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159話 迂闊な盗賊

 数時間の休憩の後、マリナはまだ顔が青いものの自分の力で立ち上がった。

 心配する仲間に「大丈夫だ」と言いながらサラを見た。


「改めて礼を言わせてもらう」

「いえ、間に合ってよかったです。あとあなたを見つけたのはリオです」


 サラの言葉を受け、マリナがリオを見て、少し驚いた表情をする。


「お前がビットヴァイを倒したのか?」

「うん」


 マリナの言葉にリオが頷く。

 盗賊が驚きの表情を見せながらマリナに確認する。


「おいっ、本当にビットヴァイを倒したのはこいつなのかよ!?」

「少なくとも私ではない」


 マリナの言葉に彼らのリオを見る目が明らかに変わった。

 盗賊がちっ、と舌打ちした。


「じゃあ、こいつの懸賞金は俺達の物じゃないのかよぉ」


 盗賊が悔しそうにビットヴァイの頭を見つめる。


「お前なぁ……」

「いらないよ」


 リオの言葉を聞き、マリナのメンバーが驚いた表情を見せる。


「はあ?お前、本気か?こいつの懸賞金いくらか知ってて言ってるのかよ?」

「知らないけどいらない」

「お前、いい奴?」

「どうだろう?」


 盗賊の問いにリオは首を傾げる。

 サラが補足する。

 

「私達はちょっと事情がありましてあまり目立ちたくないのです。あ、悪い事はしてませんよ」

「そんな事は考えてもいない」

「マリナの恩人だしな」

「ありがとうございます。リオはあの通りなので深く考えずに必要なら貰ってください。不要なら……」

「いやっありがたく貰うぜっ!今回のパーティ探しは無報酬だしよ、結構金使ったから助かるぜ!」

「お前な……」


 マリナのパーティメンバーが呆れ顔をする中、盗賊は大喜びだった。

 彼は他のメンバーほどパーティ探しに熱心ではなかったようだ。



「しかし、ビットヴァイの言っていた事は嘘だったのだな」


 マリナは改めて自分の体の状態を確かめながら言った。


「嘘?それはどういう事ですか?」

「あ?ああ。奴は自分の血は毒で神聖魔法でも治せないと言ったんだ。実際、毒消しポーションが効果なかったので信じてしまった」

「え?マリナ、あなたは毒に侵されていたのですか?」


 サラの驚きようにマリナは不思議そうな顔をする。


「私に解毒魔法を使ったんじゃないのか?」

「いえ、私達はてっきり毒を受けた腕を体に回る前に自分で切り落としたものとばかり……」

「いや、腕は奴に斬られたのだ……だが、そうすると自然に消えた、のか?」


 マリナが首を傾げた時だった。


「ああー!!」


 突然、悲鳴が聞こえた。

 そちらに目をやると盗賊が腕を押さえていた。

 そのそばにビットヴァイの頭が転がっていた。


「どうした!?」

「こ、こいつの髪を掴んだら、なんか手が切れて……」

「馬鹿野郎!素手で持つやつがあるか!毒があるって言ってただろ!」

「だ、だってよ、奴の血には触れてないから大丈夫だと……う……痺れて来やがった」

「くそっ!このバカが!」


 神官が盗賊に駆け寄って解毒魔法をかける。 

 しかし、


「効かない!?」

「い、痛くなって来た、た、助け……」

「え?本当に効果ないのですか!?」


 サラが慌てて駆け寄る。


「ああ、何度もかけてるのに……ダメだ!!」


 神官は解毒魔法を詠唱して効果を強化したがやはりだめだった。


(本当に神聖魔法が効かない?未知の毒だから魔法が効かない!?)


 サラも試みるが、結果は同じだった。

 盗賊が倒れ込み悶え苦しむ。

 髪に触れた手だけでなく全身に回り始めていた。

 もはや触れた手、いや、腕ごと切り落としてもどうしようもないところまで進行しており、手の打ちようがなかった。

 皆が焦る中、ヴィヴィがぼそりと呟いた。


「ざっく。奴が解毒薬を持ってるかもな」


 その言葉にマリナのパーティが反応した。


「そうだ!それだ!」

「確かに解毒剤を作っている可能性はあるな!」


 神官がビットヴァイの上半身に向かうが、それをマリナが慌てて止めた。


「待て!私がやる。一度奴の毒を受けているから耐性があるかもしれない!」

「確かにそうかもしれないが……」

「リーダー命令だ!」

「……わかった」


 マリナは皆から手袋を集め、三重にはめる。

 神官が効果があるかは不明だがマリナに防御魔法をかける。

 

「サラ!お前も頼む!」

「はい」


 神官の要請に応え、サラもマリナに防御魔法をかけた。

 同じ魔法なので効果が倍になるのではなく、強力な方が有効になる。


「済まない」

「いえ、気をつけてください」

「ああ」


 マリナは慎重にビットヴァイの上半身のポケット漁ると小瓶がいくつか入っていた。

 ラベルが貼ってあり、解毒剤と書いてる小瓶が三つあった。

 マリナはそのラベルを素直に信じていいものか、と一瞬躊躇したが、意を決して解毒剤と書かれた小瓶の液体を盗賊に飲ませた。

 幸いにもラベルに書かれていた事は本当だったようで盗賊の苦しみが和らいでいく。

 なお、小瓶三つのうち一つは最初から空であった。

 盗賊に効果があった事にほっとしながらマリナが言った。


「どうやら私の解毒を行ったのは奴自身だったようだ」


 そう言って皆に空の小瓶を見せた。

 マリナの決断が早かったのは空瓶があったからだ。

 それを見て皆、マリナの推理に納得し、疑う者は誰もいなかった。

 人体実験好きのビットヴァイがせっかく手に入れた“実験材料”を簡単に手放すとは考えられない。

 それにマリナは美人なので他にも利用法はあるのだ。


 リオはマリナの推理に異論を唱える事はなかった。


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