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144話 未来予知再び

 サラはかつて勇者とその仲間達が集った場所にいた。

 その仲間達はすでにいない。

 魔王軍との戦いで命を落とした者、魔王軍の攻撃から自国を守っているもの、そして魔王の軍門に下り敵となった者など様々だ。


「サラ様!」


 サラの前に騎士の一人が駆け寄って来た。


「どうしました?」

「敵です!魔王軍が近づいております!」

「数は?」

「少なくとも三千」


 サラ達の数はおよそ百。

 単純比較で三十倍の戦力だ。


「……どこの軍団かわかりますか?」

「はい。敵の中に”重装魔装士”の姿を見かけたとのことです。おそらく敵はカルハン魔国と思われます!」

「カルハン魔国!」


 そこへ新たな報告がもたらされた。


「敵軍の中にリゼ・アイラの姿があったとの事です!」

「リゼ・アイラですって!?」


 サラと共に報告を聞いていた女騎士がサラに視線を向ける。


「逃げなさいサラ!」

「アウリン!?」


 その女騎士、アウリンにサラは不満の表情を見せる。


「リゼ・アイラが自らが出張って来たということは狙いはあなたよ!」


 サラはアウリンの言葉を聞き、無意識にお腹に触れる。

 アウリンはサラの説得を続ける。


「兄上は命をかけてあなたを守ったのよ!私はあなたの事大嫌いだけど、兄上の死を無駄にしたくないわ!」

「アウリン……」

「さあ!あなたは生き延びなさい!私達が時間を稼ぐわ!そしていつかまたこの世界を魔族から取り戻すのよ!」

「……わかったわ」


 サラはアウリンの覚悟を知り、この場からの逃走を決意する。


「あ、そうそう。あなたに渡すものがあったわ」


 そう言ってアウリンがサラに笑顔を向ける。


「渡すもの?」

 

 サラがそう尋ねた瞬間、アウリンがサラの頬を打った。


「なっ!?」

「初対面の時、私を殴ったでしょ。そのお返し」

「……今頃?」

「私、こう見えて執念深いのよ」


 アウリンが笑顔で答える。


「何言っているのよ。見た目通りだから安心して」


 サラは笑顔で反論した。


「「……」」

「……あの、敵はすぐそこまで迫っていますが」


 二人は笑顔のまま「うふふ」と今の状況を忘れ、取っ組み合いを始めそうになったので一人の騎士が控えめに言葉を挟む。


「わかってるわよ」

「ええ、私は、わかってました」

「「……」」


 アウリンがふっと息を吐いた。


「続きは今度よ。次、はっきり白黒させて上げるわ!」

「ええ。望むところよアウリン」



 サラは隠れ家が炎上するのを見た。

 恐らく、アウリンを始め、あの場に残った者達は生きていないだろう。


「……アウリン、私は必ずこの世界を救ってみせるわ」


 そう言ってサラはそっと自分の腹を触るのだった。



「って何よそれっー!!」


 サラは自分の叫び声で目覚めた。

 はっ、として周りを見ると、リオとヴィヴィがサラを見ていた。


「ざっく。寝ても覚めても騒がしい奴だ」

「なっ……」


 サラはヴィヴィの言葉に思わずカッとなるがすぐに冷静さを取り戻す。


(落ち着きなさいサラ!今はムカつくヴィヴィよりも夢の事の方が大事よ!)


 誰も問い質す様子がないことから、夢の内容については口に出していないようだと一安心する。

 サラは久しぶりに見た未来予知の内容について思案する。

 サラは夢に出てきた仲間の女騎士、アウリンの事は全く知らないが、敵将の名前には聞き覚えがあった。


 百年以上も昔、カルハン魔法王国を魔王が襲った。

 その時、魔王に挑み、相討ちとなりながらも王国を救った英雄。それがリゼ・アイラ王女だった。

 この一件でリゼ・アイラの名はカルハン魔法王国では神聖なものとなり、以降、この名をつける事は許されていないはずだった。


(まさかその伝説の王女が蘇った?……って、そんなことあるはずないわよね。……だとすれば、夢に出てきたリゼ・アイラは本人じゃないはず……って考えてもわかるわけないわよね)


 サラはため息をついた。


「……リゼ・アイラか」


 サラの呟きにヴィヴィが反応した。


「ざっく……今なんと言った?」


 サラはヴィヴィを見たが、仮面で表情を伺い知る事はできない。


「なんでもありません」

「……」


(リゼ・アイラの名前に反応したという事はやはりヴィヴィはカルハンの者?……いえ、今はそれよりもカルハンは魔王側につくというの!?夢の中ではカルハン魔法王国ではなく、カルハン魔国と呼んでいたようだけど……)


 夢の中のサラは魔王側に寝返った者達がいるとも言っていたが、それが誰の事を指すのかわからない。


(ああっ!なんでこんな中途半端な情報なのよ!)


 それにしても、とサラは未来予知の中で一番気になっていた自分の行動に顔を赤くする。


(私の意味深な行動、あれって、やっぱり私、子供を身籠もってる……?)


 サラは無意識にリオに視線を向ける。


(あの話の流れだとその子供は魔王の子供……って、ま、まさかよねっ)


「ざっく。リオ、気をつけろ。エロ神官が欲情した目でお前をロックオンしてるぞ」

「ん?」

「な、何言ってるのよっ!」


 サラがヴィヴィを睨みつけるとヴィヴィはふっと顔を逸らした。


(……それにしても今回の未来予知は最初見たものとは明らかに違うわ。最初の未来予知では私に子供なんていなかったはず。今までの行動で未来が変わったと言うことよね?……でも、好転はしていない。相変わらず世界は魔王によって滅びの危機を迎えていたし……)


 サラは頭を振る。

 

(自分を信じるのよサラ!未来が変わったわ。それは確かよ!なら、いい方向にだって導けるはず!)


「ざっく。リオ、あのエロ神官、ヤル気だぞ」

「そこっ!うるさい!こっちは真剣に考える事があるんだから邪魔しないで!」



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