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187話 ハーレムパーティ?

 リサヴィはギルドを出ると武器屋に向かった。

 先の戦いで失ったリオの剣とヴィヴィのリムーバルバインダーを新調するためだ。

 リオは剣にこだわりがなかった。

 武器屋に入ってすぐ目に入った剣を手に取ると二、三回振って「これでいいや」と一分もかからず決まった。

 問題はヴィヴィである。

 今回の戦いは金色のガルザヘッサとの戦い以来の損害であった。

 リムーバルバインダーひとつとその中の武器を丸々失ったのだ。

 だが、予想通り武器屋にある魔装具はフェラン製のものだけで、リムーバルバインダー単体の販売は出来ないと断られた。

 ヴィヴィは装備を丸々取り替える気はなかったので補充は諦めることにした。

 

 この後、防具屋に向かい、リオは腕を破れた服を新調した。



 買い物を終えたリサヴィは昨夜と同じ宿屋へ向かう。

 昨夜はこの時間だと満席に近かった一階の酒場は空席が目立つ。

 宿屋の主人に空きを尋ねるとぜひ泊まってくれとやけに親切な対応だった。

 やはり、強制依頼の失敗が響いているようだ。


 リオ達は四人部屋を取ると、アリスを除く三人が慣れた動きでベッドに自分の荷物を置く。

 リオが二段ベッドの上、その下をサラ、もう一方のベッドの下がヴィヴィだった。

 残るはヴィヴィの上のベッドのみである。


「あのっ、もしかして使うベッドの位置は決まっているのですかっ?」

「はい。二段ベッドの場合は、私とヴィヴィが下です」

「ざっく。私は装備が多いからな。ベッドには置けん」

「なるほどっ」

「私は、その……」

「隙を見てリオさんをベッドに引きずり込むためですねっ。わかりますっ」

「違います!」

「流石サラさんですっ」

「何が流石なんですっ!違うと言ってるでしょう!私はその、ちょっとだけ寝相が悪いのです。ちょっとだけ」

「ざっく!」

「何がおかしいのですかヴィヴィ」


 サラが睨むとヴィヴィはそっぽを向いた。

 

「サラはね、寝相が悪いから上だと転落死の恐れがあるんだって」

「それは言い過ぎです!」

「なるほどっ」


 アリスはリオの言葉に納得し、ヴィヴィの上のベッドに荷物を置くのだった。


(これはこれでリオさんの寝顔が見れますっ。きゃっ、わたしったらはしたないですっ)



 ベッドから降りたアリスがヴィヴィをじっと見つめる。

 

「ざっく?」

「あの、もしかしてヴィヴィさんも女性なのですかっ?」

「ざっく」

「そうだよ」

「はっ!?……まさかこれが噂に聞くハーレムパーティ!?」

「違います!」


(いきなり何を言い出すよ、この人は!)


「いえ、大丈夫ですっ。想定内ですっ。過去の勇者も色を好んだと本で読んだ事がありますっ。ですからリオさんは至って普通ですっ!はいっ!」

「そうなんだ」

「リオは少し黙ってて!アリス、あなたの勘違いです」

「それに二人なら少ない方ですし」

「……人の話聞いてないですね」

「リオさんっ!」

「ん?」

「私は三号でも構いませんっ!」

「三号?」

「あ、もちろんいつまでも三号に甘んじるつもりはないですよっ!必ず一号の座を掴んでみせますっ!」


 アリスはぐっと手を握りしめてリオに強い決意を示す。

 

「そうなんだ」

「はいっ!」


 アリスがサラとヴィヴィを見る。

 

「それでどちらが一号さんですかっ?」

「ですから……」

「ざっく。私だ」

「な……」

「そうですかっ。では二号のサラさんっ、まずはあなたを抜いてみせますっ!」

「誰が二号ですか!誰が!」



「ざっく。リオ、パーティ名はどうする?変更するか?」

「ん?あ、そうか。どうしようかな」

「パーティ名の変更、ですかっ?」

「うん、今のパーティ名は僕達の頭文字からとって決めたんだ」

「頭文字……ああ、リオさんのリ、サラさんのサ、ヴィヴィさんのヴィでリサヴィなんですねっ」

「うん」

「ざっく。変更するなら“リヴィア”だな」


 その名を聞いてサラがヴィヴィを睨む。

 

「ちょっと待ちなさい!何さり気なく私の名を削ってるんですか!」

「ざっく?」


 ヴィヴィは微かに首を傾げる。

 

「ざっく、神官は二人もいらんだろう」

「な、」

「ざっく。短い間だったがご苦労だったな。これからのことはアリスに任せて安心して神殿の任務とやらに専念するがいい」

「何勝手な事言ってるんですか!」

「任せてくださいっ!リオさんとわたしの相性はばっちりですっ!あ、相性ばっちりってそっちの意味じゃないですよっ!きゃっ」

「そうなんだ」

「ざっく……このエロ神官が」

「えっ?何か言いましたっ?」

「ざっく、気にするな。独り言だ。サラ、元気でな」

「だから何を言ってるんです?」

「あれっ?ということはわたしもう二号になったのですねっ!」

「その呼び方はやめなさい!」

「ん?サラ出ていくの?」

「出ていきません!」

「そう、それは良かった」

「……え?」


 その時見せたリオの笑顔にサラは一瞬見惚れてしまった。

 それは間違いなく、作り笑顔ではなかった。

 ちっ、と聞こえた舌打ちにサラは我にかえり、誤魔化すようにヴィヴィを睨む。

 ヴィヴィはそっぽを向いた。

 

「ざっく。それでパーティ名はどうする?」

「今のままでいいかな。これからもっとメンバー増えるかもしれないし、その度に変えてたら面倒だし」

「ざっく」

「他に誰か加える予定があるのですかっ?」

「うん、今度ファフに会ったら誘ってみようと思うんだ」

「ファフさん、ですかっ?どんな方なんですかっ?」

「ん?エルフだよ」

「ええっ!?エルフなんですかっ!?そのっ、あのっ、やっぱり女性、なのですかっ?」

「ん?そうじゃないかな?」


 がっくしと片膝をつくアリス。

 

「どうしたの?」

「エルフには勝てる気がしません……」

「弓の名手だからね」


 リオはそう言って頷く。

 サラは今更ながらに思った。


(強くはなったけど意思疎通はまだまだね)


 アリスは自分の考えに夢中でリオの言葉が耳に入らなかったようだ。

 

「エルフは長寿故にその培われたテクニックは人間のそれを凌駕する、と読んだ本にありましたっ」

「は?」

「ざっく。エルフを“エロフ”と呼ぶものもいると聞くな」

「そ、そういえばその本にもそう書かれていましたっ!尊敬の念を込めてエロフ、と呼ぶとっ」

「ざっくざっく」

「そうなんだ。じゃあファフは実力を見せてなかったのかな」

「一人だけ話ズレてますよ」

「はっ!?リオさんはもう経験済みなのですかっ!?」

「うん、いろいろ教えてもらったよ」


 アリスは心の中でぐはっ、と血を吐いた。


「い、いろいろ……一体どんな……本の知識しかない私には対抗できる自信がまったくありません……」

「あのねえアリス、あなた勘違いしてますよ」

「えっ?勘違いですかっ?」

「ざっく、人間の可能性はそんなものではないといいたいのだろう。サラは“前職”で相当経験を積んだらしいからな」

「またあなたはそんな嘘をぬけぬけと……」

「サラさんの前職……はっ!?サラさんは、口では言えない前職で既にすごい技を身につけられていたのですねっ!」

「アリス!ヴィヴィの言うことを信じてはいけません!本も鵜呑みにしすぎです。大体、エルフがエロフと呼ばれてるなんて私は聞いたこともありません。あなたはどこでその本を読んだのですか?」

「神殿の図書室ですけどっ?」

「は?神殿の図書室ですか?」

「はいっ。本棚の下に隠すように置かれていたのを見つけましたっ」

「……それ本当に隠されていたのでは?個人の所有物だったのではないですか?」

「ざっく。このエロ神官どもが」

「どさくさに紛れて一緒にしないでください」

「……ざっく。このエロ神官どもが」

「言い直しても同じではないですか!」

「ざっく。相変わらず神官というものは横暴だな。意見を強要するとは。まあ私はそんなものに屈したりはしないがな」

「く……」

「ヴィヴィさんっ、わたし達は普通ですよっ」

「だから私を巻き込まないで」

「ざっく、確かにな。サラは時と場所を選ばず全裸でリオに迫るからな。今のアリスでは足元にも及ばんだろう」

「な、」

「そこまで……確かに今のわたしにはそこまで破廉恥なことは出来ませんっ!」


 サラは心の中でぐはっ、と血を吐いた。

 

「ざっく」


 サラは仮面の下で笑っているであろうヴィヴィを睨む。

 

「流石ですサラさんっ」

「違うんです。話を聞いてください!」

「嘘なんですかっ?」

「え、えと、リオが私の裸を見た事があるのは事実ですけど……」

「ああっ!わたしが勇気を振り絞っても出来そうもない事を当然のようにやってのけるそんなサラさんに憧れますっ!嫉妬しますっ!」

「わ、わざとじゃないですから!そんなことに憧れないで!」

「ざっく。このエロ神官どもが」


 三人が騒ぐ中、リオがボソリと呟いた。


「仲良いね。これなら上手くやっていけそうだね」


 一人呑気なリオであった。


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