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298話 茶番劇の結末

「俺の話を聞きやがれ!!!」


 ドンっ!!と、追放された男が思いっきりテーブルを叩いた。

 

「「……」」


 強く叩き過ぎて追放された男の手が真っ赤に腫れる。

 その甲斐があってサラとヴィヴィは言い争いを止めた。

 そして面倒くさそうに、本当に面倒くさそうに追放された男を見た。


「喧嘩なら俺がパーティに入ってからにしろ!俺も棺桶持ちを追い出すのに協力するからよっ!なっ、サラ!」


 追放された男が腫れた手をぷらぷらさせながらサラにキメ顔をするが、効果はなかった。

 ヴィヴィがため息をついて面倒くさそうに言った。


「ぐふ。いつお前の加入を認めた?」

「ざけんな!さっき決まっただろうが!なあ、サラ」


 追放された男がサラにキメ顔で同意を求めるが、

 

「寝言は寝て言え」


 サラは冷やかな目をしながら否定した。

 

「な……お前らっ!俺はサラのパーティに入る事が決まったよな!?」


 追放された男が観客、もとい、他の冒険者達に声をかけるが冷めた目を含んだ沈黙が返ってくるのみだった。

 困った追放された男は元パーティに助けを求める。


「俺はサラのパーティに入るんだよな!?」 

「「「おうっ!」」」


 元パーティは彼の期待に応えて元気よく返事した。

 サラ達と無関係のパーティの同意を得て、追放された男は勝ち誇った顔をサラに向ける。


「なっ?」


 こいつらの頭はどうなってんだ?


 と思ったのはサラとヴィヴィだけではない。

 他の冒険者達も彼らの思考についていけない。

 サラは彼らがマルコ所属(あるいは元所属)である事を確信するが確認することはしなかった。

 確認行為自体がマルコギルドの印象を悪くすると思ったからだ。

 これはマルコギルドのためではなく、今もマルコギルドに所属している真面目な冒険者達のためである。

 ヴィヴィが追放された男に再び冷たく言い放った。


「ぐふ。寝言は寝て言え」

「なんだとっ!?」

「ぐふ。クズはいらん。さっさとどっか行け」

「だ、誰がクズだ!棺桶持ち風情がいい気になるな!」

「ぐふ。大体、クズパーティからさえ追放されるようなクズを仲間に加えるわけないだろう。いくら頭が悪くてもそれくらい察しろ」


「誰がクズパーティだ!!」と元パーティが喚くがヴィヴィは無視。


「ざけんな!だから追放が間違いだってお前らのパーティに入って証明するんだろうが!」

「ぐふ。勝手に一人でやってろ」

「下っ端のザコがいい気になるんじゃねえ!サラのお陰でCランクまで上がったんだろうが!」

「ぐふ。お前はそのザコ以下だがな」

「ざけんなぁ!棺桶持ちがぁ!」


 追放された男がキレてヴィヴィに殴りかかる。

 が、次の瞬間、

 

「ぐへっ!?」

 

 追放された男がヴィヴィのリムーバルバインダーにぶん殴られて吹き飛ぶ。

 くるくるくる、と宙を三回転してからぼてっ、と落ち、アホ面を晒して気絶した。


「ぐふ。お前がザコであることが証明されたな」


 その様子を唖然とした表情で見ていた元パーティだったが、彼らのリーダーは我にかえるとイヤらしい笑みを浮かべてサラに近づいて来た。


「おいおい、やってくれたなあ、サラ」

「……あなたもバカですか。やったのはヴィヴィでしょう」


 クズコレクター呼ばわりされ機嫌の悪いサラも容赦なかった。

 バカ呼ばわりされリーダーが顔を真っ赤にして怒鳴る。


「誰がバカだ!?ともかくだ!俺達のパーティメンバーをボコってくれたんだ。その責任はリーダーにとって貰わねえとなあ。よしっ、サラ!お前は……」

「私はリーダーではありません」

「俺のパーティに……って、何!?」

「私はリーダーではありません」

「じゃあ誰がリーダーだって言うんだ!?まさかこの棺桶持ちじゃねえだろうな!?」

「リオです」

「ん?」


 依頼掲示板から戻ってきたリオが名前を呼ばれて首を傾げる。


「はあ?リッキーキラーがリーダーだとぉ?がはははっ!笑わせるな!」


 リーダーに倣い、残りのメンバーも「がはは!」と笑う。

 どうやら彼らは本当にリサヴィのリーダーがリオである事を知らなかったようだ。

 このパーティは盗賊の情報収集能力も相当低いようだ。

 リーダーはリオに尊大な態度で言った。


「おい、リッキーキラー!お前んとこの棺桶持ちがうちの大事なメンバーに怪我させやがったんだ!そのお詫びとしてサラを貰うぜ!いや、文句は言わせねえ!」

「元、だからあなた達には関係ないでしょう」


 サラのもっともな意見をリーダーはスルー。

 リオが首を傾げてサラを見る。

 

「このクズ、何言ってるの?」

「誰がクズだ!このリッキーキラーが!!」


 リーダーがキレてリオに殴りかかってきた。

 リオはそれをあっさりと避け、カウンターぎみに隙だらけの腹に膝蹴りを入れる。

 うっ、とリーダーが唸ってかがみ込んだところへ更にその顎を蹴り上げる。

 

「ぐへっ!?」


 装備合わせて百キロは軽く超えるであろうリーダーの巨体がリオの大して鍛えているようにも見えない華奢な足の蹴りで吹っ飛ぶ。

 くるくるくる、と宙を三回転してからぼてっ、と追放された男の上に落ち、アホ面を晒して気絶した。

 追放された男は今の衝撃で一瞬目覚めたものの、すぐまた気絶した。

 

「ぐふ。元パーティのリーダーとやらも同様のザコである事が証明されたな」


 元パーティの残りのメンバーはリーダーまでもがあっさりとやられ、唖然としているとヴィヴィのリムーバルバインダーが彼らの目の前を通り過ぎた。


「ぐふ。まだ文句がある奴はいるか?」

「「ありませんっ!」」


 残りのメンバーはそう叫ぶとリーダー、そして追放された男を置き去りにしてギルドから逃げ出した。

 サラが全く役立たずだったギルド職員を見た。


「私達は被害者です。ですよね?」


 ギルド職員がこくこく、と頷いた。



 リオは何事もなかったかのようにメンバーに声をかける。


「やりたい依頼がなかったから行こうか」

「そうですね」

「はいっ」

「ぐふぐふ」



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