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149話 ナナルとの会談

 ベルフィ達はヴェインへの帰路の途中でムルトに立ち寄った。

 「せっかく近くまで来たんだ。ファンに会いに行こうぜ」とナックが軽い気持ちで提案した事が発端だった。

 金色のガルザヘッサを倒した今、急ぐ旅でもないのでベルフィはナックの意見を受け入れたのだ。


 そして、ベルフィ達はファンと再会した。


「久しぶりだな、ファン!」

「ああ、ベルフィ元気そうだな!」


 ベルフィとファンが握手をかわす。

 ファンは辺りを見回し、サラがいないことに気づいた。


「サラはどうした?一緒じゃなかったのか?それにあの少年、確かリオだったか。まさかとは思うが……」

「心配するな。サラ達とは敵討ちが終わってから別れた」

「そうか。それを聞いて安心したぜ」


 ナックは自分で言い出した事なのにファンよりも女神官のチェックに夢中だった。

 その視線の先にいた女神官を見て驚きの表情に変わった。


「おいっファン!あれって……」

「ん?ああ、ナナル殿だ」


 ファンは笑いながらナックの視線の先にいた女神官の説明をする。


「やっぱりか!噂通りの美人だな!」


 その声が聞こえたのかナナルが足を止めてナックを見た。


「やべっ」とナックは何も悪いことはしていないはずだが、思わず視線を逸らした。

 しかし、ナナルは興味を持ったらしくウィンドのもとへやって来た。


「もしかしてウィンドの方ですか?」

「その通りだ。光栄だな。まさかナナル様に名前を覚えていてもらえるとは」

「あなた方は有名ですし、サラからの手紙にありました」

「ナナル殿、サラは一緒じゃないそうですよ。リオ、っていう冒険者と旅を続けてるそうだ」

「ええ、知ってます」

「え?そうなのか?酷いなぁ。知ってたなら俺にも教えてくださいよ」


 ファンがからかい気味にナナルを責める。

 

「それは済みませんでした。あなたがそんなにサラの事を気にしていたとは知りませんでしたので」

 ナナルはファンが悲しそうな表情をするのを無視してベルフィに向き直る。


「もしよろしければあの子らの冒険での様子をお聞かせ願えませんか?」


 ベルフィはナナルがサラではなく、あの子ら、と言ったことに違和感を覚えた。


「無理にとは言いませんが」


 ベルフィはその言葉を聞いて顔に出したつもりはなかったが、疑問に思った事を気づかれたのかと思った。


「あ、いや、もちろん構わない。ちょっと驚いたんだ」

「驚いた?」

「ああ、今、あなたは“あの子ら”と言っただろ?リオにも興味があるとは思わなかった」


 ナナルが微笑む。

 その笑顔に惹かれたのはウィンドだけでなかった。

 周りにいた者達も思わず足を止めるほどだった。


「もちろん、興味ありますよ。何せサラがショタコンでその少年に付き纏っている、という噂を耳にしましたので、その事実関係も確認したかったのです」


 その言葉が冗談なのか誰も判断できなかった。

 ベルフィが何かを言う前にカリスが口を開いた。


「それについてぜひナナル様に聞いてほしいことががある!」

「お、おい、やめろ!」

「お前は黙ってろ!」

「なんだと!?」


 言い合いを始めるベルフィ達にナナルは笑顔で言った。

 

「立ち話もなんですのでどうぞこちらへ」

「あ、ああ」


 ベルフィに続いてウィンドの面々が緊張した面持ちでナナルの後に従う。

 ファンが嬉しそうな表情でナナルに話しかける。


「ナナル殿、俺も参加していいかい?」

「私は構いません」


 その返事を聞いて今度はベルフィに確認すると無言で頷き、ナックには「是非に」と言われた。

 どうやらナナルとの会談は緊張すると察し、ファンは内心腹を抱えて笑っていた。



 ナナルとの会談は和やかな雰囲気で進んだ。

 ウィンドの面々は最初の緊張もすっかり溶け、ナックはナナルにジョークを飛ばすほどであった。

 会談は終始和やかなまま終わるものとばかり思われたが、それを壊す者がいた。

 カリスである。

 

「ナナル殿、実は頼みがあるんだ」

「頼み、ですか?」


 最初にカリスの意図に気付いたのはナックだった。

 

「おいっ、カリスやめろっ」


 もちろん、カリスが人の言うことを聞くわけがない。

 ナナルが不思議そうな表情をカリスに向ける。


「俺はサラに勇者に選ばれたんだ」

「バカっやめろって!」

「よせっ!」

「あんたっ、まだそんな事言ってんのかいっ!」


 他のメンバーが止めに入るがカリスの言葉は止まらない。

 ナナルが首を少し傾げる。


「あなたをサラが勇者に選んだと?」

「ああ、そうだ!だが、リオと棺桶持ちに攫われたんだ!だからサラの居場所を知っていたら教えてくれ!」

「……サラからの手紙ではそのような事は書かれていませんでしたね」

「サラは棺桶持ちに魅了の魔法をかけられてんだ!今のサラは正常な判断ができないんだ!」

「おい、カリスっやめろ!」


 今まで笑って聞いていたファンまでもが真面目な顔で止めに入った。

 だが、ファンをナナルが止める。


「ナナル殿!?」

「彼の話を最後まで聞きましょう。サラがその棺桶持ち、魔装士の事ですね、に魔法で操られていると言うのですね?」

「ああ!そうなんだ!だからサラを救うために居場所を教えてくれ!これはあんたのためでもあるだろう?」

「……なるほど」

「あの、ナナル様……」


 ナックの言葉をナナルは目で制した。

 ナックはその視線を受け、まるで金縛りの魔法をかけられたかのように体が動かなくなった。

 

「カリス、と言いましたか」

「おうっ」

「残念ながら私は今、サラがどこにいるのか知りません。あなた達と金色のガルザヘッサを倒したとの手紙をもらったきりです」

「それはいつだ!?どこから送られて来たんだ!?」

「教えられません」

「何故だ!?」

「サラはストーカーにまとわりつかれて困っているとの事ですので」


 その言葉を聞いてカリス以外のウィンドのメンバーが唸る。

 ナナルはカリスがそのストーカーだと知っている。

 知っていてカリス本人に話しているのだと。

 しかし、当のストーカーであるカリスはサラから直接ストーカーと言われていたにも拘らず全く自覚がなかった。

 それどころか、

 

「なんだと!?更にストーカーにまで狙われているのか!?なら益々このままにしておけないだろう!」


 などと言い出す始末であった。



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