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31話 予期せぬ問題

 宿屋で朝食を取った後、冒険者ギルドへ向かい依頼達成の報告をする。

 サラはデイスが落としたプリミティブを証拠として提示した。

 受付嬢はプリミティブを魔道具“鑑定くん”に乗せる。

 鑑定くんはどこの冒険者ギルドにもあるもので、どんな魔物のプリミティブかと価値を調べる事ができるのだ。

 魔物の正体がデイスと知り、驚きの表情をする。


「悪霊の正体はデイスだったんですね!?」

「はい。全てデイスでした」

「合計五体ですか。Fランクでは厳しかったのではないですか?」

「そうですね。でも運良く各個撃破できましたし、二人で協力してなんとかなりました」

「そうですか」


 受付嬢はその言葉を謙遜だと思ったが余計なことは言わず作業を続ける。


「……はい。確認いたしました。後は屋敷の確認がございます」

「いつ頃結果が出そうですか?」

「その事なのですが、大変申し上げにくいのですが今担当の者が出かけておりまして、早くて三日後になります」

「三日後ですか?」

「申し訳ございません」

「もしかしてブレイクさんですか?」

「はい。悪霊系は他の者では万が一の場合対処できませんので」

「わかりました。リオ、どうしますか?」

「ん?」

「後三日ここに留まって結果を待ちますか?それとも結果を待たずに先に進みますか?」

「僕はどっちでもいいけど、あと三日か。宿代がかかるね」


(違うでしょ!あなたは宿代よりもまず先にウィンドとの合流に遅れることを心配しなさいよ!)


 とはいえ、サラはリオはそう言うんじゃないかと思ってワザとウィンドとの待ち合わせの事を言わなかったのだが。

 受付嬢が二人の会話を邪魔してはまずいと思い、控えめに声をかけてきた。


「あの、宿代のことですが、こちらの不手際ですのでギルドで出させて頂きます」

「じゃあ、待ってようよ」


 リオは即答した。


「あなたがそれでいいなら。では、それまで待たせて頂きます」

「わかりました。少々お待ちください」


 そう言って一旦席を離れ、チケット持って戻ってきた。


「取り敢えず三枚ずつお渡し致します。このチケットはギルドと契約しています宿屋で有効で一枚で一泊でき、朝、昼、晩の食事が付きます。今の宿屋はギルドと契約されていますか?」

「はい、ギルドで紹介して頂きました。“歌う橋”です」

「では大丈夫ですね。あと湯浴みとかのオプションはご自身でのお支払いとなりますのでご注意ください」

「わかりました」


 サラは二人分のチケットを受け取ると、声を小さくして受付嬢に尋ねた。


「あの、」

「はい?」

「この依頼を出した方は?」

「……えーと……その、この依頼は依頼者の情報開示をしておりませんので……」

「今更ですか?」

「……すみません」

「いえ、ではいいです」

「……すみません」


 受付嬢は本当に申し訳なさそうに頭を下げた。


(こういうお仕事も大変ね。同僚の失敗に頭を下げないといけないなんて)



「さて、どうしましょうか。今日すぐに結果が出るとは思っていませんでしたが、あと三日……また依頼を受けますか?」

「うん、そうしよう」


 リオはすぐに依頼掲示板へ向かおうとするのをサラが止める。


「どうしたの?」

「依頼を受けるのは明日にして今日はゆっくり休みましょう。きちんと休養をとることも大事ですよ」

「わかった」


 リオは特に考える様子もなく即答した。


「ただ、宿屋に戻る前に買い物をしたいので付き合ってもらえますか?」

「わかった」


 リオはどこへ行くのかも確認せず即答した。


(よくいえば素直、悪くいえば何にも考えてないのよね……)



 サラ達が向かった先は冒険者の装備、主に防具を扱っている店だった。


「いらっしゃい。ーーおや、神官の方が珍しい。ああ、そのお若い冒険者の付き添いですか」

「いえ、私の装備を整えようと思いまして」

「そうなんですか。いや、しかし神官様の装備となりますとあまりご用意しておりませんが」

「大丈夫です。普通の冒険者の装備を買いにきましたので」

「え?そうなの?」


 その言葉にリオが反応した。


「ええ。どうやら今は神官の冒険者が少なく神官服で歩き回ると目立ちすぎるのです」


 サラは神官というだけで立て続けに厄介ごとに巻き込まれたので流石に懲りたのだ。

 神官は神官服を着なければいけないという規則はない。


(私は出来るだけ目立たないように行動したいのよ。私には大事な使命があるのだから)


 サラは店内をじっくりと見て回った。


「これらをお願いします」


 サラが選んだのは革鎧に厚めのズボンと一般的な冒険者の格好だ。


「かしこまりました。サイズの調整はよろしいのですか?」

「大丈夫です。自分でできますので」

「承知いたしました」

「リオ、あなたはいいのですか?自分に合った剣を選ぶなら武器屋にも寄りますよ」

「僕はこのままで大丈夫だよ」

「そうですか。そうですね、その装備は借り物でしたね」

「うん」



 宿屋に戻るとリオがヴィヴィにギルドでの出来事を話した。

 ヴィヴィもリオ達の依頼の結果を一緒に待つとのことだった。

 サラは内心舌打ちをしながらも購入した装備の調整をはじめる。

 装備を身につけては具合を調整する。


「どうですか?」


 サラは結構上手く出来たと満足し、感想を尋ねる。

 たがすぐに聞く相手が悪かったと気づく。


「ん?何が?」

「ぐふ?」

「……この装備のことです」

「神官には見えないね」


 空気の読めないリオはリオは思ったことを口にした。


「でしょうね。そうじゃないと困るわ。そうじゃなくて……いえ、もういいです」


 そこでリオはサラが何を求めてるのか気づいた、と思った。


「ああ、そういうことか」

「わかりましたか。こんな事最初に答えてほしかった……」

「やっぱりサラは男だったんだね」

「……」

「ぐふ!」


 ヴィヴィが笑ったのだとサラは確信する。


「……リオ、なぜそうなるんです?」

「今のサラはどこから見ても男だよ。胸もない……」


 リオは不意に下を向いた。

 サラに殴られたのだと気づく。


「なんで僕殴られたのかな?」

「馬鹿なことを言ったからです」

「ぐふ。木を隠すなら森の中。まな板を隠すなら男の中か」

「なんですって?」

「まな板?」

「……」


 サラは無言で再びリオの頭を小突く。


「なんで僕殴られたのかな?」

「もういいです」


 サラはリオの質問に答える事なく使わなくなった神官服を畳んでリュックにしまった。


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