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293話 冒険者達の言い分

 サラが面倒くさそうな表情で彼の言い掛かりに反論する。


「マルコを無茶苦茶にしたのは私利私欲に走ったゴンダス、無能のギルマスと彼に従った者達でしょ」

「ざけんな!お前らが来るまでは全て上手く行ってたんだ!お前らのせいで俺達は所属解約させられるわ!依頼も受けられなくなったんだぞ!」

「おうっ!それにだ!冒険者はランクが絶対なんだ!全てなんだ!それをお前がぶっ壊しやがったんだ!リッキーキラー!」

「ん?」


 冒険者達に睨まれたリオが首を傾げるのを見て彼らの体温が更に急上昇する。


「てっめえ!覚えてないってか!?」

「ざけんなよ!決闘でランク上の冒険者をぶっ倒しただろうが!」

「そうなんだ」


 リオはどうでもいいというような返事をする。

 

「『そうなんだ』じゃねえ!あれでランクが下のくせに俺らに逆らう奴らが出て来たんだ!」

「ぐふ。実力もないのに威張るからではないのか」

「ざけんなっ!ランクが低い奴らは上の者に黙って従えばいいんだ!」


 サラは彼らの言い分に呆れながらも反論する。


「そんな事はリオが初めてではないでしょう」

「それにそんな事言ったら決闘の意味ないですっ」

「うるせい!マルコじゃそれが暗黙の了解だったんだ!」

「そうなんだ」

「リオ、真に受けないで。バカの言う事です」

「なんだと!?」

「お前もだぞサラ!」

「はい?」


 次の標的にされたサラが冷めた目で自分の名を呼んだ冒険者を見る。


「お前がさっさと俺達の仲間ならないからこうなったんだ!」

「そうだ!全てお前が悪い!」

「……」


 冒険者達はサラの沈黙を何故か反省していると思い込み調子に乗り始める。

 

「よしっサラ!反省してんなら今からでも仲間になれ!そうすれば今までの事は笑って許してやる!」


 ヴィヴィによってパーティメンバーが一人死んでいるのだが彼らには笑って許せる程度の事だったらしい。


「よしっサラ!最初の命令だ!俺らの紐を解け!それと奴の傷を治せ!そこの顔だけ神官は使えねえからな!」

「なっ……」


 アリスが顔を真っ赤にして睨むが、アリスはなめられており彼らが怯える様子は全くない。


「おいっ、サラ!早くしねえか!今す……ぐへっ!?」


 戯言が聞くに耐えないとばかりに喚く冒険者の頬をヴィヴィがリムーバルバインダーで殴って黙らせる。

 その冒険者は顎が砕かれ、涙目でのたうち回る。

 その様子を見てもう一人の冒険者は自分の立場を思い出し、静かになった。

 それを確認してヴィヴィが尋ねる。


「ぐふ。私達のせいで依頼を受けられなくなったと言ったな。それはどういう意味だ?」


 ヴィヴィは仮面を被っているので表情は読めないが、口調から機嫌が悪い事はわかった。

 いや、顔が見えなくてもヴィヴィの行動をみればすぐわかることではあったが。

 唯一無傷の冒険者はヴィヴィに怯えながらもそれを気付かれまいと虚勢を張って答える。


「コバン……じ、事後依頼だ!事後依頼が拒否されるようになったんだ!」


 冒険者の言葉にアリスが首を傾げる。


「事後依頼って、依頼を受ける前に依頼をこなす事ですよねっ」

「ええ。何故事後依頼が禁止になったことが私達のせいなのかはわかりませんが、そもそも事後依頼自体そんなにある事ではないですし、それほど困る事ではないでしょう」

「ざけんな!」


 サラ達はサラの正論のどこに彼が怒っているのか全く理解できなかった。

 そのやり取りを静観していたランが話に割って入る。


「サラ、サラ」

「はい?」

「彼らは“コバンザメ”ができなくなったって言ってるんだと思うよ。途中まで言いかけてたしね」

「コバンザメ?」

「他の人が受けた依頼にくっついて行くだけで一緒に依頼をこなしたと言い張ってね、報酬を掠め取ることらしいよ」


 サラがもう何度目かという呆れ顔をしながら確認のためにその冒険者を見ると、その冒険者は顔を真っ赤にしながらも睨み返して怒鳴る。


「ざ、ざけんなっー!俺らは手助けしてやってんだ!感謝されこそすれ文句言われる筋合いはねえ!」


 サラがジッとその冒険者の目を見ると心が読まれるとでも思ったのか、さっと顔を逸らした。


「……なるほど。ランの言う通りのようですね」

「完全な逆恨みですっ」

「ぐふ。呆れてものも言えんな」

「なんだと!棺桶も……ひっ!?」


 冒険者の鼻先をリムーバルバインダーが通り過ぎる。


「ぐふ。もういい。お前らの馬鹿話は聞き飽きた。それで誰の指示だ?誰がリオを殺すように命じたのだ?」

「……」

「ぐふ。Aランクの魔物まで操って、いたのかは知らんがともかくだ、あんなものをこんなところへ運べるのだ。ただ者ではないはずだ」


 冒険者は沈黙したまま答えない。


 ヴィヴィのリムーバルバインダーが再びその冒険者の鼻先を掠めた。

 

「ひっ!?」

「ぐふ。喋りたくないなら他の者に聞くだけだ」

「は、ははっ!他の者だと?誰にだよ!?お前がみんなボコってまともに話せるのは俺だけだぞ!」


 ヴィヴィの言葉に強気に出る冒険者。

 だが、


「ぐふぐふ」

「な……今笑いやがったな!?何がおかしい!?」

「ぐふ。こんな事もあろうかとこちらには神官が二人いるのだ。喋るまで代わる代わるボコる、治す、のコンボを食らわせてやろう」

「な、な……」

「ヴィヴィ、私達は尋問するためにいるわけではありません」


 本当は拷問と言うのがピッタリ来るのだが、その言葉に抵抗を感じて言い換えたのだ。

 最も、受ける側としては言葉を変えた所で内容は変わらないのだが。

 その冒険者はヴィヴィの脅しに屈した。

 

「わ、わかったっ!言う!言うからっ!」

「ぐふ。さっさと言え」

「俺達に依頼してきたのは……う……!!」


 その冒険者の言葉が途中で止まった。

 どうしたのかと見ていると突然、苦しみ出し、顔色が、いや体全体がドス黒く変わっていく。

 それは彼だけではなかった。

 既に死んでいる冒険者を除いて他の冒険者達も苦しみ出したのだ。

 

 サラは危険を感じ叫ぶ。


「みんな離れて!アリス!こっち来て!二重にエリアシールドを張るわ!」

「わ、わかりましたっ!」


 サラの言葉に危険を察して皆が冒険者達から離れる。

 サラが自分を中心に冒険者達を囲むようにエリアシールドを張る。

 そしてサラのそばにやって来たアリスが自分とサラだけを囲むエリアシールドを張った。

 間一髪だった。

 冒険者達の肉体が四散し、黒い、霧のようなものを撒き散らす。

 その黒い霧はサラとアリスの張ったエリアシールドの間に挟まれた空間を漂っていたがしばらくして消えた。

 慎重に二人はエリアシールドを解除した。

 先ほどの黒い霧が危険なものだったかはわからないが、少なくとももう危険はなかった。



「これどうする?」


 そばにやって来たリオが冒険者の中で唯一残った死体を指差す。

 自爆攻撃?は生きている者にだけ発動するようで既に死んでいた冒険者には何も起きずそのまま残っていた。

 

「……十分注意しながら埋葬しましょう」

「わかった」


 結局、誰がリオを狙ったのかは分からずじまいであった。

 こうして、またもやリサヴィに関わったパーティに不幸が訪れたのだった。

 ……自業自得ではあるが。



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