!いいのか!?今ならまだ許してやるぞ!!』

 

 まだリサヴィのリーダーだと思い込んでいるその妄想力はストーカーランク一位であるカリスに対抗できるほどの素質を持っているかもしれない。

 流石、ストーカーパーティのリーダーと言ったところであろうか。

 リーダーの喚き声が彼のパーティに気づかれないはずもなく、ドアの外からメンバーとの言い争いが聞こえた。

 

『てめえ!何抜け駆けしてんだ!』

『てめえが言うな!』

『おうっ、その権利は俺だけだ!抜け駆けすんなよクズリーダー!』

『誰がクズだ!!』

 

 しばらく彼らの言い争いが聞こえていたが、やがて静かになった。



 リーダーが追い出されてから三十分後、再びドアが叩かれた。

 言うまでもなくストーカーパーティ最後の一人、戦士である。

 ドアを叩く音は彼のパーティに気づかれないようにするためだろう、遠慮のある小さな音だった。

 

『サラ、話がある。大事な話だ』


 しかし、サラ達はドアを開けなかった。

 

『おいサラァ。アリエッタでもいい。ここを開けてくれ。本当に大事な話があるんだ』


「誰がアリエッタよ」とアリスが小声で呟く。


 やはり、サラ達はドアを開けない。

 もう「大事な話」には騙されない。


『おい、いいのか。後悔するぞ。警備に関する重要な話なんだ』


 それでもサラ達はドアを開けない。

 「警備」の話もそもそも警備する場所が分かれているのだから相談することなどないし、あっても警備の時にすればいいだけだ。



 何を言ってもドアは開かず、返事もないので戦士は焦り始める。

 ドアを叩く音は次第に大きくなり、更にサラの名を叫び出したのでストーカーパーティの他のメンバーに気づかれた。

 ドタドタと足音をさせながらドアの外にストーカーパーティが集まって来た。

 

『『抜け駆けすんな!』』

『お前にだけは言われたくねえ!!』


 ドアの外でしばらく言い争う声が聞こえたが、やがて静かになった。



 その後も、ストーカーパーティメンバーは入れ替わり立ち替わりリサヴィの部屋の前にやって来ては騒いだが無視し続けた。

 盗賊はまたも鍵開けしようとしたがヴィヴィがロックの魔法を使ったので再侵入する事は出来なかった。

 リサヴィは彼らと顔を合わせたくないので食事は携帯食で済ませ、警備の時間まで部屋で過ごしたのだった。

 


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