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146話 ギルドからのお願い

 リオ達は久しぶりに冒険者ギルドを訪れた。

 受付嬢はギルドに入ってきたリオ達に目を向けた。


(若い戦士、フードを深く被った冒険者、そしてあの仮面を被ってるのが魔装士よね。あの人達だわ!)


 受付嬢が一旦、奥に消え、その上司と共に現れた。

 受付嬢は受付に戻り、上司は依頼掲示板へ向かう。



「失礼ですが、リサヴィの方ではありませんか?」


 リオ達リサヴィが依頼掲示板を見ていると年配のギルド職員が声をかけてきた。

 リーダーのリオが反応しないので仕方なくサラが返事をする。


「はい、そうですが?」


 ギルド職員はほっとした表情をする。


「実はあなた方にお願いがありまして」

「お願い、ですか?依頼ではなく?」


 サラの問いにギルド職員が頷く。

 

「はい。もしよろしければお話だけでも聞いていただけないでしょうか?」

「リオ、どうしますか?」

「ん?」

「私達に話があるそうです」

「いいんじゃない」


 サラの問いにリオは即答した。


「ありがとうございます!では詳しい事は場所を変えてお話します」



 案内されたのはギルドの奥にある打ち合わせなどで使われる一室だ。

 すぐにお茶と菓子が運ばれてくる。

 リオは菓子を無造作に一つ掴むとパクッと口に入れた。

 

「リオっ」

「ははは。構いませんよ。そのためにお持ちしたのです」

「すみません」

「では早速本題に入らせていただきます」

「はい」

「単刀直入にお聞きしますが、皆さんはギルドからの依頼ではなく、依頼人から直接を依頼を受けてリッキー退治を行なったことがありますね?それも何度も」

「うん」


 サラが相手の意図を読む前にリオがもぐもぐしながら即答した。


(なんでこういう時だけ真っ先に答えるのよ!)


 サラは頭の中でリオの頭にげんこつを落とす。

 サラはギルド職員の意図が読めないので慎重に答える。

 

「もしかして依頼が出る前に受けたことが問題になっていますか?規則には違反していないと思っていたのですが」

「とんでもないです!その逆です」

「逆、ですか?」

「はい」


 ギルド職員が申し訳なさそうな表情をする。

 

「ご存じの通り、リッキー退治の報酬は安い上に失敗率が高いので冒険者に非常に人気がないのです」

「依頼を受けてくれる冒険者が少ないのが問題という事ですか?」

「いえ。あ、勿論それもそうなのですが、リッキー退治の依頼を出せる村はまだマシな方なのです。実際にはその報酬を工面できず依頼すらできないところも沢山あるのです」

「そうなんだ」

「リオ、その話は以前聞きましたよ」

「そうなんだ」

「……」

「それでしたら話が早いです。私達もなんとかしたいとは考えているのですが、ギルドの規則には最低依頼金というものがありまして……」

「それに満たないため断っているという事ですか」

「はい。私達も規則を破るわけにはいかず大変心苦しいのですが、依頼申請をお断りするしかないのです」


(なるほどね。話が見えてきたわ)


「お話というのは、ギルドの依頼ではないが、リッキー退治をして欲しいというのですね?」

「はい、その通りです。本来であれば、ギルド職員がギルドを経由しない依頼のお話をすべきではないのですが、その村の方々はとても困っているのです。そこにあなた方がいらした。あなた方は既にいくつもの村でただ同然でリッキー退治を引き受けていらっしゃるとか」

「うん」


(だから勝手に返事しないでよっ!)


 もちろん、リオにサラの心の叫びが聞こえるわけがない。


「確かにその通りですが、あの、その噂ってそんなに広がっているのですか?」

「少なくともあなた方が依頼を受けた地域ではそれなりに」

「そ、そうですか」


(そんな噂が広がってたら行く先々でリッキー退治をお願いされそう……あ、もうなってる気がする)


「ざっく。それでリッキー退治してほしい村はどこにあるのだ?」


 今まで無言だったヴィヴィが突然言葉を発したので、ギルド職員はちょっと驚いたものの村の説明を始めた。

 その村はここから歩いて二日ほどの距離だった。


「ところで、ギルド経由でない依頼を私達に話すのは規則違反にはならないのですか?」


 ギルド職員は苦笑いをした。


「問題はないと思っています。何せギルドで引き受けられないほど低い報酬の依頼情報をお教えしているだけですから」

「ざっく。知ったところでギルドが引き受けない依頼だしな」

「はい、その通りです」

「お話はわかりました」

「念のため再度お断りしておきますが、これはギルドからの依頼ではありませんので、ギルドからの報酬も依頼達成ポイントも差し上げられません。報酬も相手との交渉となりますがあまり期待できません」

「わかりました。リオ、どうしますか?」

「いいんじゃないかな」


 リオはまたもあっさり即答した。

 

「ありがとうございます!……ああ、先程ギルドから報酬はないとお話しましたが、私の裁量でほんの気持ち程度ではありますが、依頼達成の際にはこれを差し上げます」


 ギルド職員が懐からギルド契約の無料宿泊チケットを取り出した。

 

「職員に話を通しておきますので完了後、声をおかけください」

「いいのですか?」

「はい。ただ、これは有効期限が間近に迫っております」

「早く依頼達成しないとゴミになると言う事ですね」


 ギルド職員が笑顔で頷く。


「じゃ、行こうか」

「はい」

「ざっく」


 リオが立ち上がり、それに合わせてサラとヴィヴィも立ち上がる。


「あ、すみません。一つよろしいですか?」

「ん?」

「これは個人的な好奇心なので無理にお答えしていただく必要はございませんし、本当はこんな事お聞きするのはよくないのですがどうしても気になってしまって……」

「何?」

「リサヴィはリッキーに何か恨みでもあるのでしょうか?」

「ないよ」

「では何故利益を度外視してまでリッキー退治を引き受けていただけるのでしょうか?」


 リオは首を傾げた。


「畑を荒らされると困るでしょ」


 表情を全く変えずに答えたリオの顔に、ギルド職員は一瞬呆気にとられたが、すぐに我に返る。


「そ、そうですか」


 サラが補足する。


「リオは冒険者になる前は畑仕事をしていたので他人事に思えないのでしょう」

「そうだったんで……」

「そうなんだ」

「……え?」


 リオの頭が不自然に下を向く。

 リオは頭をどつかれたと気づく。


「僕……」

「自分の事でしょう!」

「そうだった」

「すみません」

「い、いえいえ!お答えいただきありがとうございます」

 


 リサヴィが去った後、ギルド職員はすぐさま彼が親しくしているギルド支部に連絡を入れた。

 内容は、

 

 『情報通り、リサヴィはリッキー退治を最低依頼金以下で受けてくれる』

 

 である。


 リッキー問題は各ギルドで問題になっていた事もあり、この情報を受け取ったギルドも彼らの親しいギルドに連絡、というように広まっていくのだった。



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