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260話 新米冒険者強化研修

 マルコギルドへの依頼登録は回復してきてはいるものの、以前には程遠く、マルコギルドの信頼回復が急務となっていた。

 ギルドの信頼回復の障害となっているのはマルコギルド所属冒険者の質の悪さだ。

 特にG世代、とギルド職員達が陰でそう呼んでいる、無能のギルマスこと、ゴンダスがギルマスであった時代に冒険者になった者達にその傾向が顕著に見られた。

 ギルド職員が内々に作成したブラックリスト上位をこのG世代が占めている。

 彼らはランクに見合った実力を持っておらず、素行も最悪だった。

 ギルドの規則は守らない、あるいは知らず、更には一般常識も欠如している者もおり、どうしてギルド入会試験を、特に筆記試験を合格出来たのかと首を傾げる者ばかりであった。

 その疑問はゴンダス達が隠し持っていた空欄が大半を占める回答用紙を押収したことで明らかになった。

 彼らはゴンダス達と冒険者になった折には一定金額を納めるとの約束をして合格になっていたのだ。

 ギルドは彼らに再試験を実施しようとしたが、彼らは「陰謀だ!」「捏造だ!」などと言って不正合格を認めず、必死に抵抗している。

 ギルド側も不正にグズンなどのギルド職員が関与していた負い目があるため強く出れないでいた。

 ただ、彼らは証拠が残っているだけまだマシであった。

 回答用紙が残っていたのはゴンダス達への合格報酬未納の者達だけで、既に支払った者達の回答用紙は処分され残っていなかったのだ。



 マルコギルドを再生するにはまともな冒険者を増やす必要があるのだが、今のマルコギルドに所属しようとするものはほとんどいない。

 たまにマルコ所属になりたいという者が来たかと思えば、前のギルドを追い出されたブラックリストに載った者達に匹敵するクズであった。

 現在所属するクズ冒険者達の更生も望めない以上、時間はかかるものの新たにマルコギルドで冒険者なった新米冒険者を正しく育て、彼らを中心にマルコを立て直すのが最善の策と思われた。

 そのため、モモから新米冒険者強化研修の提案を受けたニーバンは二つ返事で快諾したのだった。



 ニーバンはモモから新米冒険者強化研修の指導員をリサヴィが快諾したとの報告を受けていた。

 ニーバンは半信半疑の目をモモに向ける。

 彼は冒険者達の噂、モモとサラが仲がいいという噂をまったく信じていなかったのだ。

 ニーバンはモモに再度確認する。


「本当の本当にリサヴィは、サラはOKしたのか?」

「はい」


 モモは笑顔で答えた。

 一番の難関はリサヴィがOKするかだったのだが、モモは上手く説得できたと言うのでその言葉を信じる事にする。


「では進めてくれ」

「承知しました」



 モモが通常、パーティメンバー募集を貼り出す掲示板に一枚の紙を貼り出した。

 その場にいた冒険者達はすでにパーティを組んでおり大して気にも留めなかった。

 しかし、

 ふらりとギルドにやって来たパーティが依頼掲示板を見て、その少なさか、内容か、それとも両方か、ともかく「ふっ」と鼻で笑った。

 だが、興味本位でパーティメンバー募集の掲示板を見に行って顔色を変えた。


「マジかよっ!?」


 パーティの一人が思わず声を上げたことで最初からギルドにいた冒険者達も何事かとメンバー募集の掲示板に向かい、彼らと同様に驚いた。

 モモが張り出したもの、それは新米冒険者強化研修の募集であった。



 伸び悩んでいるマルコギルド所属のFランク冒険者よ、

 先輩方に学び、レベルアップを目指そう。


 研修日時 別途連絡 一泊二日 (キャンプ)の予定


 場所 マルコの街周辺


 指導員 リサヴィ(掲載時点の冒険者ランクは全員C)


 募集定員 二名


 応募条件 以下の条件を満たしている者

 

 ・マルコギルド所属であること

 ・冒険者ランクがFランクであること

 ・パーティに入っておらずソロ活動している者

 ・研修後、最低一年間はマルコギルドに所属する意思のある者

  (参加時にサインをいただきます)


 応募方法 お手数ですが、各自で紙をご用意していただき、

      名前、冒険者番号、冒険者ランク、志望動機を記入の上、カウンター横の応募箱にお入れください


 応募締め切り 〇〇


 なお、応募人数が定員を超えた場合は選考とさせて頂きます。

 (選考基準はお教え出来ません)



 言うまでもなく、冒険者達が驚いたのは指導員がリサヴィ、鉄拳制裁サラのいるパーティだったからだ。

 しかもいつの間にかCランクに上がっているのを知り、根拠のない自信でサラを勧誘する気でいたDランクパーティが悲鳴を上げるのだった。



 マルコの街の至る所でサラが新米冒険者研修を行うことが冒険者達の話題に上がっていた。

 以下はある酒場での冒険者達の会話だ。


「ランク記入する欄あっただろ」

「おうっ、それがどうした?」

「お前、馬鹿正直にDランクって書かなかっただろうな?」

「はあ?書いちゃ悪いのかよ?」

「馬鹿野郎!引っ掛け問題に引っかかりやがって!」

「何!?そりゃどういうこった!?」

「この研修はFランク限定なんだぞ!」

「マジか!?ちっくしょー!やられたぜ!」

「ははは、全くお前はツメが甘いな!」

「て事はお前……」

「おうっFって書いたぜ!サラは俺が貰ったぜ!」

「くっそー!!」


 本気で悔しがり、本気で勝ち誇った顔をするがもちろん、そんなわけはない。

 どちらも等しく落ちるのだった。



 更に別の場所。


「お前ら申し込んだか?」

「サラが参加する例のアレか?」

「おうっ」

「お前な、ちゃんと募集要項読んだか?応募できるのは冒険者ランクFだぞF」

「知ってるぜ」

「お前確かDだよな?なんだいつの間にFまで降格したんだ?」

「ざけんな!そんなヘマすっかよ。……俺はな、頭を使ったんだぜ」

「ほう。ない頭を絞ったか」

「ぬかせ!」

「で?何やったんだ?さっさと話せよ」

「そうだな。もう締め切ったみてえだから真似される事もないからな。話してやるよ」

「だから勿体ぶらずにさっさと話せって」

「ははは……俺はな、サラ以外のメンバーを煽てて研修に加わる作戦に出たんだ!」

「「……」」

「なんか言えよ。『流石だな』とか『頭いいな!』とかよっ」


 煽てると言った戦士が勝ち誇った顔を皆に見せるが、


「……ちっ、やっぱみんな考える事は同じかよ」

「だな」

「な!?お前らもかよ!?」

「当然だろ!」

「ちなみに俺はリッキーキラーに憧れてる、って嘘書いちまったぜ!」

「お前馬鹿だな」

「うるせえ。俺だってあんな奴に媚びたくねえが手段を選んでられねえんだよ!」

「そうじゃねえ!“様”を忘れてるぞ!“様”をよ!俺はちゃんとリッキーキラー様って書いたぞ!」

「あっ!!」


 指摘された方は本気で驚いた顔をして悔しがる。


「ははは。ちなみに俺は棺桶持ちに興味あるから棺桶持ち様の活躍を間近で見たい、って書いたぜ!」


 別の戦士がそう続く。


「くっそー!」


 様を書き忘れたのが自分だけとわかりその戦士は本気で悔しがる。

 様をつけた戦士達がニヤリと笑う。


「どっちが選ばれるか勝負だな!」

「おうっ!」


 当然、どっちも選ばれる訳がない。

 彼らはリッキーキラーや棺桶持ちが蔑称である事に気づかない、その程度の知能の持ち主だった。


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