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307話 望まぬ共闘

 ストーカーパーティが村に賠償金を払い、雰囲気が和らいだところでサラがストーカーパーティに言った。


「疑問も解消した事ですしお引き取りください」


 もちろん、彼らは引き下がったりしない。

 予定外の出費を強いられた上、サラを仲間に加えるという目的も達してしないからだ。


「そう言うなってサラ」

「お前はリッキーの野郎がまた襲って来ると思ってんだろうが、俺達は今まで森にいたが全く姿を見てねえし、気配も感じてねえぞ」

「仮にだが、逃げ出した奴らがいたとしてもよ、もう森の奥へ逃げたんじゃないのか?」


 ストーカーパーティのみがうんうん、と頷く。

 サラは否定しなかった。


「その可能性はあります」

「だろ?」


 サラは得意顔になるストーカーパーティを冷めた目で見ながら言った。


「しかし、それ以上にあなた方が森にいたから警戒して出てこなかった可能性のほうが高いです」

「「「なっ……」」」


 彼らはその可能性を全く考えていなかったようだが、魔術士だけは気づいていたようで全く表情を変えなかった。

 サラは続ける。


「リッキー達は畑を荒らす前にあなた方をどうにかしないといけませんからね」

「ぐふ。わかったらさっさと出てけ」


 ヴィヴィが彼らに冷たく言い放つ。

 しかし、彼らはどこまでもゴーイングマイウェイであった。

 まさに自由な冒険者の鏡であった。

 リサヴィにとって迷惑以外の何者でもなかったが。

 またもやリーダーがサラ達の想像を超えた事を言い出す。

 

「つまり俺達と共同戦線を張ろう、と言うことだな!」

「……は?」

「……ぐふ?」


 サラとヴィヴィだけでなく、村人達も唖然とした中で、


「よっしゃー!」

「やったるぞ!」

「今度こそ本当の力を見せてやるぜ!」

「……」


 と魔術士以外のメンバーが奇声を上げる。

 そこへストーカーパーティがやって来て揉めているとの連絡を受けた村長がやって来た。


「あなた方は出禁に決まりましたので即刻出て行ってください!」


 村長の厳しい表情を見ても彼らは平然としていた。


「いや、そのことだがな、さっき賠償金を払ったところでな」

「……賠償金、ですか?」


 村長は不信感丸出しの表情で村人達から報告を受け、その賠償金の額、主に魔術士のだが、を見て先ほど村人達が見せたように驚いた表情を見せる。

 村長も先ほどの村人達と同様に怒りのトーンが下がる。


「……まあ、反省して頂いたようですからすぐに出ていけとは言いませんが、用が済んだら出て行ってください」


 サラとヴィヴィはこの言葉を聞いて嫌な予感がした。

 その予感は当たり、リーダーが調子に乗る。

 

「おうっ、実はな、今話し合って、俺達もリッキー退治に協力することになった」

「「おうっ」」

「……は?」


 村長は呆けた顔を一瞬したあと、真偽を確かめようとサラに顔を向ける。

 サラは首を横に振る。


「彼らの妄想です」

「おいおいっ、そりゃねえだろうサラ!」

「そうだぜっ。俺達だって反省してんだ。だから賠償金だって払っただろ!」

「アンタらは大して払ってないだろ!全員足してもこの魔術士さんの十分の一にもならん!」

「本当だぜ!」


 村人達の突っ込みにリーダーは鼻で笑う。

 その態度から言葉とは裏腹に反省など全くしていないことは明らかだ。


「そりゃそうだろう。畑に大損害を与えたのはこいつなんだ。俺達は自分でやった分を払ったんだ」

「むっ……」


 確かにリーダーの言う事も一理あるので村人達は口籠る。


「まあ、いい。村長さんよ、俺達にもう一度チャンスをくれねえか?次は失敗しねえ」

「おうっ、俺達はダンジョン攻略ばっかりやっててな。こういうのに慣れてなかったんだ」

「だがもう大丈夫だ!俺達はCランク冒険者だ!同じ過ちはしねえぜ!」

「そ、そう言われましても……」


 村長は助けを求めるようにサラを見る。


「私達は依頼を受ける身ですから決めるのはあなた方です」

「そ、そうですか」

「ただし、仮に彼らもリッキー退治に参加することになっても報酬を分けることはありません」

「そんな端金いらねえぜ!」


 依頼主の前で堂々と失礼な事をいう盗賊。

 リーダーはその言葉に村人達が気分を悪くしたことに気づき……いや、正しくはサラが不機嫌な顔をしたので盗賊を注意する。


「おいっ、失礼な事言うな!」

「わ、悪い!」


 盗賊が口だけの謝罪をする。

 戦士はリーダーが盗賊を注意した後、サラにキメ顔をするのを見て対抗意識を燃やした。


「そうだぞ!本当のことだとしても言っていいことと悪いことがあるぜ!なっ?」


 戦士は自爆したことに気付かず、いい事言ったぜ!とサラにキメ顔をする。

 サラは相手するのも面倒臭くなり気づかない振りをした。

 結局、村長は根がいい人なのかストーカーパーティの参加を許可したのだった。



 村人に怪我人がいると聞いて治療に行っていたアリスとその付き添いのリオがサラとヴィヴィのもとへやって来た。

 アリスはストーカーパーティの姿を見て露骨に嫌な顔をした。

 アリスにいち早く気づいた盗賊が満面の笑みで手を振る。


「よっ、アリエッタ、俺達も依頼をやる事になったんでよろしくなっ!」


 アリスは心の中で「誰がアリエッタよ!?」と叫びながらリオの袖をぎゅっと握る。

 その様子を見て盗賊が舌打ちをする。


「なんでこの人達いるんですかっ?依頼を一緒にやるってホントなんですかっ?」


 嫌悪感を隠さずアリスがサラに尋ねると、サラも不満を隠さず頷く。


「そう言うことになりました。依頼主の要望です」

「そ、そうですかっ」


 アリスはそれ以上、文句は言わなかった。


「依頼主の要望ですから一緒に依頼を受けることは仕方ありませんが、持ち場は分けます。私達に指示もしないでください。しても無視します」

「なんだと!?」

「ぐふ。お前達はオマケだ。不満なら今からでも遅くないから出ていけ」

「この、棺桶持ちが!」

「おい、やめろよ。彼らの言うことは正しい」


 魔術士の言葉に盗賊だけでなく、リーダー、そして戦士も納得しなかった。

 

「お前は黙ってろ!俺達の方がランクも経験も上なんだぞ!」


 彼らはリサヴィがDランクだと思い込んでいたがサラ達は訂正しなかった。

 彼らのような身勝手なパーティには何を言っても屁理屈で乗り越えてしまうことをこれまでの経験で知っていたからだ。

 しかし、彼らの仲間であるはずの魔術士は引き下がらなかった。


「それでも失敗しただろ」

「それはお前のせいだろ!」

「そうだ!」

「自分の失敗を棚に上げてサラに格好いいとこ見せようとするな!」

「……そうだな。悪かった」


 魔術士は彼らの集中砲火を浴びて何を言っても無駄と悟り、説得を諦めるとリオに顔を向けた。


「リオ、俺はリサヴィに従う。この依頼はお前らが受けたんだからな」

「そうなんだ」


 リオは相変わらず無表情で返事した。

 しかし、

 

「がんばって」


 とその後に言葉を付け足した。

 その言葉を受け、魔術士は体が、いや、心が震えた。

 その意味を理解する事なく、

 

「あ、ああ。ありがとう」


 と言った。

 そのやり取りに驚いたのはリサヴィの面々もだった。

 他人に無関心のリオが声援を送ることなど滅多にない。


(……この魔術士、何かあるのかしら?もしかしてリオの仲間になる?確かにファイアボールの破壊力から見て腕は確かだわ。それに最初に会った時と今では態度の変化が大きすぎる)


 しかし、サラはこの魔術士を未来予知で見たことがないので確認しようがなかった。



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