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226話 ガブリム退治 その1

「それで依頼とはなんですか?」


 サラの質問にリリスが答える。


「私達が受けた依頼はガブリム退治ですわ」


 その名を聞き、サラ、アリスが嫌悪の表情を見せた。


「ガブリム?」


 リオはその魔物の名に覚えがなく、首を傾げる。


「ベルフィ達と旅しててガブリムと遭遇した事はなかったのですか?」

「さあ?」


(……見た事あっても覚えていない、という可能性もありますね)


「魔物の中じゃ雑魚だ雑魚」


 マウが何でもないよう言った。


「しかし、油断できない相手です」

「そうなんだ?」


 サラは嫌そうな顔でリオに説明する。

 

「……ガブリムにメスはいません。繁殖のために他種族の女性をさらってくるのです」

「ん?それってみんなハーフガブリム?いや、違うか」

「どの種族からでも生まれてくるのはオスのガブリムです」

「そうなんだ」

「そ、捕まったりしたらガブリムなんか産まされることになるからなぁ、女は誰も依頼を受けたがらないぜ」


 マウが笑いながら言った。


「あなた達は平気なのですか?」

「ええ。一応断っておきますが、ガブリムの子を産みたいわけではありませんわよ。アレは存在自体が邪悪な生き物ですわ。全て抹殺すべきですわ。それもできるだけ早く」


 そう言ったリリスは一瞬憎しみを込めた表情に変わった。

 サラはもしかしたらリリスは知り合いがガブリムの犠牲になったのかもしれない、と思ったが、それを口にすることはなかった。


「それには私も同意見です」

「ぐふ。数は?」

「見つかった巣はまだ小さいものらしく十匹程度という話ですわ」

「と言うことはロードは生まれていないですね」

「私もそう思いますわ」

「いたらCランクの依頼じゃねえしなっ」

「それもそうですね」

「ロード?ガブリムロード?」


 リオの疑問にサラが答える。


「ガブリムロードとはガブリムの上位種で、共食いによって生まれると言われています」

「うっ」


 アリスは想像してしまったのか気分を悪くし、顔を青くする。


「そうなんだ」

「ガブリムの見た目はどれも同じですが、その能力は母体となったものの能力を強く引き継ぎます。ガブリムロードは食らったガブリムの能力を引き継ぐため非常に強力です。ちなみにガブリムはDランクにカテゴライズされていますが、ガブリムロードはBランクです」

「あれ?Dランクの魔物なのにCランクの依頼なんだ」

「はい。先ほど言いましたがガブリムは母体になったものによって能力が異なります。実際に戦ってみないと強さがわからないのです。魔法を使う個体などがいるかもしれないので余裕をみて依頼ランクを上げているのです」

「そうなんだ。それでなんでロードがいないと思ったの?」

「ガブリムは群れの数が三十匹を越えると本能的に強力なリーダーを欲するそうです。そのとき群れの中の実力者達が殺し合いを始め、生き残ったものが負けたもの達を喰らい、ロードに進化すると言われています」

「なるほど。数が少ないからロードがいないと思ったんだ」

「はい」

「面白いね」

「リオさんっ面白くないですっ」


 すかさずアリスがリオに突っ込む。


「ま、うちらだけで楽勝なんだけどね〜」


 ジェージェーがお気楽そうに言った後、リオと目が合い、

 

「もっと楽に越したことはないけどねっ」


 と色目を使って訂正したが、その視線をアリスが体を張ってブロック。

 ジェージェーとアリスが睨み合う。


「どうでしょう。依頼を手伝っていただけますか?」


 リリスがリサヴィの面々を見る。


「僕はいいよ。ガブリムと戦ったことないし」

「私もです。ガブリムは放っておけません」

「ぐふ」

「わ、わたしはリオさんについていきますっ」

「ありがとうございます、皆さん」


 こうしてリサヴィはリトルフラワーと共にガブリム退治をすることになった。



 翌朝、リサヴィとリトルフラワーはギルドを訪れた。

 リサヴィがリトルフラワーが受けたガブリム退治の依頼に参加するための手続きをするためである。

 ギルドから正式に依頼を受けないと報酬の金はリトルフラワーから分けてもらうことは出来てもギルドポイントが入らないからだ。

 サキュバスという悪名で知られたリトルフラワーが有名である事は言うまでもなく、先日、ちょっとした騒ぎになったリサヴィ(と言っても主にサラであるが)が一緒にやって来たので、ギルドにいた冒険者達の注目を一身に浴びる。


「なんでサラがサキュバスと一緒にいるんだ!?」

「おいおい、リッキーキラーの奴、ハーレムじゃねえのか!?」

「あの野郎!美人に囲まれて昨日はお楽しみってか!」

「見ろよあの顔!あの野郎、まだ“賢者モード”じゃねえか!」


 リリスがカウンターでガブリム退治にリサヴィも参加できるよう手続きを進めている間、そんな話声が聞こえて来た。

 リオが無表情なのはいつものことなのだが、リオをちゃんと見てる者などいないのでそう思い込んだのだ。

 アリスが文句を言いたそうな顔をしていたが、当のリオが全く気にしていない(気づかない?)ので我慢した。


(ああいう輩には言わせておけばいいのよ。アリスにも注意しておいたほうがいいかしら)


 このときのサラはまだ人の心配をする余裕があった。


「そう言えばよ、一時期ヨシラワンでサラ、っていう娼婦を街中で大声出して探し回ってた奴がいたって話だぜ」

「な……」


 サラはそのバカに心当たりがあった。


(バ・カリスめ!)


 そう、サラはヨシラワンに滞在していたとき、サラのストーカーであるカリスから逃げ回っていたら、なんとカリスは街中でサラの名を叫んで回ったのだ。

 カリスは遊郭の中でもサラの名を大声で呼んでいたため、その様子を見ていた者達はカリスがサラという名のお気に入りの娼婦を探していると思い込んだのだった。

 サラが怒りに体を小刻みに震わせる。

 拳をぐっと握り必死に平静さを保とうと努力する。

 サラに話が聞こえているとは知らずに彼らの話は続く。


「流石に本人じゃないだろ」


(本人だけど娼婦じゃないわよ!)


「でもよ、サキュバスと仲がいいってことはよ……やってたんじゃないか?」

「マジか!?何でだ!?金に困ったのか!?」

「ショタに飽きて気分転換じゃねえか」

「いや、案外、ヨシラワンのあの雰囲気に飲まれたんじゃないか?実際よ、俺の知り合いが……」


 冒険者達は言いたい放題でサラは怒り心頭であった。

 くだらない事を話す者達を殴り倒したい気分であった。

 無意識にリオに視線を向けるが、残念ながらリオが失言をする気配はない。

 

(……って、何を考えてるよ私!リオがバカな事言ったら注意するのに紛れて八つ当たりしようなんて私らしくないわ!全然私らしくないわ!それにリオは勇者、魔王になるのよ!)

 

「ぐふぐふ」


 どこかバカにしたような呟きがサラの思考を中断させた。

 すかさずヴィヴィを睨むが、ヴィヴィはスルー。

 そこへサラの手をぎゅっと握る者がいた。

 アリスだった。

 

「サラさんっ、押さえてくださいっ」


 サラは少し落ち着きを取り戻すと共にアリスに逆に心配され、ちょっと落ち込む。


「ありがとう、大丈夫よ」

「誰が何と言おうと今のサラさんはもう卒業し……痛いですっ」


 アリスがサラにどつかれたのだ。


「酷いですっサラさんっ」


 アリスの抗議をサラは無視。

 だが、少しスッとしたサラである。


(今のは決して八つ当たりではないわ。アリスが失礼な事を言うから注意しただけ。そう、それ以外の意図は全くないわ!)


 サラが誰かに言い訳しているうちにリサヴィの依頼受領処理が完了した。


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