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277話 ニューズのレベルアップ

 リオがガドタークから素材を回収しているところへ盗賊のリイがやって来た。


「リオ、お前凄いな」

「ん?」

「ガドタークを一発で仕留めただろ」

「そうなんだ」

「いや、そこは『そうなんだ』じゃないだろ、って、まあいいや。しかし、見事だよな。傷は額だけ……って、もしかして新米冒険者達が運んでたガドタークってお前が倒したのか?」

「そうだね」


 Fランクの新米冒険者達がガドタークを運ぶ姿を見て密かに嫉妬していたリイだが、それが新米冒険者ではなくリオが倒したのだと知り、内心ホッとする。


「そうかっ……そ、それでなリオ。お前に頼みがあるんだ」

「ん?」

「その……俺に短剣の投げ方教えてくれないかっ?」

「短剣の投げ方?」

「ああ。俺もさ、短剣扱うんだが投げるのは苦手でさ。でもお前のを見て俺もやっぱその技術が欲しくなったんだ」

「そうなんだ……こうだよ」


 リオは短剣を抜くと、すっと放った。

 十メートル程先にある木にドスッ、と突き刺さった。

 予備動作もほどんどなく、リオが投げるとわかっていた盗賊でさえ動きが追えなかった。

 あまりの事でしばらく盗賊は呆然としていたが、リオが解体を再開したのを見て我にかえる。

 

「あー、うん、凄いな。いや、凄いのはわかってんだ。それでな、もうちょっとわかりやすく教えてくれないか?コツとかさ」

「どうだろう?」


 リオが首を傾げる。

 

「いや、『どうだろう』って……」

「僕は教えるのが下手みたいなんだ」

「あ、ああ。今のでなんとなくわかったけどよ……」

「ヴィヴィに頼んでみたら?」

「え?ヴィヴィ?」

「うん。僕はヴィヴィに教えてもらったんだ」

「そ、そうか。ありがと!ヴィヴィに頼んでみるぜっ」


 そう言って盗賊がヴィヴィのもとへかけていった。

 

 

 ガドタークから回収した素材はプリミティブ、爪、牙だ。

 他にも価値ある素材はあるが、まだ小屋にもついていないのだ。

 小屋への到着を優先して歩みを再開した。



 小屋の前には先客がいた。


「……あ、ああ、あ……」

 

 サラ達を見ると喜び?の声を上げた。

 

「ぐふ。これはまたすごいのを引き寄せたな。クズコレクター」

「流石ですっ、サラさんっ。アンデッドまで誘いに来るなんてっ」

「二人とも馬鹿言ってるんじゃないわよ」


 そう、その小屋の前にいたのは二体のゾンビだった。

 服装から判断すると冒険者というよりは盗賊のように見える。

 サラが右手を突き出し、神聖魔法ターンアンデッドを発動させる。

 ゾンビはターンアンデッドを受け、バタバタと倒れた。

 ニューズの面々はそのままその場から動こうとしないサラ達に首を傾げながら尋ねる。


「どうしたんですか?」

「あ、小屋の中に何かいるんですか?」

「まさか、ターンアンデッドが効かないかもって……あっ!!」


 盗賊のリイは自分の発した言葉でじっとしてるサラ達の行動を理解した。

 

「サラさんっ!アレですか?ザラの森にいた寄生虫を警戒してるんですか!?」

 

 リイの言葉にヤック、ソウオンもハッとした表情をする。

 

「ええ。バウ・バッウはザラの森から来たようですからね。寄生虫もこちらに来ている可能性はゼロではありません。とはいえ、大丈夫のようですね」

 

 サラのいう通り、ゾンビ達が立ち上がる事はなかった。

 

 

 小屋の中にもゾンビが三体いたが、アリスのターンアンデッドで倒れ、こちらも起き上がる事はなかった。

 このアンデッド達がいつからいたのか、どこから来たのかは気になったが、考えても無駄なので所持品を回収してから埋葬した。

 アンデッド達のうち二人は冒険者カードを持っていたので少なくともこの二人は冒険者だったようだ。

 名前とかはカードが真っ黒でわからない。

 後日、ギルドで確認してもらうことにする。

 次にしばらく泊まることになる小屋の中を綺麗にする。

 と言ってもサラとアリスが二つある部屋に神聖魔法、リフレッシュを発動してほとんど終わりだ。



「今日はここまでにしましょう」

 

 その言葉を聞いてホッとするニューズの面々。

 ニューズは充実した顔をしていた。

 サラのサポートがあったとはいえ、Dランクの魔物であるガドタークを倒したことが大きな自信になった。

 彼らは自分達の成長が遅いことに焦燥感を覚え、最近は寝不足気味であった事もあり、充実した一日を過ごした事で安心して久しぶりにぐっすりと眠った。

 見張りをブッチするほどに……。

 

 

 次の日の朝。

 

「「「すみませんでしたっ!!」」」


 サラの前に三人の土下座する姿があった。

 言うまでもなく見張りをブッチした謝罪である。

 当のサラは困った顔をしていた。

 彼らは真っ青な顔をしていたが別にサラは怒っていない。

 本当に必要ならぶっ叩いてでも起こしたのだ。

 

「やめなさい。私は別に怒っていませんし、そもそも『寝かせてあげましょう』と言ったのは私です」


 サラの言葉を聞き、ニューズの面々はポカンとした顔をする。

 リーダーのヤックが不安げな顔で尋ねる。

 

「え?でも、サラさんが激怒してるってヴィヴィが……」

「……またですか」


 サラの表情が悪鬼の如き表情に変化する。

 

「「「ひっ」」」


 怯えるニューズを放置してサラがヴィヴィを怒鳴りつける。

 

「ヴィヴィ!!」

「ぐふぐふ」


 罵り合いを始めた二人を呆然と見ていたニューズにアリスが声をかける。

 

「朝ごはん食べますよねっ?リオさんの料理は今日も美味しいですよっ」


 怒鳴り声が響く中で何事もないようにニコニコしたアリスを見てニューズは悟った。

 これがリサヴィの日常なのだと。

 ヤックが言った。

 

「頂きます」



 ニューズは小屋の外に出て唖然とした。

 ガドタークの死体が二体あった。

 

「あの、これは?」

「あ、はいっ。昨夜、サラさんとヴィヴィさんが見張りしている時やって来たみたいですっ」

「そ、そうですか……」


 流石に戦闘していたのに気づかないほど深い眠りについていた事が恥ずかしくなり顔を真っ赤にする。

 

「あっ、でも一瞬で終わったみたいですよっ。わたしも気づきませんでしたっ、えへっ」

「そ、そうですか」


 アリスの照れた姿を見て、先程とは別の意味で顔を赤くする。

 


 小屋の確認、そしてDランクの魔物四体討伐。

 これで依頼を達成したとしてもいいのだが、ニューズはこれで終わりにしたくなかった。

 

「もう少しやりませんか?」

「リオ、どうしますか?」

「ん?」


 サラがリオに尋ねる姿を見てニューズはリサヴィのリーダーがリオである事を思い出した。

 全くそれらしい事をしないのでついついリーダーらしい働きをするサラに聞いてしまうのだ。

 ヤックが慌ててリオにお願いする。

 

「頼むリオ!俺達はもっと強くなりたい。もっと強い敵と戦いたいんだ!」

「ん?強い敵?」

 

 リオが首を傾げる。

 リオの反応に危険を感じたのは長年一緒に行動しているサラだった。

 慌てて補足する。

 

「リオ、この場合の強いとはDランクの魔物の事です。間違ってもバウ・バッウとかCランク以上の魔物ではありません」

「そうなんだ」


 リオの表情に変化はないが、どこかつまらなそうな雰囲気を醸し出していた。

 結局、リオが反対することはなく、その後二日間、小屋の周囲を見回ることにした。

 空いた時間に盗賊のリイはヴィヴィから短剣の投げ方を教わり、リーダーのヤック、戦士のソウオンはサラと剣の稽古をした。

 二日間の見回りでサラ達は更にガドタークを四体、ウォルーを十体倒した。

 ガドタークの一体はリサヴィの力を借りず、ニューズだけで倒したのだった。

 こうしてニューズとの共同依頼は終了したのだった。



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