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222話 女パーティからの誘い

「さあ、サラ姉様!悪臭は去りました!」

「やっとお話が出来ますね!」

「いえ、私は……」

「ぐふ。話を聞いてやるくらいいいではないか。女冒険者からの誘いなど初めてだろう」

「あんた話がわかるじゃないか!」

「棺桶持ち……もしかして、あんたもうちらのパーティに入りたいのか?あんたが女なら考えてやっても……」

「ぐふ。無理だ」


 ヴィヴィは即、否定する。

 その返事に女パーティの面々はヴィヴィが男だと勘違いした。

 リーダーがアリスに視線を向ける。


「そこの神官のあなた」

「えっ?わたしですかっ?」

「ええ。あなたも私達のパーティに入りたいなら考えてもいいわよ」


 アリスは首を横に振る。


「いえっ、私はリオさん一筋ですのでっ!って、きゃっ」


 そのアリスの挙動を見て女パーティの一人がぼそりと呟いた。


「噂通り頭足りなさそう」

「しっ」

「あ、わりい、何でもねえから!」


 女盗賊の失言を女戦士が慌ててフォローするが、アリスが目に見えて不機嫌な顔になる。


「しっかり聞こえてましたよっ!リオさーんっ」


 とアリスがリオに抱きつく。

 ピンチ?をチャンスに変えるアリスであった。



「誘って頂きましたが、私はすでにパーティに入っておりますので無理です」


 サラは、勘違いが起きないようにキッパリと断った。

 しかし、それで相手が素直に諦めたことなど一度もないし、今度もそうだった。


「サラ姉様は間違っています!」

「ええ、間違っているわ」

「そのとおり、サラ姉様は間違ってるぜ」

「……えーと、それは一体どう言う意味ですか?」

「見てわかるだろ?」


 そう言った女戦士をはじめ、女パーティがリオを見る。

 

「ん?」


 リオが女パーティの視線を感じ首を傾げる。


「リオがどうしました?」

「何気づかねえフリしてんだよサラ姉様」

「ソレはもうショタという年じゃないだろ」

「な……」

「ぐふっ!」


 サラは明らかに笑ったと思われるヴィヴィを睨みつける。

 そんなサラをリーダーが諭し始める。

 サラがショタコンである事を前提に。


「みんな成長するんですよ。みんないつかショタを卒業するのです」

「その点、女いつまでも女だよ!男と違っていい匂いするよ!サラ姉様もいい匂いする!」

「は?」

「お前はちょっと黙ってような」

「むぐっ!?」


 女盗賊の口を塞ぐ女戦士。


「色々誤解があるようですが、ともかく私は今のパーティを抜ける気はありません!」

「……わかりましたサラ姉様」

「やっとわかっていただけましたか」


 サラはここまで来るのに精神力を相当削られたので、少し嫌味を込めて言うが、彼女らは本当の意味では勿論わかっていなかった。


「仕方ないわね。ほらっ」


 リーダーが女魔術士に合図を送る。

 女魔術士は覚悟を決めたような表情でサラを見た。


「あの、サラ姉様、これは流石に卑怯だと思ったのでこの手だけは使いたくなかったのですが……実は私には今年十歳になる弟がいるんです!」

「ぐふ!」


 女魔術士とサラの冷たい視線がヴィヴィに向けられる。


「……ぐふ。済まなかった。私の事は気にせず話を続けてくれ」

「あの、それがどうかしたのですか?」


 サラの問いに答えたのは空気が読めない事には定評のあるリオだった。

 

「サラがショタコンだからじゃな……」


 リオの言葉は途中で途絶え、不自然に下を向く。

 サラに殴られたと悟る。


「僕、なんで……」

「私はショタコンではありません」


 そのやり取りを少し怯えた表情で見ていた女魔術士が恐る恐る言う。


「あの、うちの弟、病弱なので暴力はやめてくださいね」

「しませんよ」


 サラの返事を聞いてホッとする女魔術士。


「あのっ、それでどうでしょうか?」

「何がですか?」

「私の弟、姉の私がいうのもなんですが、結構可愛いと思うんです!」

「……それで?」

「その、彼より若いですよ?」


 彼とはもちろんリオのことだ。

 ヴィヴィが肩を震わせているのを冷めた目で見ながらサラはキッパリと言った。

 

「私の話、聞いてましたか?私はショタコンではありません!」

「そ、それはもちろんわかってますサラ姉様」

「ええ、公然の秘密だって事はみんなわかっていますサラ姉様」

「秘密以前にデマです」


 しかし、彼女らは諦めない。


「でもよ、やっぱりパーティ組むなら女同士が一番だぜ」

「そうだよ。男が“二人も”いたらいつ襲われるかとおちおち寝てられないでしょ」

「二人?」


 サラはヴィヴィを見るが、ヴィヴィは無言を保ち、自分が女であることを公表する気はないようだった。

 サラの沈黙を肯定と受けとり更に追い討ちをかける女パーティの面々。


「寝るときだけじゃない。水浴びだって気にすることないぞ」

「ベッドだって一緒だよ!なんならトイレだって……」

「は?」


 サラがさっきからおかしな言動を繰り返す女盗賊の少女を見ると女戦士がその口を塞いでいた。


「もうお前は一生黙ってろ!」

「むぐ?むぐ!?」


 サラは彼女らは同性愛者なのでは?との疑念を抱いた。

 よくよく見れば彼女達のサラを見る目がどことなく妖しい気がしてきて知らず身震いする。

 そんな事に気づかず女パーティは猛アタックを続ける。


「私達のパーティに来てくださいサラ姉様!」

「な?いいだろう?」

「見ての通り私達のパーティには神官がいないんです!私一人じゃ回復追いつかないんです!」


 サラはゆっくり首を横に振る。


「神官が必要ならパーティメンバー募集の掲示板を見るなりしてフリーの方と交渉して下さい」

「そうですか。わかりましたサラ姉様」

「ああ、私もわかったぜサラ姉様!」

「今度こそ本当にわかってくれましたか?」

「ああ。あんた、手順にこだわるんだな」

「は?手順?」

「よしっ、サラ姉様!メンバー募集に張り出されるのを待ってるからすぐ処理しに行ってくれ!」

「……ぐふ。今日二度目か」


 ヴィヴィの呟きはサラは我に返る。

 サラには何が二度目なのかわからないが、馬鹿にされていることは間違いないのでヴィヴィを睨みつけるが、ヴィヴィはスルー。


「……何度も言いますが、私は今のパーティを抜けません。諦めてください」


 サラはげんなりして言った。


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