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186話 新しい仲間

 サラは先程から所在なさげにリオの後ろに立っている女神官に気づいた。

 ザラの森討伐隊の生還者のカールが説明している時に「リオさんはすごいですっ」を連発していたのを思い出す。

 何か言いたそうにしているが決心がつかないのかモジモジしており、時折助けを求めるようにリオに視線を向けるが、リオ本人は全く気づいていないようだった。

 なのでサラが助け舟を出す事にした。


「リオ、後ろの方が何か用事があるようですが」

「ん?」


 リオが振り向きアリスを見る。

 アリスが嬉しそうに笑みを浮かべるが、リオは少し首を傾げるのみ。


「リオさーんっ」


 アリスが困った表情でリオを見つめる。


「ん?」

「あのっ、そのっ、ほらっ」


 アリスがリオの耳に顔を寄せて何事か囁くとリオが頷いた。

 

「そうだった」

「ざっく?」

「うん、あのね、アスカが僕達のパーティに入りたいっていうから入れることにした」

「アリスですっ!」

「え?」

「ざっく?」

「えーと、もう一度お名前いいですか?」

「アンディ」

「リオさんっ、アリスですっ。いい加減覚えてくださいよっ」

「うん、知ってた」

「ホントですかっ?」

「うん。という事だから仲良くしてね」


 アリスが緊張気味にサラとヴィヴィに頭を下げる。


「わたしっ、皆さんにご迷惑かけないように頑張りますっ」

「そ、そう。よろしくね」

「ざっく」


 こうしてリサヴィに新メンバーが加わったのだった。



 サラはアリスをパーティに登録しないのかリオに尋ねようとして思い止まった。

 理由は単純。

 このギルドにはもう関わりたくない。

 それだけだった。


(それに、依頼を受ける時に気づくでしょう。その時に申請すればいいわ)



 アリスがあっさりリサヴィに迎えられたのを見て、魔の領域攻略隊の生還者達が自分もパーティに入れてくれ、とリサヴィ、というよりサラの元の殺到した。


 今のリサヴィは戦士が一人に神官が二人。

 つまり最低一人は勇者枠?が空いている事になる。

 上手くいけばサラが選ぶ勇者候補になれる。

 こんなチャンスを逃すまいと考え、我先にやって来たのだった。

 パーティメンバーを失ったばかりなのにこの切り替えの速さはドライというべきか薄情というべきか。


「「「サラ!」」」


 突撃した冒険者三名は見事にハモった。

 

「はい?」


 サラはちょっと驚いた様子で三人を見る。

 ちなみにアリスは「きゃ」と実にわざとらしい悲鳴をあげ、驚いたフリをしてリオに抱きついた。


「俺をパーティに入れてくれ!」

「いや、俺を!」

「俺だ!俺!」


 サラは三人にじっと見つめられ、助けを求めるようにリオを見るが、リオはアリスに抱きつかれたままぼーとした顔で依頼掲示板のほうを見ていた。

 

「リオ」

「ん?」

「彼らがリサヴィに入りたいそうです」

「そうなんだ」


 リオが初めて三人の冒険者に目を向ける。

 

「どうします?」

「サラが決めれば?」


 リオはあっさりサラへ丸投げする。


(なにそれ?アリスは自分で決めたくせにっ!)


 その言葉を聞いて俄然やる気を見せる三人。


「頼むサラ!さっきはカッコ悪いところを見せちまったが俺の力はまだまだこんなもんじゃねえんだ!」

「俺もだ」

「俺も俺も!」

「お前らマネすんじゃねえ!」

「真似してねえ!俺が言おうとしたことをお前が先に言っただけだ!」

「俺もだ!」

「「いや、お前は絶対違う!」」

「二人でつるんで卑怯だぞ!」


 サラが三人のコントを呆れた様子で見ていると、

 

「サラさんってモテるんですねっ!」


 アリスが何も考えていないような顔で言った。

 

(……リオとアリスって似た者同士?)


 サラはふう、とため息をつく。

 

「では私の判断で決めさせていただきます」

「お、おうっ」

「俺を頼むぜ!」

「俺俺!」

「残念ですがこれ以上の増員は考えていません」

「「「なっ……」」」


 あっさり断られショックを受けたものの彼らはそれで納得しなかった。


「だがよっ、戦士一人に神官二人ってバランス悪いだろ!」

「その通りだ!」

「そうそう!」

「普通はそうでしょう」

「なら……」

「しかし、前衛は私も出来ます。ご存じでしょう?」

「そ、それはそうだが……」

「で、でもよっ、やっぱり力仕事は男がいるだろ!お前らに男は一人、しかもそんなヒョロじゃ役に立たないだろう?!」


 その冒険者はいいところをついたと思った。

 しかし、

 

「ざっく。問題ない。力仕事は私がやる」


 一般的に魔装士は荷物運びだと思われている。

 もともとそのために生まれたクラスなのだ。

 

「げっ、そういや棺桶持ちがいやがったな……いや、しかしっ……」

「言ったれ!」

「行けそれ!」

「うるせえ!お前ら!」


 サラは考える隙を与えない。


「納得されてよかったです」

「い、いやちょっと待ってくれ!」

「私の考えは変わりません。あなた方、息が合っているようですし、あなた方でパーティを組んでみてはいかがですか?」


 三人が顔を合わせる。


「では。そろそろ出ましょう」


 そう言って立ち上がった時だった。

 

「待ちやがれ!サラーっ!」


 そう叫んでサラに向かって来る者がいた。

 言うまでもなくギルマスのゴンダスである。

 


 当然の事ではあるが、ゴンダスの言い訳がギルド本部に通じるわけがなく、その場で即ギルマスの権限が剥奪されることになった。

 ギルドの警備員がゴンダスをギルドの地下にある牢屋へ連行しようとしたが、その行動は無謀だった。

 警備員もそれなりに鍛えてはいるが、ゴンダスはBランク冒険者だ。

 クラスは戦士で格闘を得意としている。

 ゴンダスは警備員達を難なく吹き飛ばすと全ての元凶(と思い込んでいる)のサラに殴りかかった。

 ゴンダスはギルマスにはコネでなったが、Bランクの腕は本物だった。

 今まで何十匹と魔物を仕留めてきた破壊力抜群のパンチがサラを襲う。

 しかし、サラはあっさりかわし、カウンターパンチで返り討ちにした。

 ナナルに鍛えられたサラにとってゴンダスなど敵ではなかったのだ。

 サラの鉄拳を顎に食らったゴンダスは、「ふげっ」と情けない声を上げ、宙をくるくる回転して壁に激突して気絶した。

 ギルドにいた冒険者達はBランク冒険者でもあるゴンダスがサラに一発KOされるのを目の当たりにしてポカンとなった。

 このとき、魔の領域へ参加しなかった者達も確信した。

 “鉄拳制裁”の二つ名は伊達ではない事を。


 

 サラは正当防衛で堂々ゴンダスを殴ることができ、とても気分爽快であった。

 よくぞ向かって来てくれた、と内心感謝したほどである。

 しかし、すぐに後悔した。

 殴ったことを、ではない。

 一発で終わらせたことだ。


(流石に目覚めさせて改めてボコるわけにもいかないわよね……いや、案外いけるかも……)


 サラはその誘惑をどうにか振り払うとポカンとしたままのギルドの警備員達に声をかける。


「さっさとこの無能を連れて行ってください」


 サラの言葉に我に返った警備員達がゴンダスに駆け寄る。

 今度は逃すまいと警備員達は白目を向いて気を失ったギルマスの手足を魔道具で拘束する。

 さっき吹き飛ばされた恨みからか、警備員達は乱暴に引きずりながら連行していく。

 途中、何人もの冒険者が日頃の恨みか、ゴンダスに殴る蹴るをお見舞いしたが誰も注意しなかった。

 ギルド職員達も見ない振りをした。

 いや、「この無能のギルマスがっ!」と蹴りを入れまくるギルド職員もいた。



遂にリサヴィに新しいメンバーが加わりました。

彼女の活躍にご期待ください。


また、評価とブックマークをしていただけますと励みになりますのでよろしくお願いします。


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