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228話 ガブリム退治 その3

「ガブリムロードがいますわ」


 誘拐された女性達から話を聞いていたリリスがそう断言した。


「ま、そうだろうな」

「なんとなくそう思ってたよ」


 リリスの言葉にマウとジェージェーは驚かなかった。

 リリスの言葉を聞くまでもなくそう思っていたようだった。


「ん?」

「彼女達が見たんですかっ?」

「いえ、彼女達が”まだ無事“だったからです」

「……そうですか」

「ん?」

「リオは深く考えなくていいです」

「そうなんだ」


 ガブリムロードが誕生していると統制が取れており、獲物は無傷でガブリムロードへ献上するのだ。

 リリスが真剣な表情で言った。


「リサヴィの皆さんは彼女達を連れて街へ引き返して下さい。後は私達だけでやりますわ」

「そうだな」

「うん、もう十匹倒したし、ロードがいるんじゃ最初の話と違い過ぎるしね」


 サラはリトルフラワーが常識的な考えを持っていることに失礼ながら驚いていた。

 今まで出会った者達ならとっとと自分達だけ逃げ出すか、サラ達を全面に押し立て、何もせずに報酬だけ掻っ攫うような者ばかりだったからだ。

 もちろん、サラはそれを顔に出す事はなく、口にすることもなかった。

 そう、サラは。


「リトルフラワーの皆さんって男グセが悪い以外は常識を持って……いたいっ!痛いっ!痛いですっ!」


 アリスがリリス、マウ、ジェージェーの三連打を受けて頭を抱え、涙目で抗議する。

 

「酷いですっ。さっきははっきり言っても怒らなかったじゃないですかっ」

「うん、まあ、そういうこともある。勉強になったな!」

「なったですわね」

「なったね!」

「ううっ……」



 サラが自分の意見を述べる。


「こんなことを言うと怒るかもしれませんがあなた達三人では厳しいと思います。誤解のないように言っておきますが、あなた方の腕を信じていないわけではありません。相性の問題です」

「今のあたいらのパーティには魔法を使える奴がいないって事だろ?」

「はい。そもそもこの依頼を私達に協力を頼んだのは魔法を使うガブリムがいる可能性があったからでしょう?」

「「「……」」」

「普通のガブリムが使う魔法ならなんとかなるかもしれません。しかし、ガブリムロードが魔法を使えたらそれを防ぐのは厳しいでしょう」

「でも街に戻ってる時間はありませんわ」

「リリスの言う通りだ。時間がねえ」

「うん。私達が倒しちゃった奴らが戻って来ないから討伐隊が近くにいる事に気づいて逃げ出すかもしれない」

「それにこの方達の村がまた襲われるかもしれませんわ」

「ええ。ですから私も行きます」


 サラの言葉を聞き、リトルフラワーの面々は驚いた表情をする。


「いいのですか?」

「そりゃ助かるけどほんとにいいのか?」

「そうだよ、危険だよ?」

「私の事は心配いりません。それに彼女達の護衛はリオ達がいれば十分でしょう」


 リリスはサラ、そしてアリスが今までの神官とは違うのだとはっきりわかった。

 リリスの神官嫌いはそう簡単に変わるものではないが、少なくとも女神官はすぐに差別するのはよそうと思った。

 話がまとまりかけた時、サラの提案に反対する者が現れた。

 リオである。


「僕は行くよ」

「リオ!?」

「僕、まだロード見てないし」

「またそんな事を……」


 サラの話はまだ途中だったが、それをジェージェーが遮った。


「ちょっと待って!誰か来る!」

「新手のガブリムか!?」

「違う、人だ。冒険者だね……無警戒すぎるから低ランクだね」


 ジェージェーの盗賊としての腕は確かなもので、やって来たのはEランクのパーティだった。


「あれ!?リオ!ヴィヴィ!リサヴィの皆さん!?」


 それは以前、マルコの南の森で一緒に薬草採取をしたニューズだった。

 

「こんなところで何をしているんですか?」

「ガブリム退治」


 リオから出た魔物の名を聞き、驚いた表情をする。


「ガブリム!?」

「え?ええ!?ここっ、ガブリムいるんですか!?」


 リオがガブリムの死体を指差す。

 

「げっ!?これがガブリム!俺、初めて見た。確かDランクの魔物ですよね?」

「そうみたいだね」

「ぐふ。お前達は何しに来たのだ?」

「薬草採取の依頼を受けたんです」

「ぐふ。好きだな薬草採取」

「べ、別にそういうわけじゃない!」

「俺達だって他の依頼を受けたかったんだけどなかったんだよ!」

「初めて遠出したってのにさっ!」

「それは残念でしたわね」

「ええ……!!」

「そう……!!」

「!!」


 ニューズの面々は周りが美人だらけである事に今更ながらに気づき急に緊張してきた。

 サラに絡んでくる冒険者達なら図々しく、更にカッコつけて見境なく口説こうとするだろうが、彼らは女性経験が少なく、自分達がこの場にいるのが不釣り合いに思えて居心地が非常に悪かった。


「ぐふ。なら丁度いい。お前達に依頼をしたい」

「え?依頼?」

「ぐふ。この者達を街の教会まで護衛してくれ」


 ヴィヴィがリリスの後ろに隠れるように立っていた怯えた様子の女性二人を指差す。

 その様子から何が起きたのか察した。


「ついでにギルドに寄ってガブリムロードがいると伝えてよ」


 ジェージェーがそう付け加える。


「ええええ!?ガブリムロード!?」

「ぐふ。私達はこれからロード退治をしなくてはならない。彼女らの護衛報酬だが、リトルフラワーが出す」


 ヴィヴィがそう言ってリリスを指差す。

 丸投げされたリリスは苦笑する。


「お願いできるかしら?」


 美しいリリスに笑顔で頼まれれば断れる男はそうはいない。

 

「「「はいっ!」」」


 ニューズは二つ返事で了承したのだった。

 


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