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151話 迷宮都市フルモロ

 リサヴィは大陸東部にあるローラン公国の北方にあるフルモロ大迷宮に到着した。


「あの洞窟がフルモロ大迷宮への入り口です」

「すごい人だね」


 リオの言う通り、大迷宮の入口には大勢の人や荷馬車が列をなしていた。


「入口で公国の兵士が入場者のチェックをしてますから入るのに時間がかかりますね」

「馬車で迷宮に入る人もいるんだ」

「それは少し違います」

「ん?」

「フルモロ大迷宮の一階は都市なのです。そこへ荷物を運んでいるのです」

「そうなんだ」

「って、リオ、そんなことも知らなかったのですか?ここはあなたが来たいと……ああ、提案したのはナックでしたね」

「うん」



 リオは大迷宮の入口に近づくにつれ、兵士の数が大都市以上である事に気づいた。


「すごい警備だね」

「ざっく。魔界の門があるからな。もしものためだろう」

「魔界の門?」

「魔界の門は言葉の通り魔界とこの世界とをつなぐ門です。それが六十四階層にあるのです。実際、十年ほど前にはその門から多数の魔族が魔物を引き連れて地上に現れたのです」

「そうなんだ」

「そして、そのとき魔物達を指揮していた魔族を討ったのがあの有名な六英雄です。そして、その一人が私の尊敬するナナル様なのです!」


 サラが少し興奮気味に説明するが、ヴィヴィは無反応だった。

 リオはと言えば、

 

「じゃあ、その門から魔界に行けるんだ」


 と斜め上の感想を述べる。

 リオの言葉に反応し、ヴィヴィはリオを見たが言葉はなかった。

 サラはリオの言葉で一気に興奮が冷め、リオがどんな気持ちで言ったのかと表情を窺う。

 その表情は特に変化はなかったが、サラは慎重に言葉を選ぶ。


「リオ、その時指揮していた魔族は魔王に匹敵する強さだったといいます。間違っても門を開けようとなど考えてはいけませんよ」

「そうなんだ」

「まあ、魔界の門には教団から派遣された神官が絶えず強力な封印魔法を施しているはずですからそう簡単に開くことは出来ませんけど」

「そうなんだ」


 そこでリオが何かを思いだしたかのように「あっ」と声を出した。


「どうしました?」

「大事な事忘れてた」

「大事な事ですか?」

「なんでフルモロ大迷宮っていうか知ってる?」

「リオから話を振ってくるなんて珍しいですね」


(気持ちどこか得意げに見えるような見えないような……)


「ざっく。話してみろ」

「うん、ナックから聞いたんだけど、」


(あ、これは間違いなくダメなヤツだわ)


「最初にこの大迷宮を発見した者達がこの迷宮の前でパンツ下ろしてフル……」


 リオは不意に頭が下を向いた。

 サラにどつかれた事に気づく。

 

「なんで僕殴られたのかな?」

「下品な事を言おうとしたからです」

「そうなんだ」

「『そうなんだ』ではありません!」

「ざっく。流石だな。あらゆる性技を身につけたお前にとっては話を最後まで聞かずとも内容を容易に察する事ができる、ということか」

「そうなん……」

「そんなものは身につけていませんし、あなただって気づいていたからそんな事を言うのでしょう!」


 睨み合う二人。


 そんな中で空気を読まない事には定評のあるリオが、


「あ、先進んだよ。そんなところに立ち止まってたら迷惑だよ」


 と珍しくまともな事を言った。


(あなたが話を振ったんですけどねっ!)


 サラはリオにもう一発ゲンコツをお見舞いした。



 そうこうするうちにリオ達の番が来た。

 兵士に冒険者カードを見せるとすんなりと中に入ることが出来た。

 フードで顔を隠したサラや仮面で完全に顔が隠れているヴィヴィさえも冒険者カードを見せるだけで怪しまれずに通してくれることから冒険者ギルドの信用の高さが窺える。 

 洞窟の幅は広く、通路はしっかり舗装されており、時折馬車が通り過ぎていく。

 洞窟をしばらく進むとサラが言った通り街が見えてきた。


「本当に街がある」

「この街、迷宮都市フルモロが出来たのは十年ほど前の魔族侵攻後です。魔界の門を警備する兵士やダンジョンに挑む冒険者達のために商売をするものが現れ、宿屋ができ、と徐々に拡張されていって今の形になったそうです」

「ダンジョンの中にも兵士がいるんだ」

「はい。階によっては兵士の詰所があり、魔界の門の警備だけでなく、各階も定期的に巡回しているそうです」

「そうなんだ」


 そこでリオが「ん?」と首を傾げる。


「このダンジョンには今も魔物が棲んでいるんだ?」

「はい」

「なんでまだいるんだろう?」


 公国兵や冒険者達がダンジョンに棲む魔物を十年以上も退治していて未だ全滅していないことを不思議に思うのは当然のことだろう。


「はっきりとはわかっていませんが、二つの説があります。ひとつは魔界の門の存在です。魔界の門自体が魔物を魔界から呼び寄せているいう説です」

「門を開かずに?」

「はい」

「そうなんだ」

「そしてもうひとつは、このダンジョンの未到達層に魔物を呼び出す、あるいは作り出す装置がある、という説です」

「あれ?魔界の門がある六十四階が最下層じゃないの?」

「違います。もっと下まで続いているそうです」

「ざっく。六十九階層まで到達したと聞いたことがある。七十階層へ下りる階段が見つからずそこで探索は止まっているという話だった」


 ヴィヴィの説明を聞いてリオが首を傾げる。


「六十九階層までしかないんじゃないの?」

「ざっく。昔の冒険者が残した記録があるのだ。そこには八十四層まで達し、更に下層があると書いてあったらしい」

「そうなんだ」

「……へえ。ヴィヴィは詳しいですね」

「ざっく。私は暗黒時代に作られた魔道具に興味があるからな。古の魔道具が眠っていそうな場所については調べている」

「そうなんだ」

「……」


 サラはヴィヴィの言葉を完全に信じたわけではなかったが、カリスがサイファの魔道具、ナンバーズを無くした時の怒りようから全くの出鱈目とも思えなかったので追及はしなかった。


「どちらにしても私達、普通の冒険者は五十階層までしか探索を許可されていませんから関係ありませんよ」

「え?じゃあ、魔界の門見れないんだ?」

「はい。中には魔界の門を開いて世界を滅亡させようと考えるイカれた者達もいますので」

「そうなんだ」

「それ以前にそこまで行けるとは思えませんが」

「そうなんだ」

「そうなんだって……」


 サラは頭を抱える。


「リオ、私達はたった三人のパーティですよ。そこまで到達するのは無理です」

「そうなんだ」

「……」

「ざっく。どこまで行くかは実際に入ってから決めればいい」

「そうだね」

「まずは宿屋を探しましょう」

「うん」

「ざっく」



 サラは宿屋を取った後、冒険者ギルドへ向かった。

 ナナルにこれまでの冒険の事を記した手紙を送るためである。

 迷宮都市フルモロの冒険者ギルドには荷物を転送する魔道具“転送くん”が設置されている。

 神殿都市ムルトにある冒険者ギルドにも転送くんは設置されているので今から送れば明日の朝にはナナルの元に届くだろう。

 なお、転送くんで転送できるのはあくまでも物だけでラビリンスキューブのように人など生物を転送する事は出来ない。


 サラはこの時、カリスのストーカー登録が完了した事とカリスがウィンドから追放された事を知った。



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